見出し画像

WEB3.0とは?ブロックチェーン技術によって各業界で誕生している新規サービス

目次
1.     WEB3.0とは?
2.     WEB3.0を構築するための技術
3.     WEB3,0の特徴(メリット/デメリット)
4.     事例紹介
5.     まとめ

 

1.     WEB3.0とは?

WEB3.0とは、イギリスのコンピューター科学者ギャビン・ウッド氏によって提唱された「次世代の分散型インターネットの時代」という新たな概念のことを指します。GAFAM等の大手プラットフォーマーが情報の主導権を持つ中央集約型インターネットから、個人が情報の主導権を持つ分散型インターネットに移り変わっていくのです。これは政府にてデジタル社会を実現するための重点計画として推進されているほど注目されています。

ここで一度、インターネットの進化を振り返ってみましょう。

WEB1.0では、マスメディアや企業から個人への一方向の情報伝達が主流であり、個人から発信することはありませんでした。そこで、そのデメリットをなくすべく現在主流のWEB2.0では、FacebookやTwitter等のSNSやYoutube等のプラットフォームを介して個人が発信できるようになりました。しかし、プラットフォームを経由することにより、プラットフォームに情報が集中し、サーバダウンやサーバ攻撃が発生する可能性が高くセキュリティ性に欠けています。また、情報を握るプラットフォーマーが経済的にも、情報の流通にも強い影響力を持つようになった支配の問題もあります。
そこで、そのデメリットを払拭すべくWEB3.0が誕生したのです。
WEB3.0では、ブロックチェーン技術によりデータがブロックに細分化かつ暗号化され、ネットワーク上で分散して保存されます。それにより、特定の企業に個人情報が集中するプライバシー問題や、中央集約型のサーバに依存するセキュリティ問題が解消されます。さらにWEB3.0では企業を介すことなく、ネットワークに参加しているコンピュータ同士で直接やり取りするため、ユーザ同士が民主的に情報を管理することになります。そのため、企業を介して発信していたコンテンツが、個人で直接発信できるようになるため、所有権問題が解消されるのです。

2.     WEB3.0を構築するための技術  

【WEB3.0を構築する基盤技術】
‐ブロックチェーン技術
「ブロックチェーン技術」はWEB3.0を構成する中核技術といえます。では、ブロックチェーン技術とはどのようなものなのでしょうか。
まず、ブロックチェーン技術とは、取引記録が適切に記録された台帳のことです。取引の記録と各ブロックを接続させるための情報で1セットとして構成され、それらがチェーンのように連結した状態でネットワーク上の多数のコンピュータに保存されます。現在はビットコインをはじめとする仮想通貨やトレーサビリティにおける生産者や生産フローの紐づけ等で使われています。

【WEB3.0の実現によって変化するもの】
現在、中央集約型構造が主流であるため、WEB3.0の世界が実現されることで、分散型の代替サービスが誕生します。ここでは、身近な事例を紹介いたします。
-プロトコル(HTTP→IPFS)
現在インターネットで一般的に利用されているプロトコルは「HTTP」ですが、WEB3.0の世界になることでP2Pネットワークを構築する「IPFS」というプロトコルに変化します。
現在主流の「HTTP」プロトコルというのは、サーバを介してインターネットにつながる中央集約型構造です。一方、「IPFS」プロトコルは上記に記載のあるブロックチェーン技術を活用した、ユーザ同士でデータを共有する分散型構造になっています。
これにより、一つのサーバにアクセスが集中することがなくなり、サーバダウンが発生しにくくなったり、通信速度がより速くなることが期待されています。
※P2P(ピアツーピア):対等な関係にある端末同士を直接接続して通信を行う方式

‐アプリケーション クラウド型→分散型
現在、GAFAMを中心とした大手プラットフォームに情報が集約された中央集約型構造のアプリケーションが主流です。しかし、大企業に情報が集まっていることにより、大企業に情報が支配される上に情報漏洩やサーバ攻撃のリスクがあります。
そこでWEB3.0においては上記懸念を払拭する分散型アプリケーション「dApps」が主流となります。すでに様々な業界・領域でWEB2.0のアプリケーションの代替となるdAppsが誕生しており、今や欠かせない存在であるInstagram等のSNSやGoogledrive 等のファイルストレージもdAppsに移り変わっていくことになるでしょう。
これによりデータが分散保存され、サーバ攻撃や情報漏洩のリスクが下がりますが、情報の自己管理が必須になります。

3.     WEB3.0の特徴(メリット/デメリット) 
【メリット】
■セキュリティ性が高いこと
ブロックチェーンの構造により複雑な数式で管理がされているため、不正な情報はチェーン化されず適切に取引を記録できることでデータの改ざんや破壊のリスクが下がります。さらに、ブロックチェーンで保存された取引情報は、ネットワーク上で誰でも閲覧することができるため、仮想通貨の取引の透明度が極めて高くなります。
それにより、匿名性の確保や情報漏洩のリスクが低下します。

 ■犯罪リスクが低下すること
(中央集約型→分散型によるネット犯罪のリスク低下)
WEB2.0のようにプラットフォーマにアクセスが集中しないため、サーバダウンが発生するリスクが下がります。さらに、通信速度の向上につながります。
また、大量な情報がプラットフォームに集中しないため、サーバ攻撃や個人情報漏洩のリスクを回避することができ、もしハッキングされたとしても容易に解読できないようになっています。 

■ユーザ主体で情報を管理できること
個人対個人で何も仲介せずに直接やり取りできるため、ユーザ自身で情報を発信することができ、情報の所有権が守られます。つまり、現代SNS等のプラットフォームを介した発信をしているが、自身の作成した動画や写真などのデジタルデータが個人で直接発信できるようになるのです。

 【デメリット】
■個人の責任が大きいこと
ユーザ自身に情報の所有権がある代わりに、一人ひとりの責任が重くなります。今まではある程度企業に情報が守られていたものの、自分の情報は自分で守らなければならないため、ハッキング等されたときに自己責任となります。
今まで以上に情報の扱いに注意しなければなりません。

■悪用データの削除ができないこと
ブロックチェーン技術では、データ改ざんやデータ破壊できないように取引履歴がすべて残り、データの削除ができません。それにより、悪質な個人情報が流出した際に情報の流出を食い止めることができず、プライバシー保護問題につながる可能性があります。

■参入障壁が高いこと
仮想空間で仮想通貨をメインに取引をすることが主流になるため、ある程度の知識がないと難易度が高く利用者がすぐに増えないことが予想されます。また、ルールや法律が整備されておらず、なかなか利用したくても踏み込めない人も多いのではないかと思われます。

4.     事例紹介
内閣委員会において成長戦略に盛り込むともいわれているWEB3.0は、今後社会変化をもたらし、新しいスタートアップやサービスの誕生が期待できます。
そこで、WEB3.0を取り巻く新しく誕生したサービス/製品とその具体例を紹介していきます。

 【新しく誕生したサービス/製品】

上記の表に記載のある具体サービス/製品例について一つずつ紹介していきます。

【具体サービス/製品例 詳細】
■暗号通貨
・Compound 【金融】
暗号通貨の貸し借りを行えるプラットフォームです。特定の仲介者や管理者(人)を介さずに、スマートコントラクトによって任意の暗号資産を貸し出して利息を得ることができます。また、保有している暗号資産を担保に別の暗号資産を借り⼊れることもできます。

・Ripio Credit Network(RCN) 【金融】
スマートコントラクトとブロックチェーンを利用したクレジット機能に透明性と信用をもたらすプロトコルのことです。債権者や債務者の居場所や通貨の種類を問わず利用でき、従来の仲売による手数料がかからないため、債務者と債権者双方に利益があるのが特徴です。債務者と債権者を独自のRCNトークンで繋ぐことにより世界中でクレジット機能を利用できるため、口座を持たない国を中心に注目されています。

・Paypie 【金融】
ビジネスを成長させキャッシュフローをより効果的に管理することを目的に、リスク評価や分析を行う財務プラットフォームです。PayPieプラットフォームトークン(PPPトークン)という独自の仮想通貨を使用しており、キャッシュフロー予測・リスクスコアリング・ビジネスファイナンスのサービスを提供しています。 

■NFT/Metamask
・OpenSea 【流通】
NFTコンテンツの販売・購入・転売が可能なマーケットプレイスです。ユーザ登録不要で、仮想通貨ウォレット連携によって作品を購入できるのが特徴です。出品したクリエイターの作品は転売されても、出品者に永続的なロイヤリティ還元がされるため、近年問題となっているデジタルデータの所有権が守られます。ブロックチェーンの特性である複製や権利の偽装が難しい点から、高値で取引される作品も多く、12歳の少年が作成したNFTアートが約4,000万円で売買された事例もあり世界で大流行しています。

・Metamask 【金融】
イーサリアムをベースとしたブロックチェーンサービスに対応した仮想通貨ウォレットのことです。仮想通貨の送受信や管理ができるだけでなく、イーサリアム基盤上のNFT保管にも使用されています。
主に上記OpenseaのようなNFTマーケットプレイスなどの取引における送金受け取りに使用され、スマホアプリを使って手軽に利用することができます。 

■dApps
・Discord 【IT】
通話やチャットはできるゲーマー向け音声通話アプリケーションのことです。高機能かつ簡単であるため、ゲーマー以外にも利用されています。出入り自由なユーザたちの部屋(サーバ)を立てることができることが特徴であり、DAOに適応できるコミュニケーションツールとして注目されています。

 ・その他事例
現在WEB2.0で主として使用されているアプリケーションもdAppsに移行されていきます。
以下の図から主流のクラウドサービスやSNSの代替が生まれることが分かります。

■GameFi
・My Crypto Heroes 【ゲーム】
歴史上のヒーローを集めて武器を装備して対戦するNFTゲームのことです。ゲーム内で入手できるキャラクターや武器などがNFTトークンで作られているため、ゲームをプレイしながら報酬を得ることができるという夢のようなゲームです。また、運営とコミュニティの距離が近く、ユーザの意見を取り込んで改良していくというユーザに寄り添った特徴もあります。
ゲームで稼げる世の中になり、今後も新たなビジネスが生まれる見込みがあります。 

■DeFi
・DEX 【金融】
特定の管理者がいなくても分散して管理できる仕組みを持ち、自身で管理する取引所のことです。
従来の中央集約型の取引所とは違い、必ずしも取引所内にウォレットを作成する必要はなく、自分が管理しているウォレットを使い取引所で直接取引を行うこともできます。そのため、ウォレットから取引所に送金する手間は不要です。また、秘密鍵を自分で管理するタイプの取引所であるため、仮に取引所がハッキングされても自分のウォレットには影響がなくセキュリティ性が高いことが特徴です。

■P2P
・IPFS 【通信】
ブロックチェーン技術を活用したユーザ同士でデータを共有するP2Pネットワークを構築するプロトコルのことです。現在インターネットで一般的に利用されている「HTTP」の代替となるといわれています。

 ・Faroo 【通信】
ピアツーピア技術に基づくウェブ検索エンジンのことです。すべての検索クエリと分散インデックスが暗号化され、他者に検索や訪問したページを知られないため検索プライバシーを守ることができます。その他にもコスト上の利点、スケーリングの改善、侵入の少ないクロール、民主的なランク付けができるため、従来の集中型検索エンジンから移り変わるであろう分散型検索エンジンです。

 ・Brave 【広告】
Brave Shieldという興味のない広告表示をブロックすることができるサービスと、興味のある広告を自発的に表示することで報酬が得られるBrave Rewardsがあります。オンライン上のプライバシーが守られることや、ブラウザが軽くなりページの読み込み速度の向上や、モバイルデータの削減もできることが特徴です。YoutubePremiumのような機能で、WEB3.0の中でも注目度が高いサービスです。

 ■DAO
・SINSOプロジェクト
分散型のデータキャッシュネットワークとデータのDAO(分散型自律組織)化にフォーカスした、Web3.0に必要不可欠であるミドルレイヤー(中間層)のインフラストラクチャーのプロジェクトです。データストレージの簡素化と、効率の向上および自己管理型個人データの実現を将来的に実現させます。元ZOZOの前澤友作氏が出資したことでも注目を浴びています。
SINSOプロジェクトのプロダクトは、SINSO Getway(R)やDonors Networkが挙げられます。
SINSO Getway(R)はWeb3.0のレイヤー2インフラストラクチャーで、次世代のMetaverseに対して高速かつ低コストの分散型キャッシュサービスを提供します。現在研究開発まで完了しています。
また、Donors Network(ドナーネットワーク)は、データの深層表現型分析モデルとデータ取引のためのミドルウェアシステムに基づく経済的モデルおよびインセンティブモデルです。こちらは現在開発中のプロダクトとなります。

■その他
・FileCoin 【通信】
WEB3.0ネットワーク内の自身のストレージの空き容量を貸し出し、報酬(FileCoin)が得られるストレージサービスのことです。Airbnbなどの空き家を貸して家賃収入を得る仕組みのストレージ版と考えていただければと思います。FileCoinでは、報酬額が自身で設定できます。近年のフリマアプリのようにユーザ間での価格競争が起き、比較的安くストレージを利用できるようになるかもしれません。
デメリットとしては、他人とストレージを共用する代わりに常にオンラインでなければならないということです。そのため個人が貸し出すことも可能ですが、コストの面を考えると難点もあるといえます。

5.     まとめ
WEB3.0によって今後のビジネスモデルのあり方が変わり、自由度の高い権利が守られた社会が創出されると思われます。
今後、短期的にはブロックチェーン関連企業への投資、長期的にはブロックチェーンを介した個と個のコミュニケーションを促す施策や事業を企画する、などの新しいビジネスモデルが登場するでしょう。
しかし、Web1.0の時代からWeb2.0への移行と同じく、Web2.0からWeb3.0への移行もいきなり転換するのではなく、ゆるやかに移行、もしくはWeb2.0と両立していくものになると思います。
そのため、今はこれまで以上に個々の情報管理への意識を高め、今後の進展に注視しWEB3.0時代に備えることが大事なのだと思います。
Web3.0が広がる世界のイメージは未だ漠然としていますが、今後進出する新たな先端技術とWeb3.0が組み合わさることで、可能性が広がり社会の形が変わっていくことになるでしょう。