これからの「働き方」を考えるための ハンナ・アレント『人間の条件』Zoom読書会 5/24後記, 5/31告知
執筆:ぬま(ビジネスパーソン)
去る5/24に第4回を開催しました。
今回は3時間の読書会の後、参加者の方と他の読書会のネタをブレストをしました。
毎回、最後までお付き合いいただいた参加者のみなさん、本当にありがとうございました。
第7節 公的領域ー共通なるもの 〜 第9節 社会的なるものと私的なるもの
パラグラフを順に要約したスライドを用いて、ときどき音読も交えながら進めました。
前回に引き続き、テーブルの比喩を用いて、アレントの「公的」という概念の意味を読み解いていきました。
アレントの「公的」という概念には、
①可能な限り、万人が見聞きできるよう開かれていること
②共通のものとしての「世界」
これら二重の意味があります。
この事態を端的に表したものが"テーブルの比喩"です(cf. 『人間の条件』78-79頁)。これを図式化すると以下のようになります。
・同じテーブルの周りに複数の人々が集まっているという図です。
・人々はテーブルの周りに集まることによって各々の"視野"あるいは"パースペクティヴ”(翻訳では「遠近法」と訳されています)でテーブルやそこに生じる物事、そして他者たちを見聞きしています。
・各々のパースペクティヴで見聞きできる側面が”アスペクト"です。
・アレントによれば、人々が各々のパースペクティヴで同じ事柄を様々なアスペクトから見ている場合、また人々がそのようにして語り合っている場合にのみ、「公的領域」は開かれます。(現在の社会はどうでしょうか?)
・詳しくは、上の図と見比べながら『人間の条件』の第7節を読んでみてください。この読書会でも、以降もこのテーブルの比喩を適宜参照しながら読み進めていきたいと思います。
読みタグ
今回も「読みタグ」をやりました!
参加者で Google Jamboard を共同編集し、読みながら思ったことを自由に付箋(タグ)に書いたものです。
私的なものがどのように公的なものになるのか、たとえばファッションを例にして考えたら面白いのではないかという議論が印象的でした。
また、私有財産の最たるものとしての不動産が貨幣で交換可能になったことが資本主義の成立条件だったという話が出てきて勉強になりました。
さらに、ホッブズ、ロック、スミス、ルソー、カントを引き合いに共有財産(コモン・ウェルス)や自然権、国家について議論しました。
高校の世界史の授業で無理やり暗記させられたことを理屈で説明してもらって、懐かしかったと同時に、面白かったです。
下記リンクに誰でも匿名で編集できる読みタグをご用意しましたので、
是非『人間の条件』を読みながら思ったことを自由に書き込んでください!
ある程度まとまったら画像化してこのnoteに貼り付けようと思います!
印象に残ったところ
完全に私的な生活を送るということは、なによりもまず、真に人間的な生活に不可欠な物が「奪われている」deprived ということを意味する。すなわち、他人によって見られ聞かれることから生じるリアリティを奪われていること、物の共通世界の介在によって他人と結びつき分離されていることから生じる他人との「客観的」関係を奪われていること、さらに、生命そのものよりも永続的なものを達成する可能性を奪われていること、などを意味する。(『人間の条件』87頁)
60頁でも語られていまますが、private=deprived(何かを奪われている状態)という図式が再登場しました。
この箇所に関連して、講師のたしから
「最近の外出自粛生活において何か奪われていると感じるものがあるか」
と問いかけたところ、参加者の方から、家族のような私的な領域における「適度な距離」が奪われているのではないかという回答を頂きました。
"テーブルの比喩"の図とも関連して、アレントは公的領域を、テーブルや物世界を挟んだ"距離"の空間としても論じていますが、
私的領域においても「適切な距離」が失われている議論はとても鋭い指摘であるように感じました。
次回予告
次回は5/31(日) 14:00~17:00に開催します。
第9節「社会的なるものと私的なるもの」から第二章最後となる第10節「人間的活動の場所」の終わりまでを読む予定です。
第二章ではずっと公的/私的/社会的領域の区別について論じられてきましたが、いよいよ第10節では、それらに『人間の条件』の中心的テーマである「人間的活動」を絡めて論じられます。読書会でも「人間的活動」(広い意味での「働くこと」)を軸にして読み進めていきたいと思います。
なお、途中入会者を募集中です!
毎回冒頭で前回までのおさらいをしますので、おいてけぼりもありません!
ご興味ある方は、是非、下記noteの入会フォームよりご応募ください!
解説スライド
読書会用のスライドをご購入いただけます。取り上げた範囲について、パラグラフごとに丁寧に要約したものになります。理解の助けとしてご活用いただければと思います。15枚ちょっとのスライドになっています。
よろしくお願いいたします。
(以下、Google Slide を埋め込んでいます。)
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