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SDGsへの取り組み、日本のエネルギー問題の解決に向けて

1.     SDGs=(持続可能な開発目標)とは何なのか
◆持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)は、ミレニアム開発目標 (MDGs Millennium Development Goals) が2015年に終了することに伴い、2015年9月25日の国連総会で、『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』が採択されました。これは、持続可能な開発のために必要不可欠な、向こう15年間の新たな行動計画です。その中で、2030年までに達成するべき持続可能な開発目標 (SDGs) として17の世界的目標と169の達成基準が示されました。
『出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 
2.     SDGs第7の目標「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」

◆日本は改正地球温暖化対策推進法を成立させ2050年までのカーボンニュートラルの実現を法律に明記しました。ただ、日本は化石燃料に依存しており、クリーンではないエネルギーを使用しています。このままではカーボンニュートラルを実現すること、SDGsの第7目標を達成することができません。
『出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 
3.     「7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」の実現に向けた日本の検討・具体的な取組
化石燃料に依存している状況下に対応するために、日本では具体的以下の取組を行っております。このような取り組みによる、①企業に対する人材・情報・資金面での支援、②消費者へのクリーンエネルギーに対する消費感度も促されており、企業の成長観点において追い風になると想定されます。
 
◆大気脱炭素ロードマップ
2030年度目標及び2050年カーボンニュートラルという野心的な目標に向けて、これから5年間に、政策を総動員し、国も人材・情報・資金の面から、積極的に支援します。
これにより、 ①2030年までに少なくとも脱炭素選考地域を100か所以上創出、②脱炭素の基盤となる重点対策を全国で実施することで、地域の脱炭素モデルを全国に伝播し、2050年を待たずに脱炭素達成を目指します。
 
◆改正地球温暖化対策推進法 成立
2050年までのカーボンニュートラルの実現を法律に明記することで、政策の継続性・予見性を高め、脱炭素に向けた取組・投資やイノベーションを加速させるとともに、地域の再生可能エネルギーを活用した脱炭素化の取組や企業の脱炭素経営の促進を図る「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」を、2021年3月2日に閣議決定し、国会に提出、2021年5月26日に成立しました
 
◆脱炭素事業への新たな出資制度
環境省は、脱炭素事業に意欲的に取り組む民間事業者等を集中的、重点的に支援するため、財政投融資を活用した出資制度の創設を検討しています。
2021年12月24日には、令和4年度財政投融資計画が閣議提出され、上記機関への産業投資200億円が盛り込まれました。
 
◆脱炭素ライフスタイルへの転換
脱炭素社会づくりに貢献する製品への買換え・サービスの利用・ライフスタイルの選択など、地球温暖化対策に資する「賢い選択」をできる社会の実現に向け取組を進めています。
ライフスタイルに関係の深い、住宅の脱炭素化や電動車の導入の支援なども行っています。
 
◆ゼロカーボン・ドライブ
環境省は、移動の脱炭素化に関して、再生可能エネルギー電力と電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または燃料電池自動車(FCV)を活用したドライブを「ゼロカーボン・ドライブ(略称:ゼロドラ)」と呼び、家庭・職場・地域におけるゼロドラの取組を応援します。
 
『出典:環境省:国の取組-脱炭素ポータル』
 
4.     日本の各産業に与える影響・課題
日本の産業別に化石燃料に依存する際の課題と対応策の方向性の例を記載しました。エネルギー産業については、送電ロスのカットや、クリーンエネルギーへの代替が対応策になると考えています。送電ロスは日本でどの程度起きているのでしょうか。

5.     送配電ロス問題
東京電力による、日本の送配電ロス率の発表によると2020年時点で、5%ほどとなっており、米国のメリーランド大学とジョンズ・ホプキンズ大学の研究チームが2016年に行った調査結果によると、インドの送電ロスは19%、ブラジルでは16%、ハイチ、イラク、コンゴ共和国などでは50%となっており、現代の日本では他国と比して大きな課題とはなりにくいと考えます。
 
『出典:東京電力ホールディングス:送配電ロス率』

6.     課題を解決する日本のクリーンエネルギーのポテンシャル
代替案であるクリーンエネルギーである自然エネルギーを使った発電のポテンシャルは日本にどの程度あるのでしょうか
環境省が2009年から再生可能エネルギーのポテンシャルを集計し発表しています。ポテンシャルの調査方法は、種々の制約要因(法規制、土地用途、利用技術など)を考慮しない場合に理論的に取り出すことができるエネルギー資源量=「賦存量」を求め、法制度・地理等から「導入ポテンシャル」を求め、その後「導入可能量」を求めるといったものです。
 
風力発電
風力発電はその名の通り、地上海上の風力を使うためクリーンエネルギーを使った発電方法。
陸上風力で発電量6,859億kWh、洋上風力では発電量3兆2,956億kWhで、合計は発電量3兆9815億kWhとなります。こちらは2018年度の日本の電力需要が1兆kWh弱のため風力発電のポテンシャルだけで日本の電力需要の約4倍の発電量となります。
 
太陽光発電
太陽光発電はその名の通り太陽光を使うためクリーンエネルギーを使った発電方法。
2018年の「導入ポテンシャル」については住宅系太陽光が2,527億kWh、公共系太陽光が2兆9689億kWhで、合計なんと発電量3兆2,216億kWhとなります。こちらも2018年度の日本の電力需要が1兆kWh弱のため、太陽光発電のポテンシャルだけで、日本の電力需要の3倍を超えます。調査がはじまった当初の太陽光発電のポテンシャルは1億5千万kW程度だったので、9年間で18倍以上になった計算です。原因は農地太陽光とのこと。農業と発電のハイブリット方式が世に出てきたため、公共系太陽光の数字の95%を占めています。
 
『出典:環境省ホームページ』
『出典:イーパワー株式会社:再生可能エネルギーのポテンシャル』
 
水素発電
水素発電とは水素と酸素の化学反応から直接電力を 取り出す。酸素との反応で生成されるのは無害な水蒸気だけで、温室効果ガスの排出量は(化石燃料と異なり)事実上ゼロ。
燃料1リットルあたりのエネルギー発生量は非常に高く、飛行機・鉄道・車・船舶などの動力源としても利用可能です。さらに大量の電力を長時間貯蔵できるため、発電所の燃料、あるいは太陽光・風力発電といった再生可能エネルギーのバックアップ電源としても大きなポテンシャルを秘めています。
 
『出典:ADVERTISEMENT FEATURE』
 
日本ではこのようにクリーンエネルギーよる発電ポテンシャルがあります。
では先進企業はどのように「7エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」を達成しようとしているのでしょうか。
 
7.     先進企業はどのように経営をシフトさせていっているか
世界でSDGsへの関心が高まっている中、先進企業では「7エネルギーをみんなに、そしてクリーンに (英: Affordable and Clean Energy)」をテーマに経営をシフトさせていっています。
シェル(旧称ロイヤル・ダッチ・シェル)

シェルは以下のソリューションを実施すると述べています。
統合電力事業 (Integrated Power) - 年間の電力販売量を2030年までに現在の2倍、約560tWh時に増やすことを目指します。世界全体で1500万件以上の小売顧客・事業顧客を確保する見込みです。クリーンなPower-as-a-Serviceのトッププロバイダーを目指します。他社と連携し、クリーンな電気の管理を重視した投資をさらに進めます。
 
自然由来のソリューション(NBS)―第三者機関が質の高さを認めた各地のプロジェクトに年間約1億ドルを投資し、健全かつ収益性のある事業を構築するとともに、お客様の炭素排出量ネットゼロ目標の達成を支援します。
 
水素―工業用輸送、大型輸送向けに総合的な水素ハブの開発を行い、水素市場における優位性を生かし、世界のクリーン水素市場で2ケタの販売シェア獲得を目指します。
シェルは、「株主価値を創出する」「ネットゼロを実現する」「生活の原動力となる」「自然を大切にする」という4つの目標を追求すると述べています。
このようにシェルは、クリーンエネルギーへの転化を実施すると述べています。
 
『出典:シェル、顧客重視の戦略によって ネットゼロの実現を加速』
 
イオン(AEON)

イオンでは2018年に脱炭素ビジョン2050を発表し、店舗のCo2排出総量ゼロを2040年、2030年までにCO2排出量35%削減(2010年度比)を掲げています。
2025年までにイオンモールの100%再生可能エネルギー化を目指しており、太陽光発電の導入は2019年時点で1040店舗、7.4万kWhになっています。
 
『出典:電通法』
 
アスクル(ASKUL)

本社と物流センターは2025年までに、グループ全体は2030年までに100%再エネシフトを目指します
サプライチェーン全体の温室効果ガス削減のため、2030年までに配送用車輌の100%EV(電気自動車)化にも取り組みます。
 
城南信用金庫

2011年3月の東日本大震災を受けて「原発に頼らない安心できる社会へ」を経営方針にしました。
2019年7月、バイオマス発電にて本支店で使用する電気のほぼ100%再エネシフトを達成しました。
 
東急

2019年3月、世田谷線(営業距離5.0km)の運行に使用する電気を100%再エネシフト。
東北電力が水力と地熱発電で作った電気を、グループ会社の東急パワーサプライを通じて購入。
鉄道事業、不動産その他の事業も含め、2050年までにグループ全体の100%再エネシフトを目指しています。
世田谷線を含む数路線で「SDGsトレイン」を運行し、SDGsの理念やグループの取り組みをPRしています。
『出典:SDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」とは?企業の取り組み事例まで徹底解説』
 
8.     まとめ
SDGs(持続可能な開発目標)をきっかけに、世界はカーボンニュートラルへの移行を始めました。このままでは人間の生活が持続できないため、課題を解決する動きだと考えています。ビジネスは基本的に課題を解決することで成り立つと考えているため、カーボンニュートラルに取り組むことこそがビジネスに直結すると考えます。そしてカスタマーは、地球全体という大きなマーケットであり巨大なビジネスチャンスだと考えます。また、SDGsに取り組んでいる企業、取り組もうとしている企業がこれから増えていきます。BtoC向けには、製造から環境に配慮したことを明示した商品を提供し、精神的満足感を与え、さらに補助金を導入し、金銭的満足感を与える。BtoB向けには、先進的に対応し、ツール・サービス(ソフトウェア・ハードウェア)の提供。これからカーボンニュートラルを採用しようとしている企業に対してアドバイスを行うコンサルのようなビジネスモデル。等々可能性が広がっております。SDGsをやらないといけないことではなく、ビジネスチャンスととらえ経営戦略に取り入れるべきだと考えます。