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ゆれる

薔薇の語源はとある王国の古語で「(風に)揺れる」という意味だそう。風に揺れて茎からこぼれ落ちそうになっているその花を見て、昔の人が「薔薇」と名付けたんだって。じゃあ、揺れていなければ薔薇は薔薇とは呼べないの? 愛の象徴でもある薔薇の語源が「揺れる」なんて、愛が揺らぎやすいことを意味しているようで皮肉だけど、揺らいでこぼれ落ちそうなその愛を、落ちないようにそっと見守って支えて生きたい。

      • 異邦人 カミュ

        「きょう、ママンが死んだ。もしかすると、昨日かもしれないが、私には分からない。」  主人公・ムルソーのこのめちゃめちゃ有名な台詞で始まる「異邦人」。母の死に対して涙ひとつ流さず、葬儀の翌日には海水浴に行きそこで再開した元同僚・マリイと関係を結ぶ。そして隣人である女衒の男の肩を持つためだけに人を殺害し、その動機については「太陽のせい」と答える。そんな彼は世間の人々、そして司祭から心無い最低な人間だと判断され、斬首刑を言い渡される。 しかし読みながら、私はムルソーの人としての

        • ③ Soajo

          ③Soajo 謎に満ちたEspigueirosBarralから車でさらに15分ほど山道を登ると、石でできた謎の巨大な穀物倉庫群が突如現れる。これらはエスピゲイロと呼ばれ、とうもろこしなどを保存するために作られたそうだ。  ねずみ返しも設置されている高床式のこの倉庫は日本の縄文時代の遺跡を思い出させ、文化も時代も全く異なるところで同じようなモノが作られていたことになんとなく親近感を感じた。  日本のものと違うところは屋根の上に設置されている2つの十字架だ。ポルトガル人の信心深

        ゆれる

          ②つづき

           日が昇ってから歩いてみると、Barralは本当にのどかな田舎町だった。たまにすれ違う人はみんなお年寄りだし、おばあちゃん達は畑を耕している。ニワトリや犬の鳴き声もよく聞こえる。  少し歩いたところに、その教会はあった。正直に言うと想像していたよりしょぼくて残念だったし、その時は精神が参っていたので水晶に感動する心の余裕もあまり無かった。  でもやっぱりポップで可愛らしい。教会に埋め込まれた沢山の水晶を見て、作る時にせっせと石を埋め込んでいた人たちのことを想像して何だか笑

          ②つづき

          石をめぐる旅① Bom Jesus

          ①Bom Jesus-マカオの少年パコ コインブラからバス(rede express)で2時間半(ポルトで乗り換え)。中世から近世にかけてポルトガルの第一の宗教都市として栄えたブラガは、「祈りの町」として知られる。  着いてみると、町が想像以上に発展していて今風だったことに驚いた。「祈りの町」と言うくらいだからもっと時代に取り残されたような中世的な町並みを想像していたので少し残念な気持ちもあったけど、中心部のPr. da República の辺りはやはりびっくりするほど多く

          石をめぐる旅① Bom Jesus

          ベルリン 天使の詩

          映画 "寂しさを知ってみたい、寂しさを感じることって自分を丸ごと感じることだと思うから。 今まで出会った友達も恋人も、みんな偶然だったと思うわ。一緒に手を繋いでいた友達があの子だったのは偶然だし、ひょっとしたら道にいるカラスだったかもしれないわ。でも、その人である理由なんてなかったかもしれないって考えるううちはまだほんとの寂しさを知らないのよ。 でも、あなたに会った今、もう分かったわ。 私は本当の愛を知り、本当の寂しさを知ることができるのよ。"

          ベルリン 天使の詩

          突然、炎のごとく

          先日、『突然、炎のごとく』というトリュフォーの映画をみた。恵比寿ガーデンシネマで再上映されていた。 この映画、恋愛観を変えさせられかねない、危険な映画だった。笑 物語としては、ジュール、ジムという2人の青年とカトリーヌという自由で勝手気儘な女との三角関係がストーリーの基盤となっているんだけど、三角関係、というよりも、カトリーヌという魔性の女に翻弄される男たち、と言った感じ。 気を引くようなことをしては他の男と浮気したり突然消えたりして嫉妬させ、男が怒ったり悲しんだところ

          突然、炎のごとく