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【白井未衣子とロボットの日常】1・正夢の日 《2》

※予告なく変更のおそれがあります。
※設定上、残酷な描写があります。

天海山ユートピアとは、愛嬌市西部に存在するレジャー施設である。
だが辺りに広がるのは、雑草が生い茂った広大な更地のみ。
このレジャー施設は、今や別の場所に移転した。
移転の理由は2つある。10年前の事件と地下に存在する基地だ。
外宇宙対策本部『ラストコア』は、地上の空港の3倍以上の規模を有する基地である。
滑走路のようなだだっ広い演習場では、訓練が行われていた。
訓練内容は、奥に配置されている3機の戦闘機に搭乗し、合体を行うシミュレーションだ。
1人の男が建物内から訓練を退屈そうに眺めていた。
黒川武人は『ラストコア』の特別隊員である。
彼は一見、どこにでもいる眼鏡男子のようだが、独特の強力な戦闘力を有していることから、特別隊員として任用されている。
それが原因なのかもしれないが…彼はどうも正規の軍隊が好ましく思えなかった。

整然な陣形を取っているようにみえるが、訓練兵一人一人に意欲がみられないと武人は肌で感じ取っていた。
訓練は何度も実施するから、お馴染みの取り繕った既製品を眺めているようで、飽きてしまう。
(こんなもんで、地球を守る気かいな…パターン一緒や。)
武人は『ラストコア』のトップである総司令官・西条宗太郎に変えてくれと何度も依頼していた。
しかし、他国の軍隊も世界情勢の影響により、そちらを優先させられると宗太郎は言って、武人に我慢させていた。
初めは耐えていた武人だったが、それも限界に近づいてきた。
「悪いんやけど、俺に委ねてくれへんか?」
「既に決定権は君に託しているが。」
「訂正するわ。選択範囲を広めてもええか?」
「どういう事だ?」
「一般人に声をかける。」
「!?」
宗太郎は武人の発言に驚いた。

「アレックスに一般人用の試作機を開発させているんや。それに乗せる。」
「だがテストは不十分だろう。」
「最悪、実戦で投入し、不具合な点を徐々に解消していくしかあれへん。時間がないんや…。」
「衛星データか…。」
宗太郎は以前の報告会の様子を思い出していた。
報告会によると、衛星データで撮れた宇宙の情勢が深刻化しているとの事で。
もうすぐ地球に被害を及ぼすようになるという事態まで可能性が広がっているらしい。
武人も宗太郎も、この侵略危機の問題を抱えていたが…協力してくれる人材がいない。
「だが戦力候補は大量に送り込んでいるようだが。」
「アレックスらの調査データでもわかる。軍の奴らは成績の低いのんしか送ってこうへん。見た目だけ取り繕って、肝心のやる気が感じられへん。」
「それ程にか…。」
「俺が責任持って監督する。この通りや。」
武人は頭を下げた。

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