闘争する。
▶︎闘争する。(雑学編)013
野生のライオンはオス一頭にメス数頭でひとつの家族です。普段は狩りをするのも子育てをするのも全部メスたちの仕事で、オスは何もしないで毎日ただダラダラ過ごしています。しかし外敵が襲って来たときに家族の前に立ちはだかって戦うのはお父さんです。
こうして一家は安心して暮らしているのですが、やがてオスが年を取って老いてくるとこのバランスが崩れて行きます。単独で暮らしている若いオスライオンが一家ごと乗っ取ろうと老ライオンに戦いを挑んで来るのです。それでも何度かは撃退し事なきを得るのですが、やがてお父さんが負ける時が来ます。2頭のオスが戦って若いオスが勝つと、老いたライオンはすごすごと群れを離れて行くのです。
さて、新しい家族を手に入れた若いライオンが最初に行う仕事、それが「子殺し」です。老ライオンの子供たちを一匹づつ追いかけて首の頸動脈にガブリと噛み付くと、子ライオンは一瞬で絶命してしまいます。若いライオンは次々に子ライオンを追いかけて確実に殺していくのです。この様子をメスたちは抵抗もしないでじっと見ているだけです。そして不思議なことに自分の子が死んだ途端に彼女たちは発情するのだそうです。
鳥は一度に5つか6つの卵を産みます。そして雛がかえると親鳥は雛たちのためにせっせと餌を運び続けます。しかし雛たちは全部が健康に産まれてくるわけではありません。中には一羽か二羽虚弱なものがいます。
さて春夏秋の間は気候も良く餌も豊富にありますが、冬なると思うようには餌を調達出来なくなって来ます。それでも親鳥はなんとか餌を工面してくるのですが、少ない餌はカラダの大きい健康な雛たちが横取りして虚弱な雛の口には入りません。やがて一番虚弱な雛が死ぬと、親兄弟みんなで彼の肉を突いて飢えを凌ぎ冬を乗り越えて行くのです。
野生の動物たちは過酷な自然の中で必死に生きようとしています。僕たち人間は文明を手に入れたことで軟弱になったと言えるかも知れません。しかし人間だってその体内では凄まじい生き残り作戦を展開しています。
男女が恋愛して体の関係を持ちます。数億という精子たちが女性の膣を通って卵子を目指します。しかし全ての精子が卵子を目指すわけではなく、その一部の精子たちは膣の壁に張りついたままじっと潜んである役割を担うのです。
その役割とは、彼らが生きているうちに万が一他の男性の精子があとから入って来ると、彼らは一斉に体内から強い酸を出して撒き散らし侵入者たちを殺してしまうのだそうです。自分の種を残すために野生の動物も人間も凄まじいアクションを実行しているわけです。
アメリカ映画はけっきょくセックスと暴力だけじゃないかという悪評があります。しかしこの2つは太古の昔には人間が生き抜いて行くためには不可欠なものでした。ひとつは子々孫々まで繁栄して行きたいという欲求。もうひとつは家族を守るために。現代になってもこの2つの欲求は僕たちの潜在意識の中に刻まれているのだと思います。
アメリカのアクターズ・スタジオの講師は「世の中を変えたいという意欲の無い人は俳優には向かない」と学生たちにアドバイスするそうです。
赤ちゃんが可愛いのにも理由があります。それはもし醜かったら親が育児を放棄してしまうからだそうです。赤ちゃんの夜泣きにも理由があります。あれは「手間のかかるわたしの面倒をちゃんと見るよね?」と親を試しているのだそうです。3歳のイヤイヤ期も「こんなわがままなわたしを愛してくれる?」と訴えているのです。子供たちは親の愛情を得るために(無意識に)アクションを繰り返してしているのです。
アメリカの映画監督が撮影を開始するときに「よーいスタート」ではなく「アクション」と言うのは理に叶っていると言えます。
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