にぎりめし
何はなくとも米の飯が好きだ。
食べる量は年々と減っていくのだけれど、若者の頃は五合の飯をペロリと食べても苦しいなんて感じなかった。
若者の頃はずっと体を大きくしなければならない環境にあったのだけれど、余りの稽古の厳しさと下積みのストレスから、高校時代の目方は83㌔が最高だった。
それでも朝から地下鉄を降りると、吉野家で朝食セットの大盛りを喰い、牛丼の大盛り二杯をテイクアウトしていた。
名古屋の鶴舞線沿線には吉野家が彼方此方にあった。
コンビニなんてまだ無くて、牛丼も今よりもずいぶんと高かった。
学費より食事代の出費の方がはるかに多かったのではないかと思う。
ある土曜日の夕刻、少しばかり早い稽古上がりで悪友達の溜まり場だった上前津のコメダに立ち寄り、ショートホープを一服ふかした途端に倒れ込んでしまった。
稽古の後は体の中にカロリーがほぼゼロというかマイナスな感じだった。
僕にとって米の飯は(にぎりめし)にして喰うのがやはりいちばん美味いのです。
そしてにぎりめしの中の具はもうこれが最高によろしいのです。
北海道産のアイヌネギを醤油漬けにした後にぎゅっと搾り、二センチ幅にみじん切りにします。
名古屋の(八丁味噌)と(太白)とを二八で合わせたものに、青森田子産のニンニクと共にアイヌネギを混ぜ込みます。
ほんのわずかな期間にしか採取できない道産の幻の山菜アイヌネギは学名を行者ニンニクと呼ばれ、人が採取できる大きさになるまでに五年を要します。
朝取りの土の付いたままの山菜をその日のうちに直送してもらいました。
八丁味噌や太白やニンニクの香りにも絶対に負けない強烈な香りと生命力です。
朝のにぎりめしはこのアイヌネギの味噌漬けが最高に贅沢なんです。