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リストラを行う前と行う際にすべきこと

1.     経営改善とリストラ
戦略コンサルティングとして経営状況の改善をご支援させて頂く中では、今は問題ないがさらに向上していくために施策を打つというプロジェクトよりは、何らかの課題がありその解決のためにご支援させて頂くことがほとんどとなりますが、財務上逼迫している状況では、その究極の選択として、リストラ(従業員に退職してもらうもの)という手段に触れざるを得ない状況もございます。
経営の責任を果たす意味でも最終手段であり、非常に難しい施策ではあるのですが、どうしてもリストラせねばならない場合に、そこに至るまでに尽くすべき施策と、いざリストラを実行する際に気を配るべき点について本稿では記載していきます。

2.     リストラを決断する前に考えるべき施策
先述の通りリストラは最終手段であり、経営の責任を果たす意味でも、社員の今後の人生を考える意味でも可能な限り避けるべきものです。
ではリストラを決断する前にどのようなことができるのか、実際には各社の状況によりそれぞれ打つべき施策は異なりますが、おそらく既知であるものを含め代表的なものを下記に挙げて行きます。

①      人員以外のコスト削減
②      過剰人員の配置転換
③      新規事業への投資
④      役員や管理者のコスト削減

①      人員以外のコスト削減
まず行うべきものとしては既存の収支項目について、給与等の人件費以外の支出の削減を行います。
商品の仕入れや流通を見直すことであったり、手放しても良い資産について売却を行いその管理コストの削減に努めることであったり、販管費の中でスリム化できるものを洗い出して行くことなどもあります。
設備や業務を効率化させるために一度投資を行い、V字回復を狙う場合もありますし、昨今のコロナ禍では社員のリモートワークを積極的に導入することで、事業所の縮小、削減なども良く行われてきました。
また、設備や環境への投資を行い、業務効率を改善することで残業代を削減することも考えられます。

②      過剰人員の配置転換
ある部門で過剰人員が生まれてしまっている場合、人員が不足している、ないしは人員が追加されれば新たな活動が可能な他部署への配置転換を行います。
この中には他のグループ会社や提携企業から引き受けた出向者を戻すことや、自社から出向させることで、ひとまず自社内の人件費を抑制することなども含まれます。
ただし、配置転換を行う場合には、希望退職を募ったり、解雇するリストラほどではないものの、再配置先に不満を感じて、または先行きに不安を感じて退職を検討する従業員は出てくるでしょうから、後述するリストラ時に気を配る点と同じく、必要性の周知や今後の見通しについて理解と納得が得られるよう働きかける必要は出てくるでしょう。

③      新規事業への投資
どこも余剰人員を抱える余裕がないなど、配置転換先が無い場合には新規事業を展開し、新たな事業基盤とすることを目指してここに人的リソースを割くことも一度は検討したい施策です。
一刻の猶予もない場合には考えにくい施策であり、また実行が難しいことも多くなってしまいますので、先読みをしつつ前もって打つ必要のある施策ではありますが、可能であれば是非取り入れたい施策ではあります。

④      役員や管理者のコスト削減
人件費に手を付けざるを得ないとなった場合、一般社員のリストラに踏み切る前に役員や従業員の中でも管理者のコスト削減は先んじて実施すべきものとなります。
賞与などは勿論ですが、役員報酬や管理職の手当などがその対象となります。

3.     それでもリストラが必要になってしまったら
上記施策を検討、手を尽くしてみても、どうしてもリストラに踏み切る必要があるとなった場合、法的な面や、踏むべきステップなどお作法としての進め方もありますが、従業員の心理的安全性を確保することも重要となります。
リストラが社内で行われるとなったとき、従業員は会社の先行きに不安を感じ転職などを検討し退職してしまうことはよくあります。その際、自社にとって必要不可欠な人材には残っていてほしいものですが、概してそうした人材ほど流出しやすいものです。
そのためリストラを決断する場合に意識すべき点を上記同様に挙げて行きます。

①      リストラが必要であることを理解してもらうこと
②      リストラ後に会社が向上すると思わせること
③      一回で済ませること
④      言い渡す側の選定

①      リストラが必要であることを理解してもらうこと
まずはリストラが会社として避けることのできないものであることを理解してもらうことが重要です。
ここが理解されないままリストラが実行された場合、他に打つべき施策があるにも関わらず安易にリストラを実行したと考えてしまい、自社に対する不信感や不満を抱いてしまうことになります。
また、実行すべき施策を行わずにリストラされたとして法的対応を取る従業員も発生しかねません。
経営状況とこれまでの施策やその結果について十分開示、説明し、従業員との認識を合わせて行く必要があります。

②      リストラ後に会社の経営状況が向上すると思わせること
①との兼ね合いが難しいものではありますが、リストラを行うことでその後の経営状況が向上すると認識してもらう必要もあります。
リストラが行われたとしても、その後に不安を抱えてしまっていれば残っている従業員も退職していってしまい、今度は人材が不足してしまい慌てて採用し、さらにそこから新たに教育を施していくことが必要になってしまいます。
そのため、リストラに至る必然性とともに、リストラ実施後の見通しについても十分理解してもらう必要があります。

③      一回で済ませること
②に含まれる側面もありますが、リストラは1度で完結する必要があります。
調整していくため、出来るだけ雇い続けるためにと、少しずつリストラを行ってしまえば、従業員はいつまでもリストラの可能性を感じ続けてしまいます。
どうしてもリストラしなくてはならない範囲をしっかりと見定め、必要な量のリストラを短期間で完遂する必要があります。

④      言い渡す側の選定
リストラを実施する場合、リストラを誰に言い渡してもらうか、というのも大事なポイントです。
リストラを言い渡される側ももちろんですが、誰に言い渡すかを選定する担当者とともに、言い渡す側も非常に大きなストレスを感じてしまいます。
これを苦にして退職してしまうこともあるでしょうし、社内の人間関係に少なからず影響を与えることも考えられます。
責任を果たすべき位置にいる役員、管理職が担当するか、もしくは外部の人間に委託することも手段の一つとなるでしょう。

4.     まとめ
本稿では、ともすれば当然の内容を記載したものとなりましたが、非常に重要な問題かつ、現代においてリストラの実行は殊更耳目を集めるほど珍しいものではなくなってしまっています。
とはいえ、リストラは経営者から一従業員に至るまで全社一体に大きな影響を与える最終手段であり、リストラに至るよりも前に積極的に打てる手を検討し、全力で回避することは当然必要ですし、また万が一リストラを実行せざるを得ない状況では細心の注意を払って実行していく必要があります。
事前のあらゆる手段の検討から、実際に必要になってしまった場合にも是非、信頼のおける外部企業などにもご相談等をしていただき、最善手を取って頂きたいと考えます。