この曲のココが気持ちいいぞ!    ~「幸せになりたい」/今井美樹


「幸せになりたい」(1990年)/今井美樹
作詞・作曲:上田知華

先日訃報がね、上田知華さんのね、ニュースサイトに上がってましてね。
実は昨年2021年の9月にすでにお亡くなりになってたとの事なんですけどね。まだ64歳。こればっかりはしょうがないですけどね。

シンガーとしての今井美樹さんが好きでいくつかアルバムを聴いてた頃があるのですが、その時にこの上田知華さんっていう作家にめぐり逢ってしまったんですねぇ。

もうね、センス抜群。

いろんな方に曲を提供なさったということなんですが、ヒットしたのが今井美樹さんの曲が多いってことで、相性がよかったんでしょうね。
今井美樹さんのシングルでいうと、「彼女とTIP ON DUO」(1988年)、「Boogie-Woogie Lonesome High-Heel」(1989年)、「瞳がほほえむから」(1989年)などありつつ、その後にミリオンを記録した「PIECE OF MY WISH」(1991年)が爆誕します。

で、今井美樹さんの話ですが、私の印象では、当初モデルや女優として認知されてた状況から歌手でもデビューした、って風に見えてました。
そういう意味では才能に恵まれた方だと思いますが、わたし的にはシンガーとしての魅力が圧倒的だと思います。
だから(ていうか知らんけど)、いいプロデューサーが目を付けて、いい作家に声がかかって、職人ミュージシャンが集められて、自身としてもシンガーとしてぐんぐん成長して、ってことになってるんじゃないのかな。
動画サイトでライブ映像観てても、バンドとかいい音出してるもんね。事務所がお金積んで売り込んで、という感じがあんまりしない。ほんまに知らんけど。。。

で、このたび採り上げたいのは今井美樹さんのアルバム『retour』収録の「幸せになりたい」です。
だからお前、なんでその曲なん?という声もあろうかと思いますが、好きなんですよとにかくこの曲が。
わたし、てっきりこの曲シングルかと思ってたのですがどうも違うようで。
今井美樹は好きだけどアルバム曲までは知らんなぁ、、という方は必聴です。

まずね、イントロがかっちょいい。完璧。
この12小節に隙というものが無い。職人さんの仕事。

色々いいんですけど、タムの音も位置もいい。テンポもちょうどいい。あとあのトイスネアみたいな音が地味にいい。スネアの音もいい。
編曲は佐藤準さんという方で、「PIECE OF MY WISH」も手掛けられたとのこと。たしかにあのイントロも見事ですもんね。
ちょっとググらせていただいたのですが、私の大好きなアン・ルイス「WOMAN」のアレンジも!!

Aメロ行くんですが、しょっぱなから最後まで、なんとなめらかでエレガントなコード運びなんでしょうか。
全部気持ちいいので全部書きます。

Aaug7なんていうトリッキーなコードが登場しますが、これはその前のB♭m7からルート音をB♭→A→A♭→Gと落としていくプロセスの中で、むしろ自然に起用されたコードですね。
下記、ピンとくるように、半音下げてCキーでも書いておきます。

Bメロ行きますが、ここでも下記赤字のG♭m7/Bってのが気持ちいいですね。
AメロでD♭/A♭(Ⅰ/Ⅲ)が出てきましたが、ここではD♭/F(Ⅰ/Ⅴ)も使います。
分数コード自由自在です。

ほんで、一番気持ちいいとこいきますよ。
Bメロを繰り返したあと転調するところね。

初めて聴いたとき「おぉ!」って思った。
曲の最後に向かって盛り上げるためにキーを上げる、って手法は定石中の定石なわけですが、どうやって上げるのさ、っていうのが作曲家やアレンジャーのセンスの見せ所。
上田さんか佐藤さんのどっちのアイデアなのかな。
とにかく私の乏しいデータの中では、この上げ方は無いなぁ。

Bメロで気持ちいいって言ったG♭m7/B(Ⅳm7/Ⅶ♭)っていうのをもう一回持ってきて、D♭キーから一気にEキーに転調します。
D♭キーのⅦ♭であるルート音BをⅤと見立ててEキーに持っていってるわけですね。
カラオケで言うところの「ねぇ、3つ上げて」っていう上がり方だから、かなり高くなります。
3つも上げてなんで成り立つのか。
それは、転調してからの♪Salala~は、「♪渋滞は毎日~」の部分のメロディだけしか歌わないから。(その先の「♪幸せになりたい~」の高い部分のメロディは歌わない)
上手いなぁ。。

離婚した親友が自分を訪ねてくる歌のようです。
「渋滞」「鳴らし合うクラクション」っていうのは、我れ先にと結婚を求めて奮闘する女性達っていうことで合ってますかね?
結婚=幸せという価値観がまだしっかり残る年代だったってことか。

ユニークな感性で詞と曲を紡ぎ続けた上田知華さん、あなたの曲が大好きでした。どうかゆっくりおやすみになってください。ありがとうございました。

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