うさぎ
最初の1ページ目から胸がぎゅっとした。子どものころうそがばれた時になるぎゅって胸がつかまれるあのときと同じ感覚。
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NHKの特集で、絵本を通して受刑者と関わりを持たれている方として村中理衣先生のことを知った。大学のレポートの題材にもするなど、女性の薬物依存症者であり、仲間ととともに過ごす自分には希望に感じるものがあった。
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村中先生のSNSを追っていくなかで、この絵本と出会った。
この帯の言葉に惹かれないわけがなかった。
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言えんかった。耳が痛いなんて言えんかった。
先生に言ったら、お母さんに言って病院連れて行ってもらわないとって。
せきがでても、家では我慢した。ときどき階段やトイレで静かにコンコンした。私、悪い子だからかぜくすりどろぼうした。
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家族って繋がってる。ずっとずっと関わりあっていく。
わたしのおとうさんうさぎは狭い場所で育った。おとうさんうさぎは強く生きようとした。らいおんのようにぐんぐん前にすすんできたんだと思う。
でもおとうさんの中にもうさぎもいてるんや。
おとうさんのおとうさんはどんなうさぎやったんかな。
おとうさんのおかあさんは。
おとうさんのおとうさんのおとうさんはどんなひとやったんかな。
わたしはおかあさんうさぎになっていいのかな。なれるのかな。こわい。うさぎちゃんを愛せるのかな。どうやって大事にできるのか分からない。
おかあさんになりたいなんておもわないほうがいいにきまってる。このよわいたねを後ろにつなげるのはよくない。いまはまだそうおもう。
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いまのわたしは自分の中のうさぎに気がついてる。仲間と出会ってわたしの中にもうさぎがいるって気がついていった。
今はあの時、言えんかったことを言葉にすることができてる。
たくとの気持ちなんとなく分かる。寂しいって言うの難しかった。寂しいって言ったら困らせてしまうかもしれない、おめでたいことやしなおさら。素直に皆のようにおめでとうが言えない自分が嫌やった。どうやって気持ちの整理つけていけばいいのか子どものころは分からなかった。誰かに聞いていいもんなのかも分からんかった。
今は教えてくれる仲間がいてて、言葉を覚えて言って表現できるんだけど、昔、あの頃にも言葉があったら、たらればだけど、あったらなあ。
ずっと強くないといけないと思って、振舞ってきた、駆け抜けてきたけれど、いまはうさぎもいいやんって思える。
このことに気がついた時、自分の心がすこし軽くなった。
自分の中のうさぎに、かかわり合う他者のうさぎにすこし優しくなれた。
と書いた今も、うさぎの自分が嫌になるときもある。自分の中のうさぎを傷つけようとする自分がいる。やっぱり生きていくのは難しいことで、不安にもなって、私なんて、と思ってしまう。自分の未来を憂いてしまう。
でも、そんなとき、自分に優しくなりたい、うさぎの私を私が認めてあげていいんだよ、いつも優しくしてくれる近くにいるうさぎたちに優しさを返していく、そうやってなんとか、『昼を超え、夜を超え、』生きていくしかないと思う。
この絵本が子どもたち、大人たちに、今を生きるうさぎたちに届いていくことを願う。
あたたかい絵本をありがとうございました。
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