見出し画像

高齢入居者のリスクに備える

こんにちは。(株)キュービック不動産広報です。
 高齢化社会には、高齢者の独居世帯が増えるという側面もあります。その方たちの住まいを確保するのは社会全体にとっての課題でもあります。今回は高齢者を迎える賃貸住宅のリスク回避策について社長に聞いてみました。(北海道経済8月号掲載)

 賃貸住宅を経営していると、確率が低いとはいえ、入居者が病気になったり、死亡したりするリスクが避けられません。若い人よりも高齢者のほうが病気になる可能性は高いため、一部では高齢者が入居を断られ、住む家が見つからないといった問題が起きています。

しかし、社会倫理上、高齢という理由だけで入居を拒否するのは好ましくありませんし、賃貸住宅の収益の面から考えても、大きな需要となっている高齢者に門戸を閉ざすのは賢明とは言えません。

 以下は業界関係者から聞いた話ですが、入居者が亡くなり、発見まで時間がかかってしまったケースが以前にありました。近隣の方から異臭がするとの連絡があり、警察官同行で開錠して中に入ったところ、亡くなり、遺体は傷んでいたとのことです。

 このような場合、カーペットやフローリングを交換するだけでは原状回復はできず、業者による本格的な清掃や工事が必要になることもあります。その場合には費用も膨らみます。

また、死亡状況がどうあれ、入居者が亡くなれば残置物の撤去という作業が生じます。入居者の親族が協力的で、処分がスムーズに進めば理想的ですが、そうでないこともあります。また、他の部屋の入居者が心理的な理由で退去することもありえます。

 この時代、人が亡くなるのはほとんどの場合病院ですが、実は自宅でも年間20万人近くの人が死亡しています。入居者の死亡が賃貸住宅オーナー様側の不安を招き、その結果、高齢者の家探しを難しくしているとの指摘を受け、3年前には不動産取引における告知義務のガイドラインが制定されました。

 これによれば、売買、賃貸共に老衰や病気による自然死、入浴中の溺死など日常生活の中で発生した死亡は告知義務の対象外です。ただし、このような状況でも特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合には告知義務が生じます。賃貸はおおむね3年間にわたり、告知義務が存続するのに対し、売買は無期限で義務があります。

かつて「事故物件の告知義務回避を助けるため、短期間、部屋を借りる仕事」を題材にしたドラマがありましたが、現在は入居者が期間中に何人いても回避できません。

 孤独死による賃貸住宅への影響が注目を集めていることから、「孤独死保険」なる商品も登場しています。

特殊清掃などの原状回復費用、残置物の処理費用のほか、次の賃借人を募集する時に家賃を減額した場合の損失などをカバーする内容で、入居者が加入するもの、オーナー様が加入するものがあります。

高齢化社会において、とくに一人暮らし用の賃貸住宅を経営する場合、こうした手段でリスクに対応する必要がありそうです。