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止まらぬ札幌圏の地価上昇

こんにちは。(株)キュービック不動産広報です。北海道内の地価上昇は全国一のハイペースですが、値上がりは札幌を中心とする狭い範囲に限られています。札幌が北海道内の経済をけん引するのか、格差が拡大するのか道民の関心が集まっていることについて、社長に聞いてみました。(北海道経済2023.10月号掲載)

 8月3日に公表された今年の路線価。道内の平均額は前年比6.8%上昇しました。この上昇率は昨年に引き続き全国1位で、上昇は8年連続となります。

 道内の地価上昇の原動力となっていたのは、とくにコロナ前はニセコ圏を中心とする外国資本の流入でした。富裕層がスキー場からのアクセスが便利な場所に住まいを購入したり、こうした需要を当て込んだ企業が大量に買い集めるなどして地価が大幅に上昇しました。

これに対し、最近では札幌を中心とする道央圏が地価上昇を引っ張っています。札幌では2030年度内に北海道新幹線の延伸が予定されており、首都圏との間で人の流れが拡大するのは確実です。すでに、コロナで3年間我慢していた海外旅行を楽しもうと、多くの富裕層が内外から札幌の流入しています。

 冬季五輪誘致の機運は、2020年五輪をめぐるスキャンダルのためにやや下火となっていますが、それでも当初目指していた2030年ではなく、4年後の五輪を誘致するとの見方が強まっています。日ハムの新球場エスコンフィールドが開業した北広島市のエリアでも地価上昇が目立ちます。

 また、札幌市の中心部では前回の札幌五輪の前後に建てられたオフィスビルやマンションが相次いで建て替えのタイミングを迎えており、これも旺盛な不動産需要を支えています。

 道央圏ではもう一つ、千歳市内で半導体メーカー、ラピダスの工場建設が進められており、これに関連した住宅需要が旺盛です。わたしも不動産業界の知人から、このエリアでは賃貸住宅の空き家がほぼ底を付いたと聞いています。

 北海道全体でみた路線価が上昇しているのは、単純に札幌圏を中心とする狭いエリアでのみ上昇しているためで、旭川、帯広では横ばいが続いており、室蘭や函館では下落が止まりませんでした。

とはいえ、これから賃貸住宅を経営しようと考えている人は、悲観的になる必要はありません。地価が上がれば賃貸物件を入手するのに必要な費用も膨らみます。

一方で、賃貸料収入が短期間のうちに急激に変化することはまれで、利回りを考えれば旭川など札幌圏以外の地域のほうが有利です。利回りを重視するか、土地や建物の値上がりの可能性を重視するかに応じて、投資先を選択すればいいのです。

 ただ、賃貸住宅をこれから建設しようと考えている方は、札幌圏での工事件数の増加で、鉄筋鉄骨をはじめとする資材価格が旭川でも上昇傾向にあることには注意が必要です。円安の影響も考え合わせれば、建築コストがすぐに下落に転じることは期待しにくい状況です。