フェスで推し以外のアーティストのステージを楽しむことはとても大切
先日、BALLISTIK BOYZへの3度目のインタビューを行なった時のこと。
「タイの音楽シーンにはどんな印象をお持ちですか? 実際に生活をしたアーティストさんがどうお感じになったのか、ぜひお聞きしてみたいです」
という質問をしてみました。
2022年、半年間タイに拠点を移し活動していたBALLISTIK BOYZの7人。
イベントのために一時的に訪れるのと、現地に住んで音楽活動をするのとでは、まったく違う印象を抱くのだろうと思い、個人的にも聞いてみたいことでした。
いくつか挙がった中で、加納嘉将さんはこのように答えてくれました。
タイの方々が持つ、音楽への愛情や積極性と、知らないものを受け入れる寛容性は、異国の地で孤軍奮闘した7人にとってどれだけ心強いものだったか。
「日本だと推しを中心に音楽を聴く生活をする方が多い気がしますよね」
と私が返すと、松井利樹さんはすぐにこう答えてくれました。
観客としても、演者としても肌感覚でそう感じるのだろうなと思います。
知らない曲だろうに、手をつないで円になって踊っているお客さんを想像するとかわいくて仕方がない。
ステージ上のアーティストもそんな風に楽しんでくれたら嬉しいだろうな、とも思います。
私はこの時、もし日本でこれをやろうとしたらどうだろう? と心の中でこんなことを考えました。
“後ろの人に迷惑だから広がって円になることがまず無理。野外フェスの一番後ろだったらできるか。でも周りとペンライトの色を揃えて、同じ動きするだろうし、そもそも隣の人とは目も合わせないしなぁ。。”
日本のフェスでアーティストごとに観客が入れ替わるのも、考え方によっては、良席を本当に観たいファンの人に譲るための配慮と捉えることもできます。悪いことばかりではありません。
もちろんフェスなのですから自由に、それぞれの方法で楽しめばいいと思うのですが、他に目を向けると、やはり自分に返ってくることが多いと感じるので。
他アーティスト推しの方が、自分の推しを「〜さん初見だったけどファンになった!」とSNSでpostしていたらとても嬉しいはずです。
その方は、入れ替えの時に立ち去らずに残ってくれていたから、新しい音楽に出会えたのかもしれません。
推しが中心の音楽の聴き方も素敵なことですが、それって他アーティスト推しの方もそういう聴き方をしているということです。
つまり、より多くの人に聴いてほしいと思っている自分の推し曲が、思いのほか再生回数が伸びないとか、別の人に届いていないのは、みんながそういう聴き方をしているからだと、私は思っています。
流れていても耳に入っていないか、そもそもの先入観で排除しているか。推しが紹介して初めて受け入れようとする。
こんなにいい曲なのに何でみんな聴かないんだろう?広まらないんだろう? と思うのは、他ならぬ自分がそういう聴き方をしているからです。
と、私は自分自身に言い聞かせています。
インタビューは続き、タイでの活動を振り返っていただいた時、海沼流星さんはこのように話してくれました。
「お客さんは盛り上がってくれてるけど、音楽が好きだからなんだろうな」というもどかしさ、すごく分かるなぁと思ってしまいました。
バイブス担当の海沼さんだからこその視点でもありますが、そう感じながらも盛り上げるのは相当しんどかっただろうなと、勝手ながら想像します。
規模は遠く及びませんが、私も自分が書いた記事に反応していただいた時、その方の推しのことを書いているライターの記事だから読んでくれただけなんだろうなと考えてしまったりします。
そんなこと考えても何も始まらないのに、何より、そんなことを考える自分が一番嫌になります。
悔しい思いをした話までこの取材で打ち明けてくださったことへの感謝も混ざり、録音を文字に起こしながら何度も涙で画面が見えなくなりました。
加納さんの、タイと日本では音楽への興味の持ち方が違うという話と、松井さんのフェスでの入れ替えの話は同じことを指していて、それは海沼さんが「音楽が好きだからなんだろうな」と感じた悔しさにもつながると考えます。
もっと言えば、加納さんの「半年間そこに助けられた」という部分も含まれるわけで、答えの出ない堂々巡りになってしまいますが、すべてが表裏一体という感じ。
これらの総意が、前回のインタビューで日髙竜太さんが話してくれた、
という言葉に集約されているのかなと思いました。
アーティスト側の、表面的ではない心の中の言葉を聞くことができたのは貴重な機会だったと感じます。
推し以外の音楽を楽しむ姿勢は、どうやら私たちが思っている以上に重要なことで、果ては推しにも影響するのかもしれません。
まずはフェス全体を楽しむ心がけから。
日本もタイも、アジア全体の音楽シーンが盛り上がる景色はとても素敵だと思います。
そうした小さな願いから、今回のような国を超えたコラボレーションに結びつくのだと思いました。
最後までご覧いただきありがとうございました!
▼このnoteで取り上げたインタビューはこちら
▼前編はこちら
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