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ライブスポット 南森町GaraGe始動

モッシー&ヨッシー

GaraGeのオーナーのモッシーさんと出会ったのは今から1年半ほど前。
それがまさか一緒にライブスポットを作ることになるなんて、人生は不思議だ。

当時モッシーさんは、所有しているビルの地下ガレージを仲間たちと一緒に改装してバーを開店した。それがGaraGe。俺は事務所が近くだったのでよく仕事終わりに飲みに行って常連の一人になった。

若いころに絵描きを志したモッシーさんと、かつて売れないミュージシャンだったヨッシー(俺)はすぐに意気投合して仲良くなった。

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※昼間のGaraGeは人気のサンドイッチ屋さん「サンドイッチマン」を営業してます。

何かが始まる予感は、年末のお伊勢参り。大阪の南森町から伊勢神宮まで3泊4日の徒歩旅行で200キロ弱の行程をモッシーさんの仲間たちにサポートしてもらいながら必死に歩いた。

最終日は朝の6時から歩き始め、次の朝の5時に到着するまで、寒さと足の痛み(ほぼ痺れに近い)でまさに地獄。初参加でペースの遅い俺に速度を合わせてくれたり、気を紛らわすように話しかけてくれたり、お互い苦しい中で、途中みんなで見上げた星のなんと美しかったことか!

道中、山奥の廃村を通ったり、民家でお茶をごちそうになったり、クラシック音楽が流れる牛舎の前を通ったり、軒先から覗き見る人々の暮らしは様々で、そこにはゆったりした時間が流れていた。当時やっていた会社をもう一度軌道に乗せるため、忙しい日常に埋もれて感覚が麻痺していた俺は、toDoリストから解放され、ただ汗をかき、土を踏み、歩くことがとても贅沢に感じたのをよく覚えている。

ボールは指先をかすめて

ミュージシャン時代も、会社経営のときも、指先がボールに触れていた感覚があった。ただ、うまくゴールに入れることができず、ボールは指先に触れてすり抜けていった。
才能が足りなかった。努力が足りなかった。それはその通りだ。ただ、こうも思う。そもそも、世の中のほとんどの人は才能と努力が足りないのではないか。多くの人が注目し、評価軸が出来上がったジャンルや業界に憧れ、抜きん出ようとすると評価の奴隷になるしかない。そのために払う犠牲は生半可ではない。人生は短い。健康な人生はもっと短い。
勝者になることを煽るのではなく、もっと優しい場所を世の中に作れたらと考えるようになった。
大好きなカートヴォネガットの言葉を紹介する。

「こんにちは、赤ちゃん。地球へようこそ。この星は夏は暑くて、冬は寒い。この星はまんまるくて、濡れていて、人でいっぱいだ。なあ、赤ちゃん。きみたちがこの星で暮らせるのは、長く見積もっても、せいぜい百年ぐらいさ。ただ、ぼくの知っている規則が一つだけあるんだ、いいかい ― なんてったって、親切でなきゃいけないよ」
カート・ヴォネガット『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』 浅倉久志訳 早川書房

ある夜、GaraGeのカウンターでモッシーさんにアイデアを打ち明けた。
あまりにも漠然としたアイデアだったので、恐る恐るだ。
上手に話せたかわからない。
とにかく、「みんな機械みたいになってる」「人間が人間でいられる場所を作りたい」「音楽やアートこそがその源泉だ」「役に立たないことに夢中な人たちを集めてささやかでも生活や仕事のサポートをしたい」「そういう人たちが育つ土壌をこの場所で作りたい」みたいなことを話した気がする。モッシーさんは「ヨッシー、それやろう!今、風を感じた。この場所は家賃もかからない。ぼくたちが手弁当でやればきっとできる。いっしょにやろう!」と言ってくれた。

俺はかつて役に立たないことを捨てた。ある日、その間違いに気づく。
次はもっと上手にできるかな?美しさを壊さないように。
きっと大丈夫。小沢健二の言葉を借りるなら、
Life is coming' back!!」なのだ。


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