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【建築家の頭の断面図】ユニットバスのデザインを諦めない(住宅)

今回はお風呂についてのお話。

ユニットバスは「ダサい」という言葉を時々聞くことがある。
だけど現状の日本の住宅で主流なのはユニットバス。

もともとは在来工法の浴室が一般的だったんだけど、最近すごく少ない。ではなぜなくなったのか?
「寒い」「掃除が大変」「防水が切れて白アリが出る」などが原因だと思う。

僕たちに依頼していただけるクライアントは「在来浴室で」という方も多い。ただ、見た目だけで在来と言うのであれば、その要望を深堀するようにしている。現在でもまだ「寒い」「掃除が大変」などは続いているからだ。
もちろん昔ほど寒くもないし、仕上げ材によっては掃除が楽なものもある。ただもちろんコストはかかる。

お風呂にこだわっている方で、暮らしにおいての重要度が非常に高ければ在来で考えていくが、そうでもなければ一旦UB(ユニットバス)も検討に入れてもらう。

それはなぜか?
在来のデメリットを改善しているからなんだよねぇ。

「寒くない」「掃除が楽」「防水がちゃんとしている」

これが担保されている。単純に考えて、建物の中にユニットを組む(新たに壁を造る)わけなので、あたりまえなのだけれども、デザインがいまいちだから嫌だという声も多い。

そこでまずは住宅のお風呂についての分類して整理しようかと思う。

  • ユニットバス(各メーカーの既製品)

  • ハーフユニット(床や浴槽は各メーカーのユニット、壁や天井は在来で自由)

  • 在来浴室(全てオーダーでつくる。断熱、防水、お手入れ注意)

  • オーダーユニット(UBと在来浴室のいいとこどり、ただコストが高い)

ざっとこういう感じだ。

コストについては

オーダーユニット>在来浴室>ハーフユニット>ユニットバス

ちなみに、1坪タイプで考えると、UBで工務店からくる見積もりは、おおよそ50万前後。在来については1坪で納めないケースが多く、肌感としては1.5坪~2坪で250~300万。オーダーユニットに関しては2坪で500~600万くらいだ。

ユニットバスとオーダーユニットではおおよそ10倍。
かなりコストがかかる・・・悩むよねぇ。

予算にある程度余裕があるならば良いが、そうでない場合、数百万違うとなると、2~3坪家を広げることができる、オーダーキッチンに出来るなど可能性は色々だ。

こういった場合、どうするか?なんだけど、例えばユニットバスを単体でデザインしないということが大切だと思う。
CURIOUS design workersの事例を見てもらいたい。

脱衣所を含めたUBのデザイン

この物件は木造で2階に浴室を設置するため、防水を考えるとUBをお勧めした。デザイン的には残念がっていたのだけど、脱衣室とユニットバスを同一空間としてデザインすることで、満足いただけるデザインクオリティまで昇華できた。
ポイントはUBはできるだけシンプルに、そして脱衣室の壁はできるだけ大きなFIXガラスで繋ぐ。脱衣室は印象的なタイルで床をデザインしながら、そのままバルコニーに出れるデザインとなっている。

目隠しも兼ねた脱衣スペース

脱衣室を広く、そして単独で設置することで生活感のある機器を無くしながら、外から見られるということを解決した。デザイン的にはバルコニーの腰壁をガラスにする方が視線のヌケが増すのだが、そうすると前面道路から丸見えになるので、腰壁を立上げ、高さを調整した。奥に見える森は秋には紅葉するので季節感を感じることができる。
クライアントのご要望の中で、風呂も好きだが、風呂から出てぼーっとくつろぐことが好きとのことだったので、脱衣室を居場所として計画したのである。

ユニットバスでもここまでデザインを昇華できるので、参考にしていただけたら嬉しいです。

機能とデザインのバランスを取りながら、ストレスを感じず、適正なデザインを計画することが重要だと思う。
よくファッションで「オシャレは窮屈」と言われるが、本来のデザインは「意匠と機能のバランス」を考え、ととのえることだと思う。
意匠だけ先行してしまうと、機能による小さなストレスがたまるため、設計者やインテリアコーディネーターはそこに注意が必要だと思うかなぁ。

ユニットバスでも意匠に凝ったものもたくさんある。
もちろんコストはかかるが、機能も担保されているので検討されてみたらどうかなって。

出典:LIXILホームページより

それでは在来工法の浴室はだめなのか?

そんなことはなくって、形状や大きさにこだわりがある場合は在来の方がいい場合もある・・・というか選択肢が在来しかなくなる場合がある。

例えばこの事例

CURIOUS design workers事例:antique

こういう浴槽の形は在来くらいしかできない。
そして広さに関しても部屋くらいの広さを確保しており、「お風呂に入る」だけではなく「脱衣室と一体的なくつろぎの場」という位置付けをしている。

浴室の窓に関しても大開口の掃き出し窓にする場合は在来になるケースが多い。
クライアントのご要望にしっかり耳を傾け、本当にそれが必要かどうかを様々な角度から検討し、提案すること。
これが僕たち設計者やコーディネーターに求められることだと感じる。

また違う角度で在来浴室を考えてみると・・・
例えば戸建てリノベーションの場合、もともと在来の風呂でそれをキレイにすることがある。
こういう時は意匠をしっかり変える。
要は「意匠にこだわる」といことだ。
お風呂が素敵だと・・・お風呂を好きになってもらえる可能性が広がる。
キレイで好きということは、汚したくないということだ。
結果的に掃除をこまめにしてもらえる可能性が高い。
人の価値観を良い方向へ変えることもデザインのひとつなので、意匠の役割をしっかり考えていきたい。

CURIOUS design workers戸建てリノベ実例:CATEGORY

ちなみにホテルなどにあるかっこいい浴室空間、特に外資系はだいたいオーダーユニットだ。みんな在来だと思っているが、まぁまぁ違う。
ホテル泊まった時は参考までにどこか継ぎ目を探すとわかるかも。

今回のお風呂は住宅設備においてキッチンと同じくらいコストコントロールが必要な場所だ。何を採用するかも大事だが、何を切り捨てるかも重要。常にコストコントロールを意識しながら、バランスの取れた建築を皆さんも目指してほしいし、僕もそこは頑張りたい。

今回はここまで。
ありがとうございました。

建築設計事務所「CURIOUS design workers」ではインテリアにこだわった様々なworksをUPしております。住宅、リノベ、店舗、中規模建築問わず事例が見れますので、ご興味があれば下記HPよりご覧ください。

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