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弱さから本来の推進力を生み出す

コーアクティブを学び始めたのは、自分の想いや気持ちと言動にねじれがあることに気づいたのがきっかけという石井大介さん。これまで自分を守っていた鎧を一つ一つ剥がしていくことで向き合った弱さとその奥にある願い。その願いを推進力に昇華させて進化を遂げていくストーリーです。


Co-Activeストーリーvol.10 石井大介さん
プロフィール:高校、大学とアメリカンフットボールにのめり込む。
大学卒業後、パナソニック株式会社(旧松下電工)に入社し、仕事とフットボールの毎日を暮らす。10年後に退職し、戦略コンサルティング会社に転職。10年間、マネジャーから取締役になるまで、様々なプロジェクトを遂行。
2018年7月に独立 株式会社Be-Coacherを設立
エグゼクティブコーチ、ビジネスコーチだけでなく、プロスポーツチーム、プロアスリートにもコーアクティブ・コーチングを展開。
その他、オープンダイアローグ(対話)やマインドフルネス、家族の関係性ワークショップを展開。
2018年7月基礎コース受講、2018年7月~11月応用コース受講(169期)2019年上級コース 2020年3月~12月リーダーシッププログラム受講 2020年10月にCPCC取得 

―今日はよろしくお願いします。まずは学び始めようとしたきっかけを教えてください。

きっかけはですね、僕は新入社員としてパナソニックに入りまして10年間在籍していました。次にコンサルティング会社へ行って10年やっていたんです。そこで役員になってバリバリやっているにもかかわらず、ある日突然心に穴が空いてですね。自分がやっている仕事が誰のためにやっているのか全くわからなくなるということがあって。そのまま鬱というか適応障害になったんです。


ーそうだったんですね。

そのコンサルティング会社をやっている間も別のコーチング機関でコーチングを学んだり、受けたりしていたんですね。まぁ、アクションベースで結果も出たんですよ。結果も出続けたんですけども、そこでね、やっていきながら自分の心の中にポカンと穴が空いてしまって、これはおかしいぞと。そんな時にたまたま「CTIのコーチングはアクションベースではなく、感情とか心にもフォーカスする」っていう話を聞いたので、ちょっと行ってみようかなと。元々人の心への興味がすごくあったので、いいきっかけになったのかなと思いますね。
そして行ってみたら、その通り。「これだ。僕が求めていたものはこれなんだ!」と思いました。人の心そのものに寄り添い、その人の可能性をともに高めていくってところに対して、「僕が求めていたのはこういうところだ」と頭でなくて、体でビビっときたのは非常によく覚えています。


―感覚的に「これだ」と?

はい。感覚的に「これだ」というのがあったのが基礎コースの時ですね。


―コーアクティブ・コーチングを学んでみて、ぽっかり空いていたところに、何かが埋まるというか、求めていたものは「あ、これだ!」というような?

そうですね。満たされていくようなホッとする感覚とこういう世界があるんだとホッとして、「ここがフィールドだ」と勝手に思いましたね。


―「あ、これだな」とか「ここが自分のフィールドになるんだな」と思ったのはどんな瞬間だったのですか?

学びの中で一番最初に印象的だったのはNCRW(注:コーアクティブ・コーチングの4つの礎の一つ『人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である』原文:People are Naturally Creative Resourceful and Whole. )のところですかね。こういうスタンスがあるんだ、と。これを礎としてね、生きていっていいんだと自分が許された感じがして。


―それは自分がそういう存在でいいんだってことですか?相手をそういう眼差しで見ていいんだってことですか?

両方です、これは。自分がいていいんだってなった瞬間に、周りも一緒に見えてくるというか感じてくるというか。本当にこれはすごく両方な感じがします。こんな世界なんだって、自分も相手も。


―それによって相手の見え方が変わったり、自分自身への変化が起きたのですね。

そうですね。その中で自分自身を認めていく。最初は自分自身を認めることすらできないんで。自分自身を認めていくことがだんだんですけど、できるようになりました。結構時間かかりましたね。「こういう世界があるんだ」って満たされていながらも、いざ自分のことを認めていくっていうのは自分の中で難しかったです。でも、それをマイコーチとともにやっていきながら、もうこのフィールドで、自分か感じたこと、体験したことを提供していくっていうことをしたいなって思い、そのまま最短で応用コースで学んだんですね。それで、フルフィルメントコースが終わった瞬間に「独立しよう」と思って、会社を辞めました。


―会社を辞めるのは思い切ったアクションだと思うんですが、その時はどんな心境だったのですか?

当時の自分の中で、ですけど、変容したのを非常に感じていて。「もう戻れないな」と思ったんです。会社にいながら、役員しながら、折り合いをつけていくことは僕の中でもう難しいなと思って。「もう一歩飛び出そう」と。

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―もう「前には戻れない」と。ちなみに、その「前」っていうのはどんな大介さんだったんですか?

当時、コンサルティング会社の取締役をやっていて。成果、アクション、何をしたか、できたのかできなかったのかをメンバーと共有しながら成果を出すことに必死になって、経営数字を作ることに必死になって。それで、メンバーの心なんか見ているような態度をしながらも全く見ていない。なんかもう、ねじれていました。なので、人の素晴らしく輝くところなんか目につかないですし、できないことにばっかり苛立ちを持ったりとか。

―当時は結構イライラすることも多かったのですか?

そうですね。今じゃこういうしゃべり方ですけど、前はもっとバババババーといろんなことをしゃべっているのがあって。


―今はゆったりと話されていいますが、以前はもっと早口だったり、もっと量が多かったりなんですね。

そうです。それをわざとやっていたということに気づきました、後から。


―それは、役割としての自分を貫くとか演じるとか?

役割として演じるというのは綺麗なことで。自分の弱さを認めたくない、弱さを勘繰られたくない、引っ張る人物でいないといけないとか、自分の弱いところを出しちゃいけないと思って、鎧をつけ続けていましたね。


―そんな感じだったんですね。今の大介さんからは、全然想像できないです。

応用コースを学びながらだんだん外していっていましたね。外してもまだあるし、外してもまだあるし…という感覚で、徐々に徐々にですね。応用コースをやりながら同時に、自分も独立してコーチングを提供するということもやり始めていたので、それをしながらも自分の弱さ、痛み、怖さと向き合うという時間が多くなりました。


―コーチングをしながら、結果、自分とも向き合うこともくっついてくる。

はい、くっついてきましたね。それで、そのまま上級コースに最短で行きました。もうある意味、大きな自分の鎧を取っている感じだったんですけど、まだまだすごく力みがあって。早く上級コースへ行って、資格取って一人前にならないといけないんだみたいな。早くそうしないと独立しても死んでしまうみたいな。すごく変な力みがまだあったことに今になって気づきますけど、うん。

もうこれは自分のあり方、深いところのOSの部分というかそこをもうちょっと変えたいな、と言うか、可能性を広げたいなと思って、上級コースへ行った瞬間に、リーダーシップ・プログラムにも申し込んで、同時並行でやりました。


―喋り口調やあり方に変化があったのというのは、本当に会話をしながらもすごく伝わってくるんですけど、そのプロセスは簡単ではないこともあったと思うんです。リーダーシップ・プログラムも含めて学びの中での一番のチャレンジや壁は何でしたか?

そうですね。自分の中で「コーチとしての自分」を確立させていきたかったので、リーダーシップ・プログラムへ行きながらもマイコーチとのセッションを続ける中で、すごくすごく苦労したのは、自分の怖さとか痛み、弱みっていうのを認めて、受け入れるっていうことです。今も受け入れることをまだ続けているところもあるんですけど。
最初はすごく受け入れるのが怖くて、それを受け入れたら死んじゃうんじゃないかと思ってましたから。


―そうなんですね。

なんでしょうね。価値を出さないといけないという自分がいたりしましたし、人にも好かれたい、愛されたいという自分とか。人を助けなければいけない、とかそんな自分のエゴにも気づきました。そういう自分が見たくない自分のものを見ていく時期で、それを受け入れていくとすごく変化があったのが、もうなんですかね、人がすごく美しく見えてくる。この変化はすごくありました。輝く面もあってもいいし、輝かない面もあってもいい。両方あっていいんだよっていうのを自分が体験したことで、こういうことかっていうのがもう身に染みてわかって。そこからは自分の怖さ、恐れみたいなものを手放すのではなくて、隠すのではなくて、怖さ、痛み、弱さが出てきても持っていていいんだよって横に置いておける感覚になれています。クライアントにも恐れとか痛みとか不安もすごく敏感に感じますし、「いいから、大丈夫だから持ってて。死なねーから」っていうのはね、僕は身を持って、伝えていっている感じですかね。初めて自分を愛する自己愛っていうのを体感しました。


―すごく言葉に実感がこもっていますね。まさにそういう経験をされたからこその言葉ですね。

ありがとうございます。


―様々なものを受け入れられるようになって、どのようなことをしていきたいと思うようになったのでしょうか?

自分が経営者をやったからこその苦しみ、メンバーが去っていくとか、お金の苦しみとか、生々しい部分を身に染みてわかっているところもあるので、その側にに自分が居たいなと思って、エグゼクティブ層にコーチングをやらせていただいています。

あと、自分は30歳までパナソニックでアメフトをやっていたのですが、その時、僕が人生で初めて腐ったんですね。高校・大学までトップクラスでいたので、「社会人でも日本一になるしかない」と思って行ったんですが、そこで全然試合に出られない、活躍できないわけですよ。そこで大好きなアメフト、高校・大学で自分を輝かせてくれたアメフト、そのアメフトをやりながら自分が一番見たくない自分を見ることになって、人生で初めて腐るっていうことをやって。
腐るってことは、表面的には一生懸命やっているが、心の奥底は自分に諦めている。そんな自分でいることが、応援してもらっている家族にも、会社の人たちにも嘘をつき続ける。「本当は、、自分に諦めている」ってことを。

そのこんな自分じゃないって言う反動で僕はコンサルティングの会社に行こうと思って経営の勉強などに意識を切り替えていったんですけどね。今になって思うのはその時に僕みたいなコーチが側にいたらよかったなって思います。スポーツをやっている人たちに、スポーツと仕事を両立している人たちに。それが一番ピンときて。

引退して、退社した後っていうのはアメフトを嫌いになっていました、パナソニックのアメフトとはほとんど縁を切っていた様な感じです。でも、リーダーシップ・プログラムを学んで自分が本来伝えたいものはなんなんだと気づいた時に、一番自分にハードルが高いところ、自分がやり残したこと、自分が置き忘れたもの、それをやりたいなと思って。去年(2020年)の2月か3月にパナソニックの今のアメフトの監督に電話して、「実は自分が挫折して、腐って、アメフトが嫌いになって、自分に嘘をつき続けて、今はここにいる」っていうことを正直に全部伝えたんですね。まぁどうなるかわからなかったんですけど、伝えたら、監督は「そのことを部員、スタッフ100人ぐらいの前でしゃべってくれ」と言われたんです。自分の傷口、大きな傷口だったんで、最初はちょっと抵抗がありましたけど、夏に全員の前で話しに行きました。その時はもう自分の中で腹を括っていたので、何も隠すところもなく全部話して。それで、コーアクティブ・コーチングの魅力、今はコーチとして生きている自分がいるっていうことも伝えました。それが、今の自分の活動につながっています。
今は僕の話を聞いて、コーチング受けてみたいと手を挙げてもらった、16〜17名とコーチングさせていただいていますけど、本当にあの時の自分と同じような悩みや苦しさを持っているので、自分が今そこの場へコーアクティブコーチとして帰ってきているのはすごく幸せに思いますね。


―勇気ある行動ですね。聞いていて心が震えます。

コーチングは選手だけではなく、コーチやマネージャーの方もやらせていただいています。アメフトだけじゃなく、仕事の悩み、家庭の悩み、いろんな悩みを抱えています。それがごちゃごちゃになっているのを目の当たりにするとね、自分が体験してきたことをそのまま苦しんだり、悩んでいるのを見て、自分のことと重なってしまったりとかいろんなことがあるんですけど、またそこでも自分を見つめながらね。なんか過去の自分とも向き合っている感じもしますね。


―そうなんですね。結構大変ではないですか?

痛みだったことを受け入れているのですけど、なんですかね、改めて痛みと向き合うと、すごく辛いこともありますね。コーチングしながら自分の違った変な感情も出てきてしまったりします。でも、自分がやり忘れたこと、置き忘れたものをやっていると言うか、新しいことなんだと思うんですけど、スポーツ界にもコーアクティブ・コーチングっていうのがやっぱり必要だなって実感しています。


―そうなんですね。おそらく選手やコーチからすると普段はあまり話さないようなことを話す時間になっていると思うんですが、彼らからのフィードバックや感想だったり、チームへのコーチングの影響として伝わってくるものはありますか?

彼らには本当に真剣に自分と向き合って悩みや不安を出してもらっているんですが、それを出せる場が本当にないんだなっていうのを実感します。「弱いところを出したら試合に出られませんから」とか、「怖さを出したら、評価下がりますから」とか。そんな固定観念が彼らの中には昔から植え付けられているので、「常に強くなければいけない」、「常に元気でないといけない」とか、そういうところをフラットな関係で解放してあげる。まずはそれだけで彼らが本当に救われたような顔をします。やらされることが多くてあって、「本当はどうしたかったんだろう?」「本当はどうしたいんだろう?」って。

彼らにコーチングを始めて、監督やパナソニックの役員の方にも「受けている人達は、どうですか?」って聞かれた時に、僕の方から率直にフィードバックをさせてもらうんですが、「ブロイラーみたいな感じ。強制的に食べさせられて、太らされて。やらされる、勝手にメニューがある、意思もなくこなしていく、そんなところをすごく感じたので、自分で選択するっていう力が非力だ、非力すぎる」というのを伝えました。
「僕のコーチングの中では弱みはあっていい。恐れや不安、痛みはあっていい。その中で不安を少しずつ受け入れた時に気持ちがニュートラルに戻るので、そこから自分から選択をするっていう力をつけるのがコーチングというか、それを彼らに体感してもらっています」と伝えています。そういう体験をしてもらうと自ずと結果も違ってきます。彼らの中でも今までと違う体感というのを実感してもらっているので、今は自分を深めるということから行動していくという、本当にコーアクティブなものがすごく機能しています。


―手応えを感じているのですね。

今、「コーアクティブ・プロフェッショナル・コーチ」ってちゃんと名前もつけていただいて、関わらせていただいています。その中で彼らの可能性―アメフト選手としての可能性、ビジネスマンとしての可能性― パナソニックはデュアルキャリアだって言っているんですよね、両立。「仕事でも一番になれ、アメフトでも一番になれ」ってちょっと難しいことを言われているんですけど。そこに自分の意思を入れたバランスを取った人が多分増えていくなって実感しています。

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あと、やってみた実感なんですけど、コーアクティブ・コーチングというのは、ビジネスの人にも有効ですし、スポーツマン・スポーツをやっている方にもすごく有効で可能性が広がると実感しています。なので、今は目の前の彼らと真剣に向き合いながら、それを横で支えていくことをやっていきたいなと思っています。あと、プロゴルファーさんにもコーチングさせていただいているので、そちらでも同じようにやっています。


―ご自身の終わっていなかったものを終わらせたことで様々な可能性が広がりましたね。


そうですね。何かを昇華させてい新しいものが生まれている感じですね。終わらせるような感じもあるけど、新しいものも出てきているんですよね。


―本日は聞かせていただきありがとうございました。
2021/02/25

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