見出し画像

【白井未衣子とロボットの日常】14・忘却の日《11》

※予告なく変更のおそれがあります。
※設定上、残酷な描写があります。


眠気は一瞬で吹き飛んだ。ハッ、と声を出して目を開いたから。
数秒で[ラストコア]の、俺にあてがわれた個室だと分かった。
非常灯以外は電気を消していて、室内は暗かった。
あの明るいだけの空間は…夢だったんだな。

「夢か…。だったら兄ちゃんが生きてる可能性も…。」
手の甲にちょっぴり濡れた感覚がした。
左手だけ、顔に近づけて正体を確かめた。
水滴と同じ透明の雫が落ちていた。
俺は寝ていた時の汗か、夢で流した涙かの区別がついていなかった。
起きてすぐに頭が回らない。

そこで、モノに判断してもらった。ちょうど壁にモニターがあった。
モニターは普段は海底の景色を眺める窓代わりか、作業の為のパソコン代わりに使われる。
今は睡眠中だったから、電源を落としている。
真っ暗だがモニターの液晶は鏡代わりになる。
俺は今、自分の顔がどんな状態か確認した。

涙がこぼれ落ちた、しんみりとした控えめの泣き顔じゃなかった。
俺の泣き顔は酷かった。
起き上がったから手の甲に落ちただけで、ベッドの中でグズグズ泣いていたのがまるわかりだった。
目下に涙が溢れんばかりに溜まっているし、顔も赤みを帯びていた。

俺はさっきまで見ていた夢に没頭し、儚さと切なさを感じて、泣いていたんだと気付かされた。

「ひょっとして、あれは正夢なのかよ…。」
モニターと顔を合わせていた俺の声だ。

俺以外誰も居ない個室だから、問いかけに応じてくれる人はいなかった。
当然ながら、はっきりとした答えは明確にされなかった。

モニターを見つめるのはやめた。
俯いて、腕を伏せて、俺は泣き続けた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?