研究書評10月1週『タジキスタン共和国の警察改革:何を優先すべきか?』
タジキスタン共和国の警察組織には麻薬密輸や犯罪集団の取り締まり、国境警備に問題が確認できます。当該の問題群は他の中央アジア諸国でも確認できるのですが、独立直後から内戦や侵犯に曝された同国にとって、実力組織の改革は必要性は強く認識されていたと思います(実施の有無を別にして)。
同国政府は2010年代の初頭から警察組織の改革を開始しました。しかし改革では政治行政と市民社会の期待する手段や目的に齟齬が存在しています。まず前者は公共安全に行政資源を集中するため、内務省の機能強化を期待しています。私が仮説として提示した「中央アジア諸国では軍事組織の代替手段として警察組織が利用されている(『クーデター防止装置』)」の「(従来は軍事組織ですが)警察組織に行政資源が集中している」を支持しています。
後者は警察組織に信頼性や人権意識を定着させるため、蔓延する汚職や暴力を抑制することを期待しています。同じ中央アジア諸国であるキルギス共和国においても警察改革に関与する援助国や国際機関が同様の期待を示しています。
タジキスタン政府の警察改革は山岳パダフシャン自治州を重点地域と設定している可能性があります。すなわち他の中央アジア諸国とは異なり特定地域に改革の焦点が当てられている特徴が確認できます。同地域はアフガニスタン国境と隣接しており、少数民族が居住しているため、実力組織に対する資源集中が優先されるのでしょう。
キルギス共和国と同様に欧州安全保障協力機構(OSCE)が警察改革の援助を実施しています。2013年から2020年までの警察改革が紹介されていますが、2004年の法律枠組みから市民社会が期待した変更は確認できません。
タジキスタン共和国でも市民社会や援助主体が期待している市民社会゠行政府or警察組織より警察組織゠行政府の信頼性が優先されています。
本論文ではキルギス共和国とカザフスタン共和国において市民社会゠警察組織の信頼性を構築する取り組みが確認できると評価しています。
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