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小説みたいななにか

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妄想の書き連ね。 ただの厨二病。
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#小説

「      」③

「 」③

楽しげに、朗らかに、笑うように歌う人が、好きだった。

「・・・歌の上手な人」

「それだけではあまりに抽象的です。職業から選択していただく場合は、より具体的にお願いします」

「シンガーソングライター・・・でいいのかな。バンドのボーカルの人でもいいけど。メジャーな人じゃなくていいから出来ればギターが弾けて、楽しそうに歌う人」

「性別は?」

「どっちでもいい。80年代以降がいいかな・・・わたし

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「      」②

「 」②

死んだ後でも脈があるのかと錯覚しそうになるほど、中心から末端にかけて、一定のリズムで痛みが走る。
痛みは生きるために脳から送られる信号だと耳にしたことがあったが、あれはデマだったのかと疑いたくなるほど、徐々に大きく、大きく。

「アカシックレコードというものをご存知でしょうか?」

聞き慣れた耳鳴りに重なって、女の言葉が脳内に置き去りにされる。
聞きたいとも理解したいとも思わないのに、聴覚を支配さ

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「      」①

「 」①

20××年、某日。

わたしは死んだ。

配偶者も子どももおらず、死後の処理をしてくれたのは唯一の肉親である妹だった。
最期まで面倒をかける姉で申し訳ない思いと共に、こんな姉でも涙を流してくれる妹の姿に、ほんの少しだけ笑みがこぼれた。

自分の死後の情報をなぜ知っているのか、不思議に思う人もいるだろうか。
わたし自身、これが現実であるのか幻であるのかはっきりとはわからないが、答えは目の前にあるブラ

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