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死せるバルドル【オンライン・キャプション】

キャプションに書ききれない作品情報を解説するnoteです。

作品の制作手法はこちらのnoteで解説してます。

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死せるバルドル
サイズ:250mm x 250mm
マテリアル:アクリル板 アクリルガッシュ
2019年4月制作

これは2019年の春にギャラリー幻さまで開催された「反額装芸術市」で出すために作った作品です。もう手元にないですが、北欧神話のフリッグ(バルドルのお母さんにあたる女神)と対になる作品として持っていきました。

額装していない小作品やスケッチなどを気軽に出展できるというコンセプトだったんですが、「わたしの作品、そもそも額装できないからな」っていうあんまりコンセプトを理解していない状態でやたらギラギラしてデカくて重くて固い作品を搬入してしまい、とても申し訳ない気持ちになりました。

白い壁と比べて、全体的にうっすら緑色がかっているのが分かるでしょうか。薄緑色で塗っているわけじゃなくて、こういう色のアクリル板を使っています。

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アクリル板の裏側から印刷・着色をしているので、着色されているアクリル板が絵の具の色味に影響してきます。これはまだまだ研究の余地があるので、蛍光カラーやエッジカラーなどの色付きアクリル板でいろいろテストしてみたいと思っています。

この作品では、アクリル板の全面に色を塗るテストをしました。

最初にマスキングしてクリスタルラメとシルバーラメを放射線状に塗っています。後光のイメージ。分かりにくいのですが、中心に行けば行くほどラメがぎっしりするようにグラデーションにしています。

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ラメ絵の具が乾いたら、チタニウムホワイトで全面を塗って仕上げ。

裏面は筆跡もけっこう残っているのですが、相変わらず表から見るとフラットでつやつやになりました。

ただ、ラメがあまり目立たず、立体感が感じにくい仕上がりになってしまったのがちょっと不満ポイント。これが「絵とは別のアクリル板に背景を描いて重ねた方が良いのでは?」というアイディアにつながっていきました。

※以下は、わたしの主観が多分に入った自己解釈です。専門性はまるで無いので、信頼せず、娯楽作品としてお読みください。

バルドル=北欧神話界のサラブレッド

バルドルは北欧神話における光の神です。光のオーラ、輝くばかりの美貌、そしてパパは最高神オーディン、ママは最強の女神フリッグ。めっちゃ分かりやすい王子様ですね。

バルドルの死亡フラグが折れそうで折れない

ある時から、バルドルは自分が死ぬ悪夢を見るようになります。ただの悪夢と思うなかれ、神話的には「死亡フラグが立った」状態です。このフラグを折るために、母親のフリッグは全世界を飛び回り、ありとあらゆる世界中のものに「バルドルを絶対殺しません」という誓いを立てさせます。バルドルはほぼほぼ全世界の全てのものに愛されているので、みんな喜んで誓いを立ててくれます。

ただし、唯一フリッグが言質を取れなかった(取らなかった)相手がいます。

それは、小さな小さなヤドリギ。あまりにも小さく、弱かったため、誓いを立てさせるほどのものでもないという判断だったわけです。フラグを折りきれなかったというか、むしろ死亡フラグを濃くしている感じがします。

そして最悪なことに、「誓いを立ててないやつが存在するぞ」ということがロキ(北欧神話におけるトリックスター=悪戯と称して反社会的なふるまいをするやつ)に知られてしまいます。

全盲のお兄さんを犯人にしよう作戦

矢も剣も刺さらず、石を投げても弾いちゃう無敵ボディになったバルドルは何をしていたかというと、遊びの標的にされていました。神々の間で、バルドルに物を投げつけて弾かれるのを見るという遊びが爆流行りしたそうです。面白映像としてTwitter映えしそう。

そんな遊びの輪の中に入れずポツンとしているのがバルドルの盲目の兄ヘズ。そしてそんなヘズに「遊びの輪に入らない?これ投げてみなよ」とそそのかすやつがいるわけです。ロキです。

ロキにそそのかされてヘズが投げたのは……そう、もちろん例のヤドリギの枝です。死亡フラグが回収され、刺さりどころの悪かったバルドルは死んでしまいます

あえて人間に例えるなら、みんなで水鉄砲打ち合ってワーキャーしているところに「君も混ざりなよ、この水鉄砲で」って実弾のライフル渡したやつがいて、本物の銃だと知らずに発砲したら阿鼻叫喚、という感じでしょうか。いたたまれない……

このお話だけ見ると「ヘズ=根暗で運の悪いぼっち」っぽく見えますけど、オーディンの息子なだけあって戦神ですし、ふつうに強い神様みたいです。私のイメージは漫画とかによく出てくる「盲目のアサシン」みたいなやつ。

黄泉の女神と交渉しよう

神々はロキの行為を非難しつつ「ワンチャン復活させられないかな」という可能性を模索します。北欧神話では神様も死んだら黄泉の国に行くというルールなので、黄泉の国の女王であるヘルの承認が取れたら生き返ることもできるわけです。

バルドルの弟にあたるヘルモーズという神様が交渉にあたり「世の中のすべての生物・非生物がバルドルのために涙を流したら生き返っても良いよ」という条件を引き出すことに成功します。

非生物って泣けないのでは?という素朴な疑問が生まれなくもないですが、そこは最高女神フリッグの手腕により涙を流させます。

ところで、「全世界のすべてのものに誓わせる」というタスクは結局未達とでしたよね。そう、「全世界のすべてのものに泣かせる」というのも失敗に終わります。たった一人だけ涙を流さなかった巨人がおり、条件が達成されませんでした。バルドルは黄泉の国から脱出できないことが決定しました。

ロキさん大炎上、からの社会的死

で、何となくわかると思うんですが、この「泣かなかった巨人」の正体はロキです。バルドルというサラブレッド御曹司を殺した挙句、復活までも阻止するというのはさすがに明確な悪意があると判断せざるを得ない。

怒った神々はロキを捕まえて地下に幽閉し、ロキはラグナロクまで封印され続けることになります。ウケ狙いで冷凍庫に入って炎上したおバカさんの最終進化形態って感じですね。

世界の終りまで謹慎処分という社会的制裁を受けたロキは、自分を幽閉した神様に一方的に恨みをつのらせ、その恨みがラグナロクの時に爆発します。ロキ、トリックスターって呼ぶとかっこいいけど、ただのDQNでは……?

絵の解説はマガジンにまとめていますので、興味がある方は他のnoteも見ていただけると嬉しいです!


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