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【白井未衣子とロボットの日常】9・協議の日《7》

※予告なく変更のおそれがあります。
※設定上、残酷な描写があります。


土星圏の星々の首領陣との会議の前日までには、既に各々の宇宙船が地球に到達していた。
同時降下では事情の知らない地球人が慌てふためく恐れがある理由で採用しなかった。
1隻ずつ、電波の伝達によって降下作業を行なった。

土星は他の惑星と比べて、派生した星が多い惑星だった。
地球にやってきたのは、その中の幾つかの厳選された星々の首領陣。
元々フレアランス王家と親睦が深い星や、事前交渉の末に会議の都合をつけてくれた星まで。

よりどりみどりの特徴的な見た目をした星の住人達が、大きな会議室のテーブルの両脇に座っていた。
「これより交渉会議を始めます。」
会議室の奥、ホワイトボードの左手前にいたサレンが会議の司会進行を担った。
サレンの隣には、会議の主役であるリュートが座っていた。

「まず初めに、自己紹介を始めます。呼ばれましたらご起立とご挨拶をお願いします。」
サレンは1冊の冊子を取り出し、順番に名前を読み上げていった。
最初にリュートの名前が呼ばれてから、時計回りに首領陣を紹介していったサレンだった。

「出席者全員の自己紹介を終わります。司会進行はリュート王子の側近である私、サレン・D・フェルテがお送りします。
本日は、どうぞよろしくお願いいたします。」
サレンは小冊子を静かに閉じた。

「今回の会議の主催はリュート王子でございます。始めに王子から皆様への議題を述べます。
皆様からのご意見やご要望をお願いいたします。
詳細はテーブルの上の小冊子にも記載されております。そちらからも参考して頂いても構いません。
議題の後に場を設けますので、まずはお聞きくださいませ。」
サレンは一歩後ろに下がった。

入れ替わるようにして、リュートが立ち上がった。
彼の議論が始まった。
「改めて、本日の御来訪に感謝いたします。手短ですが、皆様へのお願いを申し上げます。
…地球人の宇宙進出に、どうか御支援、御援助をいただきたい。」
その瞬間、会議室がざわついた。
サレンが静粛に、と言い放ってすぐに収まったが。

「事前交渉時に説明が行き届かず、誠に申し訳ございません。
ですが本日、私のお隣に[ラストコア]の西条宗太郎司令官もお越し頂きました。彼は地球人です。宇宙進出への熱意は本物です。」
「宇宙進出って…一体何をするのかね?」
首領陣の1人が口を挟んだ。
「応答の場を設けます、まずは王子の話を…。」
「概要はおおむね理解した。何の為に宇宙へ出るのかね?
膨大な自然溢れる星で、資源に困り果てているわけではなかろう。」
「仮に資源不足だとしても、我々派生の星々の民からすれば雲泥の差だろう。」

1人が口を出すと、周りの者達も同調して意見を言い出した。
サレンも司会進行の務めとして、静粛の指示を出し続けた。
しかし、会議室内は騒ぎを増すだけであった。

そこで、机を手のひらで強く叩いた者が1人現れた。
リュートの隣の席についていた、会議室内の唯一の地球人。
[ラストコア]のトップである、西条宗太郎総司令官が立ち上がったのだ。
叩いた音の衝撃が効いたのか、首領陣は一斉に静かになった。

「司会者からの紹介でご存知と思われますが、改めて名乗り申し上げます。私は外宇宙対策本部[ラストコア]の総司令官・西条宗太郎と申します。」
宗太郎は言い切った後、深く頭を下げた。
姿勢を正すと、話を再開させた。

「私は地球人代表としてこの場に出席しました。
事実、派生の星々の皆様と比較すれば、我々原始地球は平穏な星とみなすでしょう。
ですが、我々もずっと平穏に暮らしてはいません。
地球では多数の民族が存在します。
かつての歴史を辿れば、地球には多数の内部戦争を経験しました。
現在は表面上は穏やかでも、内に民族間の遺恨が残り、時折武器を交えた戦いを繰り広げる地域もあります。」

ここで宗太郎は一旦区切りをつけ、目を閉じた。
目はすぐに開かれた。ふぅ、と深呼吸をして、発言を続けた。

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