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その人に一番近い肌、可能性を秘めた未完成。|Artist Interview - フォトグラファー・葵 3/4

写真のCURBONが、「写真の階段の登り方」をテーマに、活躍中のアーティストにインタビューする連載企画。フォトグラファー・葵さんのインタビューを、全4回に渡って掲載します(全記事は、記事末尾を参照ください)。

「青色」「肌」「未完成」をテーマに掲げる葵さん。前回の「青色」に続き、「肌」「未完成」のテーマを掲げる理由や、その思いを伺いました。

誰もが持つ「肌」という要素を、葵さんはどう捉えているのか。完成してしまうことを拒むのは、どうしてなのか。そこには、葵さんの価値観や思いが詰まっていました。

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葵 profile
2001年生まれ。高校一年生の冬にフィルムカメラで学校生活を撮り始め、TwitterをはじめとするSNSで発信。プールで撮影した青の写真が話題になり、米原康正氏のグループ展に参加。2021年3月、高校生活の集大成となる個展『未完成な青』を開催。青が好き。

・Twitter ( @aoii6327 )
・Instagram ( @aoii6327 )
・note ( @unfinished_blue )

以下
インタビュアー: 片渕ゆり
インタビュイー:葵さん

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ーー 2つ目のテーマ、「肌」についてのきっかけや思いを教えてください。

人の肌には、写真を撮り始めた最初の頃から興味がありました。だって、肌って、なんだか「人間!」って感じがしませんか?

ーー 人間……!?もう少し詳しくお願いします!

社会に出ていく中で、みんな、本来の自分を繕うようになると思うんです。他人と関わっていく中で、服を着るようにいろいろと自分にかぶせているような。

でも肌は、物理的にその人自身にいちばん近いものですよね。内側にいちばん近いところ。それがすごく魅力的で。

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その人本来の性質が見えると、なんだか惹かれますよね? 誰かのありのままの姿って、人間くさい。だから興味深いなって、ぼんやり前から思っていて。

人間くささ、人間らしさを求めていった先が「肌」だったという感じです。

アメリカの写真家・Ryan McGinley(ライアン・マッギンレー)の写真もすごく好きなんですよ。大自然の中で、裸で飛んでいるような、そういう作品が多いんですけど、人間らしさを感じますし、「自由」とか「開放的」という言葉が似合うんです。

そういう表現って興味深いですし、どんどん探求していきたいなと思って、今に至ります。

ーー 人の肌こそが、もっとも嘘のない姿だということでしょうか?

そうかもしれません。あと、作品撮りとして、ランジェリーやインナーの写真も撮るんですけど、ファインダー越しに見て純粋に「きれいだな」とも思います。

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ーー ビジュアルと概念の、2つの側面から「肌」に惹かれるんですね。

そういう感じです。

ーー 葵さんの撮るポートレート写真は女性のイメージが強いのですが、なにか意図があってのことなのでしょうか?

まだちゃんと自分の中で言葉に出来ていない部分もあるんですが、ジェンダーの問題に興味があって、そういう思いが関連しているかもしれません。

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前回の「青」の話もそうなんですが、固定観念のようなものに流されたくないなと思っていて。社会で「当たり前」だとか「常識」だと思われていることを、そのまま鵜呑みにしたくないんです。自分の頭で考えて選択したくて。

ーー それって、テーマの3つ目である「未完成」にもつながりそうですよね。未完成をテーマにしようと思ったのは、どうしてだったのでしょう?

「未完成」というと、いつまでも最善に辿り着かないように思われるかもしれません。でもそういう意味じゃないんです。

なにかが「完成」してしまうと、もう上には行かなくて、改善されなくなりますよね。ストップしてしまう感じがしませんか?

「未完成」なら、毎回が最善で、どんどんレベルアップして、よい方向に変わっていける。上を求めてレベルアップできる気がします。

そうやって生きていきたいなという思いがあって、決めたテーマです。

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ーー さっきの固定観念の話じゃないですけど、凝り固まってしまいたくない、という思いが強いのでしょうか。

それは強くあるかもしれません。人だって考え方だって、全部変わっていくものですし、そうあるべきだと思っているので。凝り固まって満足して、そこで止まるのはつまらないなって。

ーー 変化は善、ですね。

楽しいですよね。環境を変えることも好きなんです。だから生活も、たとえば住む場所とか、関わる人もどんどん変えていきます。切り捨てていくのではなくて、関わる場所や人がどんどん増えて、レベルアップしていくようなイメージです。

いろんな場所でいろんな友人ができて、新しい葵さんになっていくんですね。


編集後記

自分の中の価値観や思いをテーマに据えている葵さん。

最終回となるVol.4では、葵さんにとっての写真やレタッチの意義や、日々どんなふうに彼女が世界を捉えているのかについて、伺います。お楽しみに。

Interviewer / Writer : 片渕ゆり(@yuriponzuu
大学卒業後、コピーライターとして働いたのち、どうしても長い旅がしたいという思いから退職。2019年9月から旅暮らしをはじめ、TwitterやnoteなどのSNSで旅にまつわる文章や写真を発信している。
Editor :伊佐知美(@tomomi_isa
「旅と写真と文章と」をこよなく愛す編集者、フォトグラファー。日本一周、世界二周、4年間の旅×仕事の日々を経て、2020年夏より日本で一番人口の少ない沖縄県読谷村にて、海と空とさとうきびに囲まれた暮らしを開始。

葵 Interview Index






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