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ヤマタノオロチを殺すスサノヲ【オンライン・キャプション】

キャプションに書ききれない作品情報を解説するnoteです。

作品の制作手法はこちらのnoteで解説してます。

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ヤマタノオロチを殺すスサノヲ
サイズ:250mm x 250mm
マテリアル:アクリル板 アクリルガッシュ
2021年8月制作

千駄木のギャラリー幻さんが主催する「アルコオル幻想」展に出展する作品として制作しました。

日本神話に登場する神スサノヲがヤマタノオロチを酒で酔わせ、首をはねて殺すというシーンを描いた作品です。

スサノヲは男神なのですが、かっこいいセーラー服の女の子が描きたいな~と思って女の子にしてみました。


背景となる明るいグリーンはアクリル板の色。その手前に、アクリルガッシュで色をつけたクリアアクリル板があります。

塗っている風景はこんな感じ

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ひっくり返すとこう

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スサノヲ is 誰

スサノヲは、日本神話に登場する神様の一人です。

太陽神であるアマテラス・月の神であるツクヨミと兄弟で、末っ子です。

担当は海です。

ヤマタノオロチ is 何

ヤマタノオロチは、日本神話に登場する怪物のひとつです。

八つの頭と八つの尾を持つ、とっても大きくて強いヘビです。


なぜ殺す?

ヤマタノオロチは定期的に生贄をを必要とします。

8人いた娘が年イチで生贄になり、ついに末娘(クシナダヒメという名前です)を生贄にせねばならず、嘆き悲しんでいた夫婦のもとをスサノオが訪れます。スサノヲは、末娘を嫁とすることを条件にヤマタノオロチの討伐を請け負います。

「娘さんが死ぬのと私のお嫁さんになるのと、どっちが良い?」ってかなりエグい問いですよね。現代であれば割とモラル的にダメな感じなんですけど、これが通っちゃうのが神話です。

この提案は受け入れられ、スサノヲはクシナダヒメを文字通り「櫛」に変えて髪に指し、ヤマタノオロチの討伐に向かいます。


どうやって殺す?

スサノヲが画策したのは、ヤマタノオロチを酔い潰すという戦略。

夫婦に酒の醸造を依頼し、「八塩折酒(やしおりのさけ)」と呼ばれる強い酒を造らせ、酒樽を置いてヤマタノオロチの8つの頭に酒を飲ませることで戦闘力を無効化するという手段に出ました。

べろんべろんに酔っ払い、動けなくなった大蛇。その首をスサノヲが撥ねていき大勝利!という物語です。かっこいいですね。

(余談ですが、シン・ゴジラの「ヤシオリ作戦」の名前はここから来ています。アメノハバキリも、スサノヲの剣の名前である「天羽々斬剣(アメノハバキリノツルギ)」由来です。)

神剣、天叢雲剣

大蛇の尾を切ったとき、中に固いものが入っていて、なんとスサノヲの剣が欠けてしまいます!
確かめてみたところ、しっぽの中から「天叢雲剣」というめっちゃすごい剣が出てきました!

ぶじヤマタノオロチを退治したスサノヲは、クシナダヒメをお嫁さんに迎え、新居を探す旅にでます。良かったですね。

​その後、天叢雲剣はアマテラスに献上されるのですが、のちにニニギが携えて降臨することで葦原中国(人間の住む世界)に戻ってきます。その後、ヤマトタケルが東征の際に神剣として持っていき、草原に火を放たれた際に周囲の草を薙いで先に燃やしてしまうという方法でやり過ごしたことから「草薙剣」という名前になりました。三種の神器のアレです。

もともとはヘビのしっぽに入っていたと思うとなんだかちょっとありがたみが薄れるなあと思っちゃいます。


よくある!酒でなんとかする話

スサノヲはヤマタノオロチを酔い潰して殺します。このように、敵を酒で酔わせて無力化するという話は、日本神話以外にもでてきます。

エジプト神話には、人の殺戮を止めない女神セクメトに血の色のビールを与え、血だと思って飲みまくり酔いつぶれたところを捕らえるという話があります。セクメトは伝染病を起こす怖い女神さまです。

ヒッタイト神話では、プルリヤシュという嵐の神がイルルヤンカシュという蛇と対立し、女神イナラシュの知恵を借りてイルルヤンカシュを酔い潰し暗殺するという話があります。

特に後者のヒッタイト神話は、ヘビvs自然神という構図もとてもよく似ています。一説には、ヘビは河川のメタファーであり、氾濫を起こす河川を治水によって収め、田畑を守ったことを表す物語なのだそうです。


怪物を倒す話、かっこいいよね

また、見方を変えれば、ヤマタノオロチ退治は「怪物を殺し、お姫様を救う」という物語の類型とも考えられます。

例えば、ギリシャ神話、ペルセウスの英雄譚の中には「大鯨の生贄にされたアンドロメダ―王女を救う」というものがあります。

また、キリスト教の聖人である聖ゲオルギウスも、田畑に毒を吐くドラゴンの生贄になる王女を救い、ドラゴンを殺しています。

また、頭のたくさんある大蛇を退治するという話は、ヘラクレスのヒュドラ退治の物語とも似ています。
ヒュドラは九つの頭を持ち、猛毒ブレスを吐く大蛇の化物です。首を撥ねたら2倍になって生えてくるという増殖&不死身属性も備えており、その点ではお酒で潰れてくれるヤマタノオロチの方がだいぶマシですらある厄介な敵です。ヘラクレスは首を撥ねた後に切断面を焼きつぶすという方法で攻略しました。


時代も地域もまるで違うはずなのに、日本にもヨーロッパにも似たようなプロットの話があるというのはすごく面白いなあと思っています。「でかい毒蛇がいたら怖いな」「王女をヒーローが救うのってかっこいいな」といったセンスは全世界で共通なんでしょうか?

絵の解説はマガジンにまとめていますので、興味がある方は他のnoteも見ていただけると嬉しいです!


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