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その一瞬に書ききれないほどの思いがある

*読みやすさのために、選手名は敬称略で書いております。心の中ではいつでも「さん」または「選手」と読んでおりますので、皆様も心の中で補完していただけたら!

今年の箱根駅伝が終わった後、もう何も考えられないくらいぼーっとした。

早い展開に目が離せなかったから?

それももちろんある。でも、一番の理由は「追いかけたい選手が多すぎて、目も耳も頭も常にフル回転だったから」だ。

応援しているチームは昔から変わらず東海大学。佐藤悠基の「空前絶後の区間記録」に衝撃を受け、箱根駅伝にハマって以来、東海大が本戦出場を逃した年もずっと東海を応援してきた(学生連合に出る早川と給水の村澤を全力応援)。でも、10年間見続けた結果、私にとってはライバル校の選手たちのストーリーも積み重なっていたのだ。

1区:責任と重圧を打ち破った先の姿を楽しみに

出雲、全日本と思うような結果を残せなかった東洋大学の西山。彼がこの箱根で復活してくれることを私は強く願っていた。正確に言うと、「自分が納得できる走りをして、申し訳なさから開放されてほしい」。これが私の願いだ。

スタートして最初のカーブを彼が最初に曲がった時、「最初に曲がった選手が区間賞」のジンクスが叶う気がした。去年と同じ展開。きっと箱根は負けないはず。

でも結果は区間14位。かつてないほどのハイペース、ハイレベルなレースは不安を現実にしてしまったのかもしれない。

1区の失速は他の区間と比べても、必要以上に目立ってしまう。その分、10位という最終結果の責任と、来年の立て直しという重圧が、より一層彼にかかってしまうことが心配でならなかった。そんな時、東洋大学OBでスポーツ報知の記者でもある竹内達朗さんの、とてもやさしい言葉を見つけた。

「西山君、OBにそんなに気を使う必要はないよ。ここにいるOBで、君ほど強かった選手はいないんだから」

「東洋大ランナーの素顔 箱根路でブレーキを連発したOBの記者が見た」
(2020年1月6日 11時27分スポーツ報知)より抜粋

あたたかいOBの目がある。その中で、彼が納得のいく1年を過ごし、最後の箱根路に姿を見せてくれたらと思う。調子を取り戻した西山は、私が応援している東海大にとって、ただただ脅威でしかないのだけれど。

1区:「黄金世代」という重圧を真っ向から受け止める

東海大1区は4年生の鬼塚翔太。いわゆる「黄金世代」の四天王(鬼塚、館澤、關、阪口)の一人だ。大学入学時から注目を受け続け、結果を期待され続けた現4年生たち。4年間、その姿を負い続けたいちファンの私の目には、彼らが「黄金世代」という言葉を真っ向から受け止め、期待に応え続けることに全力な姿がずっと映っていた。そして、その姿は最高に格好良かった。

まわりは僕らを「黄金世代」と呼んだ
それが本物であると胸を張りたい
誰よりも努力、チームをひとつに
今日は「走りたかった」
仲間のためにつなぐ

「続報!箱根駅伝 ~~第96回東京箱根間往復大学駅伝競走~」
2020年1月3日(金)放送より

箱根駅伝2日目、復路の放送終了後に流れる続報番組の最後。その年に箱根を走った4年生(の数名)の走りやコメントで構成される「箱根駅伝最終走(ラストラン)」というパートがあるのをご存知だろうか?

東海大学からは、1区の鬼塚、そして6区を走った主将の館澤の2名が出ていた。上記引用は、その時に流れた言葉だ。

本当に格好いい。東海大学をずっとずっと応援してきているけれど、あなた達は間違いなく最高の世代だったし、これからきっともっと強くなって、日本陸上界を駆け抜けていくのだろうと信じている。

鬼塚選手がコメントもしていた「今日走りたかった」仲間は、きっと關や阪口だけではない。大学時代は箱根路を走ることができなかった、でも高校時代は世代トップクラスだった羽生も、実業団で競い合っていく姿を、私は想像している。これからが本当に楽しみだ。

2区:笑顔はやっぱり強さだ

なぜかわからないけれど、今年は4年生に思い入れが強い。推しの東海大にすごい選手が多いのはもちろんなのだけど、全体的に競技も強いがキャラも強い選手が多いんじゃないかと勝手に思っている。(毎年そう思ってる説もあるけど。)

その中でも、私が個人的に一番応援していたのが、駒沢大学の2区を走った山下だ。

彼を知ったのは去年の2区。襷渡しの瞬間に中継所にいない、というハプニングがきっかけだ。

めったにないとはいえ、一瞬の出来事だし、大々的に取り上げられたわけでもない。それでも注目してしまったのは、上記noteを書かれた Ekiden News主催の西本さんが、箱根駅伝後の新年会(Ekiden News 2019 暗黒新年会)でこんなことを言っていたから。

「山下選手が大物だなと思ったのが… 笑顔なんです。普通これ、顔がこわばったりとかするのに。この選手はほんと強くなるなと思って、だから2区なんだなって。」(意訳)


なんて強心臓なんだ!と驚いて、そこからずっと彼に注目していたら、確かに笑顔。そして強い。なのにいつも微妙な位置にいて、なかなか映像が出ない!2019年の全日本大学駅伝なんて、アンカーでひとつ順位を上げ、3位でゴールしているのに、そのシーンはテレビに映らず、ひっそりとゴールしていた。

そんな「テレビに映らなくてもいい仕事をする山下」が、この箱根では苦戦した。今回も戦闘争いから少し遅れる位置のため、テレビにはなかなか映らず、映ったのは東洋大・相澤と東京国際大・伊藤のユニバーシアード金&銅コンビにあっという間に抜かれてしまう瞬間。彼らについていくことができず、悔しさに覆われた笑顔が今でも頭に残っている。

そんな山下も箱根駅伝最終走に登場した。

いつでも笑顔
それは緊張を隠すため
去年の2区は大失敗
でも走っちゃえば前だけを見た
最後の「花の2区」
苦しくても最後は笑顔で

「続報!箱根駅伝 ~~第96回東京箱根間往復大学駅伝競走~」
2020年1月3日(金)放送より

これを見た瞬間、私の涙腺は大崩壊した。

ごめんなさい、山下選手。私はあなたのことを勝手に「明るくて天真爛漫なキャラ」だと思ってました。箱根駅伝という大舞台で戦う選手が、緊張を感じず、無邪気に心からの笑顔を作れるのか?なんて、ちょっと考えればわかることなのに。

そして、「苦しくても最後は笑顔で」。

この言葉に、私はこの先もずっとこの選手を応援し続けると決めた。卒業のの彼の進路もしっかりチェック済。大丈夫、実業団でまた、笑顔で走る姿が見られる。

来年のニューイヤー駅伝、私も笑顔で彼を応援したい。

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