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【読書日記】「南町奉行と逢魔ヶ刻」 風野真知雄 著


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これから「逢魔ヶ刻」のレビューを書いていきますが、長々と読んでいられない!という方は、ぜひ、YouTubeでの読書Vlogを観てください。
1分20秒ほどなんで、そっちの方がお手間を取らせないかと。

お時間のある方は、この後に書くレビューにお付き合いいただけますと幸いです。

逢魔ヶ刻(おうまがとき)

夏になると、時代小説や第二次世界大戦の頃を題材にしたものを読みたくなります。
高校生の時に、田辺聖子著「源氏物語」を読んだのがきっかけのような気がしますが、夏休み、まとまった時間があるから長編を選んだのか、なんとなくその頃から夏に時代小説を読みたくなったのか、そこらへんのことは自分でもわかりません。


夏に読みたくなる時代小説

今回の「逢魔ヶ刻」。
午後6時ごろを指すそうです。
真っ暗な夜ではなく、仕事を終えた人々が家路につく、まだ暮れ切っていない頃を逢魔ヶ刻、と呼ぶとは初めて知りました。
少し怪しくも風情のある表現だと思いました。

事件の始まり

暮れ六つ(午後6時ごろ)の江戸橋の上。
二百両を無くしてしまい途方に暮れていた同心の加麻田周二郎は、奇怪な殺人事件を目撃する。
大勢の野次馬が取り巻く真ん中に、首や腕、足を無惨に折られた男の遺体があった。
野次馬たちが、逢魔ヶ刻だから魔物の仕業に違いない、とささやいている。

南町奉行は理想の上司

江戸の、市井の人々の暮らしがまるで今、ここにあるかのように描かれていて、時代は違っても親戚付き合い、人付き合いの悩みや、考えること、起こる事件、悪事、気持ちの揺れなどは現代の私たちと同じだと思いました。

私が特におもしろかったのは、第二章「幽霊売ります」の七条屋とお筆の関係。
全体の中で、ここがコミカルで場面を想像して笑ってしまいました。

粋な江戸の推理小説なのであらすじは書きませんが、各章でそこ、ここにあった伏線は見事に回収されていきます。
南町奉行の根岸肥前守鎮衛(ねぎしひぜんのかみやすもり)は理想の上司です。
部下たちが聞き込みをして集めてくる情報から、深く推理をし、事件のキーパーソンに鋭い問いを投げかけ、一生懸命働いた部下を労う、また、部下のひとり、加麻田周二郎が無くした二百両問題も解決してくれました。
人格者ですね。
こういう人物こそが人の上に立つべきだ、と兵庫県民の一人である私は痛感しているわけです。

私は初めて読んだ作家ですが、「耳袋秘帖・南町奉行」というシリーズものみたいなので、長年のファンがいる作家さんなのでしょう。

老眼フレンドリーな文庫本

時代推理小説、やっぱり冬より夏、という気がしますが、みなさんはどう思いますか?
文庫本でありながら、気持ち文字が大きくてくっきりしていて老眼の私にも読みやすかったです。

8月も末日になり、日の暮れが少し早くなったと感じるこの頃。
午後6時はまだまだ明るいので「逢魔ヶ刻」とは呼べませんが、虫の声で気づく秋の気配と一緒に時代小説、いかがでしょう。




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