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【第9章】相手を信じる行動も合理的に説明できる?

※「世界標準の経営理論」で学んだことのメモ一覧はこちら

前章では、ゲーム理論について同時ゲーム・非協力ゲームの前提で話を進めたが、今回は野球の表裏のように交代に判断の順番がくる逐次ゲームの考えを説明し、ゲーム理論が実社会にどのように応用できるか説明してみたい。


どのような状況で先手必勝が有利になるのか

第8章で同時ゲームでは、合理的に考えると両者とも増産し、供給過剰で全体の利益を縮小させてしまう状況になると説明があった。それを回避するためにできる行動について逐次ゲームの考え方を取り入れて紹介していく。
今回、先攻後攻がある状況でA社の先行で先に決断できるとしよう。A社は自身の最善策を合理的に判断するとシナリオ3の増産を選ぶことになる。その後、B社が判断する番になった時、A社のシナリオ3に対して取りうる改善策は増産ではなく現状維持になってしまう。(増産して利益が3になるより、現状維持の5を選んだ方が状況はまだましなため。)
書いてあるのは当たり前のことだが、先手を打つためには2つの重要なポイントがある。1つは先手を打つときはブラフではなく、実際にパートナー企業への投資など「戦略的コミットメント」を示して、後に引かない覚悟を示すことだ。そこに少しでも隙があると行動で先手を取られて形成が逆転することが起きかねない。2つめは、先手を打つ時は「攻め」の戦略あるべきだ。相手に、現状維持を宣言すると後者はここぞとばかりに増産を仕掛けてくる可能性が高い。

事例:米ボーイング VS. 欧エアバス

背景
世界の航空機製造業の2社は長い間覇権争いをしていた。その両者が1980年代に検討を始めたのが次世代航空機の開発である。今後さらに航空界の需要は高まり、一度に大勢の人を乗せられる大型航空機のニーズも出てくると両者は考えたのだ。ただ、両社が同時に開発の検討進めることで、問題も生じていた。それは、仮に両社とも飛行機を開発・増産した場合、上の説明のシナリオ4のような供給過剰に陥り互いに利益の薄いビジネスになってしまう可能性があることだ。
ただ、そんな状況を大きく転換させたのは出来事が1996年4月に起きた。エアバスは次世代大型機の事業化調査に開始し、そこには具体的な計画を示して共同開発企業からの協力を得ていることも発表したのだ。
エアバスに先手を打たれたボーイングは開発の中止に追い込まれ、「エアバス380」が世界たびまわることになった。(その後、ボーイングは中型開発機に資金を投資し「ボーイング787」を開発した。)

常に先手を打っていくことが正解なのか

ここまでの内容を読むと、とりあえず全て先手を打っていかないとダメなのかという気がしてくるが、それには資金を必要であり、また相手が後手に回っても勝負してくる可能性ないわけではない。
ゲーム理論では、1回限りの状況において説明しているが実際には、業界における覇権争いを続いていくため、競争を続けることは前章のヤマトと佐川急便の例のように疲弊していくのではないか。
そんな疑問に対して、「無期限に価格競争を続けて利益を落とし続けるのは不毛だし相手もおう思っているはずだ」という合理的な判断の帰結として、価格競争の終焉を迎える「フォーク定理」という説明が本の中でされていた。
これには納得感があり、寡占状態が続いている業界は、売上を伸ばしたいけそのために価格競争を始めるとどのような状況がおこるかを合理的に考え、あえてそこには暗黙の了解で手を出さず他の新規サービスなど新たな土俵での勝負をしているに違いない。


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