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【第8章】ゲーム理論で分かるお互いに得しない価格競争にハマっていく理由

※「世界標準の経営理論」で学んだことのメモ一覧はこちら

経済学に関連する色々な理論を本書の中で紹介しているが、この理論の背景には全てゲーム理論の存在がある。ゲーム理論はマーケティング研究にも応用されており、今や欧米のマーケティング分野の学者の多くがゲームを使う「経済学者」となっているそうだ。
それほど近代経済学におけるゲーム理論の存在は圧倒的であり、欧米の主要MBAプログラムでは軒並みゲーム理論を教える科目が並んでいる。そのため、この章においてもゲーム理論の競争戦略の応用例を紹介していく。
ゲーム理論は「相手がある行動をとったら、自分はどう行動するか」あるいは「自分がある行動をとったら、それに対して相手はどう行動するか」といった、相手の行動を合理的に予想しながら相互依存関係のメカニズムとその帰結を分析するものだ。
本章では特に自社とライバルが影響を与え合う「複占」での競争戦略に焦点を絞り、ゲーム理論を説明する。なお、ゲーム理論の説明についてはネット上で検索すると色々と出てくると思うので、特に自身が面白いと感じたポイントに絞って説明を行う。


ベルトラン競争の図

どつぼにハマっていくベルトラン競争

【前提】
2020年に業界のシェアを2分するA社とB社が2021年の自社製品の価格戦略を検討しているとしよう。両者の製品は差別化ポイントがなく、その価格が互い影響を与え合う状況であった。また、両者とも価格は一度決めたら変更出来ず、相手の価格は2021年にならないとわからない。(同時ゲームという)
※このような価格ゲームかつ同時ゲームの設定をベルトランと呼ぶ。
【どのような行動に出るか】
上の図と4つのシナリオをみてもらうとわかると思うが、シナリオ1の両社値下げをしない状態だとそれなりに高い利益を得られているが、互いに相手が価格値下げをした時のリスクを考えると、シナリオ4の両社の利益が一番低い状態に突き進んでしまうという事態がおきる。
このような本来互いに儲けを分け合い高い利益率が保てるはずの寡占状態で競争を始めて全体の利益を縮小させてしまうこと「ベルトラン・パラドックス」と呼ぶ。
【事例】
ヤマト運輸と佐川急便は2社で市場の8割を握る寡占業界だ。それにも関わらず、互いに競争を引き下げる争いを続け、2002年に平均単価710円だったのが、2013年には577円まで下落した。
【ベルトラン・パラドックスの予防法】
こんな状況に陥るのは出来ればさけたいはずだが、なぜそうなってしまうのか、経済学者からはいくつかの視点が提示されている。
第1は十分な差別化だ。自社の製品・サービスが十分に差別化されていれば、ライバルの価格変更の影響を受けないですむかもしれない。
第2にビジネスの特性だ。多額の初期投資が必要となるビジネスにおいては、それを取り換えすために供給過剰になるまで生産し、結果的に価格競争に陥ることが考えられる。

【疑問】ベルトラン・パラドックスはなぜおきるのか

ベルトラン・パラドックスについて、寡占状態のバランスを上手く保って利益を分け合っている業界と、価格競争に突入する業界この2つの違いがまだあまり理解出来ていない。現実社会においては同時ゲームかつ非協力ゲームではない力が働いているのだろうか。
ヤマト運輸と佐川急便の話に戻ると、宅配業界は参入障壁が低いから、値下げしないでいるとTCEの考え方で自社にプロセスを取り込むという企業も出てくる(Amazonのような)ことが生じていたため、そのような背景もあって値下げは不可避だったのかもしれない。

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