サルトル佐助

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text 002/アンドレ・マルロー「空想博物館」について

アンドレ・マルローという人物を簡潔に紹介するというのはとても難しい。『人間の条件』を著した作家であり、思想家であり、そしてド・ゴール政権下のフランスでは1960−1969年の間に文化大臣として手腕をふるい、日本をはじめ世界各地を訪ね、「文化大国フランス」のイメージを各国に敷衍した外交官でもあった。 マルローの幅広い活動について紹介することは本懐ではないので、彼の美術史に関わる活動、特にその芸術論の根幹である「空想博物館」について触れていきたい。「空想博物館」についてのエッセ

    • イメージの楽園、あるいは迷宮

      我々はイメージの楽園に生きている。あるいは迷宮と呼ぶべきかもしれない。インターネットの世界では、湿潤な密林のように、手を伸ばせば望み通りの、さらに望んだ以上の情報を得ることができる。これはアンドレ・マルロー(1901ー1976)が生涯をかけて構想した「空想博物館」の理想郷に近づいていると考えることができるかもしれない。 マルローの「空想博物館」は、写真などの複製技術の発達によって時と場所の制約を受けず、想像力の赴くままにイメージを結びつけることができる実体なきイメージ(虚像

    text 002/アンドレ・マルロー「空想博物館」について