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自分の好きを信じてコーチになる

仕事に必要なスキルとして学んだコーチングは、自身のコミュニケーションの課題を浮かび上がらせ、さらにその奥にある自分の好きを見出すこととなりました。その好きを続けて、コーチとして一歩を踏み出したストーリーです。

Co-Active Story Vol.7 三神良子さん

大学卒業後、金融機関に勤める。営業を6年、コールセンターのトレーナーを7年、経験。業務の必要性からコーチングを学び始めたが、知れば知るほどコーチとは人が成長する瞬間に立ち会える素晴らしい仕事だと実感し、2015年にコーチ養成機関CTIでプロコーチ資格を取得。
2019年にプロコーチとして独立し、国際コーチ連盟資格PCCも取得。人が自分の可能性を最大限に発揮する社会を目指して活動中。

インタビュー受けてくださりありがとうございます。今日はよろしくお願いします。
―まずはCTIでコーチングを学ぼうと思ったきっかけを聞かせてください。

コールセンターの研修講師という話し方や電話のマナーを教えるという仕事をしていた時に、上司が「教えるって『ティーチング』だけではなくて『コーチング』っていう方法もあるんだよ。」と言って会社の研修としてCTIの基礎コースだけ行かせてもらったというのがきっかけです。

―そうだったんですね。学んだ時の感想はいかがでしたか?

感想…そうですね…笑 最初は「スキルを取りにいってやろう。」という気持ちで行っているわけですよ。なんですけど、スキルもくれるんだけど、それ以上に私を出さなきゃいけないことにすごくびっくりするというか。
研修の中で自分もコーチングを受ける立場になったりとか、感想とか気づきとか自分の意見を言ったりしないといけないわけじゃないですか。それに驚きました。やったことがなかっただけにちょっと苦痛と思うぐらいな感じで。

―情報を取りにいく、やり方を学びにいくと思っていたのとは違う展開になっている。「言わなきゃいけないの?」みたいな。

そうですね。これいる?みたいな笑

―それがある意味で印象に残ったんですね。

そうです。でも、自分の中で一番もらったものは「人の話を聴く」っていうことです。それまでの私のコミュニケーションの概念っていうのが、2人いて自分が一方だとしたら何かいいことを言うとか素晴らしいことを言うと、相手が感心をしてくれて私のことを好きになるっていう図式だったみたいなんですね。だから割と1wayの関わり方というか。
でも、そうじゃなくて相手は話したいことを持っているし、好奇心を向けると話してくれて、自分はただそれを裏表なく聴くというか。相手を受け入れる気持ちで聴くとただそれだけでコミュニケーションが成り立つんだというのが私にとっては人生の革命。

―そうですよね。だいぶ違いますよね。

だいぶ、違う。前の考えだと自分が素晴らしくないといけないからすごく疲れていたと思うんですよね。

―いいことを言わないといけないとか。

そうそう、そうです。だから、人間関係もすごく気が許せる人と許せない人の差が激しくて。あまり疲れるのも嫌だったから世界が狭かったんです。それが、コーチングの概念の一部を理解しただけなんですけど、ただ聴けばいいというのは私にはすごく大きかったなと思います。

―そうなんですね。

だから、1回基礎コースに行っただけで生きるのが楽になりましたよね。「すごい。」って思って。

―ちゃんとしてなくてもいいとか、ちゃんといいこと言わなくてもいいとかで?

そうです。

―それは大きいですね。それで、基礎コースが終わった翌日の仕事なんかでもそれを使うようになったんですか?

はい。それまでは、研修講師をしていても、相手が情報をインプットするってことばっかりに意識がいっているから、相手も心を開いてくれなくて。でも、何が起きているのか自分でもわからないから「なんか距離が縮まらないな。」とか「壁があるな。」っていうことまでしかわからなかったんですよね。
基礎コースのフリップチャートを見て「私には好奇心がなかった!」っていうのが本当にわかって。今でも覚えています笑。

―人に好奇心がなかったと気づいた?

そうそうそう笑 「なかった!ここがないー!」って。
それからは、会社の中で実験、実験ですよね。そうすると、本当に相手も心を開いてくれるし。その後、転職して損保のコールセンターに移ったんですけど、そこでもコーアクティブ、双方向になるってことを心がけたら、指名で仕事が来るようになって。

それまではいっぱいいる研修講師で時間が空いている人から研修にアサインされていくんだけれども、そうじゃなくて担当している部署から「三神さんがいい。」って言って仕事が来るようになったから、これはすごいなって。

―すごい。聴き方を変えただけで、仕事の指名が入った!

そうなんですよ。嬉しかったのは、オペレーターの人たちがレストランでお昼を食べていた時に、ある部署の部長さんがその隣の席に座ったことがあって。オペレーターの子たちが「今日は三神さんと面談だから、すごくうれしい。」「楽しい。」「何を話そうか考えてる。」と話していたというのを教えてくれて。こんなこと以前の私には絶対起きなかった!って思って。

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―これまでのコミュニケーションとは異なる、心が開く関わりは初めは難しさや怖さもあったのではないですか?

ありますよね。だから、当時は開いたと言ってもまだ一部しか開いてなかったと思いますね。それでも怖かったけど、自分の趣味の話とか開けるところから開こうっていう感じで。それまでは「なんで会社で趣味の話なんてしないといけないの?仕事しに来てるんでしょ。」みたいな感じだったと思うんですけど。そこから、共通点を探して仲良くなっていってとか、ライトな感じの自己開示から始めた感じです。

―徐々に徐々に開いてもらうし、自分も開くみたいな感じですね。

そうですね。

―その後のコースはどんなペースで進んだのですか?

そうですね。転職先でありがたくも会社のお金でフルフィルメントコースに行かせてもらうことができて。でも、そこから先は自費でやっていきたいと自分で払って行きまして、結構長い時間かけてC T Iに通いました。基礎コースが2008年で、2009年にフルフィルメントコースに行って。その後、出産を挟んでいるのでちょっと休んで。でも、休むのも「しょうがないな。」って休むのではなくて、「もうこれ以上、自分のこと話すの超怖い。」と思って、もう休みたい〜って思って休んで笑

―そんな感じだったのですね。その後のコースでもコーチング学ぶ上でクライアントとして自分のことについて話す機会もありましたよね。

そうですね、うん。私、家族の関係で子どものころから悩んでて。弟が中学から引きこもりになってたんですけど、私が31歳で弟が29歳の時に亡くなってしまったんですよね、彼が。で、それを「自分のせいだ。」「自分に良くないところがあった。」と当時すごく思っていてしこりになっていました。だから、不思議なんですけど、しこりになっているなら話さなきゃいいじゃんって思うんですけど、話したいっていう気持ちもあるんですよね。誰かに聞いてもらいたいっていう気持ちもすごくあって。自分の人生を良くしていくためには避けては通れないだろうみたいな。でも、それと向き合うのは怖いという葛藤でプロセスを2回もキャンセルしたっていうのがあります。

―そうなんですね。そういうことと向き合う準備みたいなものも一つプロセスだったんですかね。

うーん。今もそれはすごい悲しい出来事で、今も思い出すと泣きそうになるんですけど。でも、なんて言うのかな。今は外に出せるようになったし、その分だけカラッとしているというか。傷口があって、塞いじゃうとじゅくじゅくするんですけど、風にあてると乾いている感じがあるので、すごく悲しい出来事で人生であって良かったか?って聞かれると無かった方が良かったって今でも思うんですけど。不可避というか、避けることができなかったことで、今も乗り越える努力をしている出来事だなって感覚を持てています。

―そうなんですね。記憶として無くなるとか経験として無くなるわけじゃないけど、捉え方には変化が起きているようですね。

そうですね。「なんとかしたら避けることができたんじゃないか。」っていうのがすごく後悔の元になって自分を苦しめていたんですけど、コーチングとかでいろいろ話して思ったのは、私も弟も家族も全員必死にやったなっていう感覚があって。それ以外の方法を、もちろん今は視野も広がって取ることもできるんだけども、当時は取れなかったというのはしょうがないというか。当時の自分たちは精一杯やったというのが腑に落ちた感覚はあります。

―腑に落ちた部分に少しスペースも出てきているような?

そうですね。あとはクライアントさんの話を聴いて「悲しいことのない人はいないよね。」っていうのがすごく慰められるなって。辛いことがない人生ってほとんどないっていう。

―そうですよね。ありがとうございます。すごく大事な話もしてくださって。そういう学ぶプロセスの中で、自分と向き合うこともやってきたんですね。

はい。そうですね。

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―別の観点でも聞いてみたいんですけど。良子さんにとって、「仕事」や「働く」についてはどんな考えや想いがあるのですか?

そうですね。なんだろう。なんでしょうね。でも、前みたいにこう、仕事・仕事として捉えていないっていうのはあるなと思っていて。コーチングって、自分にとってはある意味遊び場というかクリエイティブさを発揮する場面みたいな感じで考えていて。クライアントさんと2人で材料を持ち寄って遊ぶみたいな感覚なので、労働っていう感じではないですね。表現とかの方に近いかも。

―そうですか。じゃあ、それまではお金を得る手段とか生活をするための手段とかそんな感じだったんですか?

そうですね。社会人としての義務としてやらなきゃいけないとか笑

―「働くもんだ。」みたいな?

そうですね。

―そうだと思っていたのが、クリエイティブなものになった?

なんて言うんでしょう。なんだろうな、これ。でも、自分としては自然な行為というか。やりたいことだし、やるのが自然だし、自分が一番社会に貢献できるとしたらコーチングなのかなとか。そんな感じで捉えてるかな。

―そういう風に捉え方が変わったっていうのは、何かがあったのですか?

あぁ。やっぱりコーチングがすごく好きだなって思っていて。私、今でも忘れられないのは上級コースの時にコーチに「こんなにコーチングが好きなのに上手くならない」って言って泣いたっていうのをすごい覚えてるんですけど笑 「悔しい!」みたいな。
「コーチングがこんなに好きなのに、コーチングの真髄が私に応えてくれない」みたいな笑

―すごいですね。それくらい好きなんですね。

好きだなっていう感覚がすごく自分の中にあるんですよね。

―どんなところが好きなんですか?

どんなところが好きなんでしょうね。あの、人とつながる感覚がすごく好きで。体感覚で、「この人と本当につながっている。」ってコーチの私が安心感を感じるっていうのがあると思うんですよね。あの安心する自由な感覚をずっと得ていたいというのがあって。私にとって上手くいかないセッションっていうのは、それを創れなかった、残念っていうのがあると思うんですね。

―そうなんですね。そういう意味では人とのつながりを一番感じられる瞬間がコーチングの中にある?

そうですね。お互いの生と生の魂がここに。生であるっていう感じで、普段つけているいろいろなものが取り払われて、ありのままでお互いにいられるっていうのがとってもいいんだろうなって思います。

―今の話って「なんでコーチングをやっているの?」っていう答えにもなるんじゃないかと思うんです。今たくさんのクライアントさんとコーチングをやっていると思うんですが、そこでコーチとして願うことはどんなことですか?

素直に言うとまず一番最初に来るのは、自分が楽しいからやっているっていうのがすごくあって。自分が楽しいし、人とつながっているという感覚を味わっていたいからやっているっていうのがあります。一番がそこで、二番はクライアントさんにも自分が何もつけなくてもいい、ありのままであるってことを体験してもらって、人生を拓いていくっていうのをやっていってもらいたいっていう気持ち。三つ目は、それで社会や世界に貢献していきたいなって気持ちで。世界や地球っていろいろ大きい問題を抱えていると思うんですけど、自分ができることを真摯にやっていくしかないなって思っていて。それで真摯にできることって考えた時にコーチングで自分らしく生きていくとか自分を愛して生きていく人を増やしていきたい。


―そうなんですね。コーチングをやっている時間が本当に楽しくて好きなんですね。

そうそう。そうなんですよね。


―現在は独立をして週15時間くらいやっているそうですが、改めて自分がコーチとして働いていることについてはどう思われますか?

そうですよね…だいぶ信じられないというか。私、すごく兼業コーチの時代が長くて。2015年にCPCCを取って、独立が2019年だから、4年間も兼業していたんですよね。会社のことが好きっていうのももちろんあったんですけど、もう一つやっぱり専業になって食べていける人って一部しかいない世界だよなっていう思い込みみたいなのがあって、なかなか独立できなかったんですけど。最後独立しようと思った時に、自分のことを一番信じていないのは自分だなって思って。

―おぉ!そう思ったんですね!

思いました笑 そのころは会社の仕事に違和感を感じながら我慢しながらやっている状態だったので、これ以上この場に縛りつけておくのって自分に対する虐待だなって思って。「この場でしかお前は生きられないんだ!」って言っている声が聞こえるっていうんですかね。それで、そんなわけないし、自分が一番自分を信じたいなって気持ちで独立しました。

―まさに自分が自分に対してNCRW(コーアクティブモデルにある礎の一つ)で見て決断したのがコーチとして独立しよう、と。

そうですね。ひとりで独立してやっていく、会社に頼らないで生きていくっていうのを一度やってみよう!と思ったんですよね。だから、俯瞰してみると本当によくやったと思うし、SNSでできた縁ですごく助けてもらったっていうのがあるので。本当にありがたいなって思いました。


―自分でも信じられないってさっき言ってましたけど、想像を超えた世界だったみたいな。

そうですね。まさか、まさかですね笑
前はがんばり方がわからなかったというか、見ているようで知らないことがすごく多かったなって。好奇心って言葉ひとつで世界が開けるっていうのに表されるように、概念を知らないと自分のどこが不足しているかってことさえわからないって言うんですかね。なので、頑張っていたけどすごくもがいている感じみたいなものがあって。そこにコーチングという一種の思考体系というか体系立てられたものを自分の中に取り入れて、咀嚼することで自分を客観的に見たり、足りないところがわかって、正しい頑張りができるようになったと感じています。

―今日はありがとうございました。


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