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白となるか黒となるか、の世界で人は生きる

同じ世界に生きるのだから、日々ご一緒する人々はいい人であってほしいと思うし、同じように、自分も他の誰かにとっていい人でありたいと思う。
小さなイザコザから世間を騒がす犯罪まで、悪とされるものが絶えることのない世の中で、そんなものは幻想だと打ち捨てられてしまうのだろうが、それでも私は、「みんないい人」なのだという希望を持って生きていきたい。
今日、『虎に翼』第19話は、寅子の台詞にあるように、そんな希望をそっと肯定してくれるような回だった。

登場は何だかヤな奴!という印象だった轟。
大庭氏の妻サゲ発言に笑わない姿に「おっ」と思わせた後、ハイキングの集合場所でのシーンで一気に好感度が上がる。
一方で、最初は隙のない(それが胡散臭くもあったのだけど)好青年に見えた花岡。
彼の方は話が進むにつれ、本心が少しずつ漏れはじめる。こちらは「あーあ(やっぱり君もか)」というガッカリ感だ。ここまでが昨日。

でも、オセロのように順にひっくり返ったかに見えた互いの印象が、今日綺麗に白に揃ったではないか。
寅子たち女子部の皆に対する気持ちが変化していることに驚きつつも、素直にそれを認め言葉にする轟。
そんな轟に叱咤され、怒鳴り返すでもなく、捻くれるでもなく、言い訳をするでもなく、上京してからの自身の振る舞いを素直に認める花岡。自分のどんな態度が「男っぷりを下げる」ものだったのか、そしてなぜそんな態度をとってしまったのか、こんなにもすらすらと話せるのだから、そういう態度をとるたびに、彼の中ではチクリチクリと小さな棘が刺さり消えなかったのだろう。
素直に吐き出せてよかった。

人は黒白ひっくり返る。時に、白から黒には簡単にひっくり返るのに、黒から白にはなかなかひっくり返らないなんてこともあるかもしれない。それでも、誰もいない世界で一人生きるのでない限りは、ひっくり返るきっかけはどこにでもあるのだ。
それはつまり、人は必ず「良い面」を持っているということに他ならない。

どんな人に挟まれるかに影響するという制約はあれど、言い換えれば、良い連鎖が始まれば、見事なほど綺麗にパタパタっと白にひっくり返っていくものだ。
何かきっかけがあった時、今日の花岡のように素直にひっくり返れる人でありたいと思う。


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