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シャンプーの連作障害

もとより、「新商品(新製品)」とか、「期間限定」「季節限定」、果ては「香り新たにリニューアル!」なんかに弱い人間だった。

匂いものが好きだ。それも、生活必需品に近いほうのやつ。
たとえば石鹸、洗濯用洗剤と柔軟剤、食器用洗剤、シャンプー・リンス、ボディーソープ、化粧水・乳液、お風呂掃除やトイレ掃除用洗剤、お部屋やトイレ・玄関なんかに置く“消臭〇”とか、布製品にシュッシュってするやつ(“リセ〇シュ”派)、あとはタンスやクローゼットで使う“ニオイがつかないム〇ューダ”(香りつき)。本末転倒。
25歳を超えて自律神経をやってしまって、いわゆる「香害」っぽいしんどさを少し覚えるようになってしまってからも、可能な範囲で匂いもの(を嗅ぐの)を楽しんでいる。

ドラッグストアでは何も考えずとも香りのサンプルを手に取るし、友人の家に遊びに行って、知らない製品があったら「いい?」って訊いて嗅がせてもらう。そして、10年前に一人暮らしを始めてからは、シャンプーを買い替えるときに絶対「今まで買ったことのない」製品をわざわざ選んでいる。
わりとコスパ重視なので高級ブランドのは挑戦できてないし、「使ったことのない」と言ってしまうと過言だから素朴な趣味なのだけど。ちなみに柔軟剤や食器用洗剤なんかもなるべくそうしているが、シャンプーに比べて種類があまりないので、なかなか難しかったりする。閑話休題。

そんなわけで、だいたい毎回違うシャンプーを使っているのだが、その話を友人と喋ったときに、これが多数派でないことに驚いた。

一年間同じシリーズを使い続けるひとは57%、過半数。いろいろ気になるものを試しているひとは28%だが、毎回変える(同じのを使わない)という小項があればさらに少数派だろう。わりと人間は、自分に合うな〜と思ったシャンプーや化粧品を長く使い続けるものらしい。
わたしの「毎回シャンプーを変える」は、あ〜これ合うな〜と思っても半強制的に次は違うものを使うので、あ~合わないな〜もよく起こり得る。でもきっと、合うな〜と思ったものを続けて買ってしまったら、わたしはすぐ匂いに飽きてしまうのでそれでいいのだけど。

そして加えて、とても不思議に思っているのが「同じもの使い続けてると、シャンプーの連作障害みたいなの起こらん?」っていう。
「連作」とは同じ科の野菜を同じ圃場(ex. 畑とか)で繰り返し栽培することを指し、「連作障害」とは連作により土壌の成分バランスが崩れたり、病害虫が発生したりすることで、生育不良や病害が起こりやすくなってしまう現象をいう。
シャンプーの場合も、なんか洗浄成分とか界面活性剤とかの兼ね合いなのか知らないけど、自分はこの「連作障害」が起こりやすい気がしていて、1パックの終わりがけは重たい頭も、変えたタイミングにはいつも泡立ちよく気持ち良い。同じシャンプーを使い続けるよりも、いろんなシャンプーを試しているほうが、実のところ、髪も頭皮もラクなのだ。

調べてみると、似たようなことを言ってる記事は結構あるようだ。検索エンジンのサジェストも参考にしたところ、「シャンプーは2種類買ってローテーションするのが良い!」なんて書いてるページもある。もしかしたら美容院やメーカーの販促戦略かもしれないが、少なくともわたしの体感には合ってるのでサモ・アリナン(ズ)といったところ。
シャンプーブランドさん、この「シャンプーの連作障害」ってワード、使ってイイですよ。
※2024/06/05 0:18 追記
自分以外にもこの「シャンプーの連作障害」って言い方を使ってる人を何人か発見したので、ルーツや言い出しっぺのように「使ってイイよ」なんて言うのは傲慢でした。すみません。

さて、このシャンプーや香りをローテーション、正確には循環させてないのでローテーションではないのだが、いろんなシャンプーを使うことのメリットが、個人的にはもうひとつある。
「記憶の紐づけ・保存・読み出し」が簡単に行えるということだ。
かのプルースト効果や、小川洋子の作品「凍りついた香り」でも描写されるように、匂いと人間の記憶は密接に関係している。五感のうち、嗅覚は人間の記憶をつかさどる「海馬」に直接働きかける唯一の感覚で、感情や情緒もダイレクトに大脳辺縁系に刻まれるという。

大学時代の某恩師は、ドライブ旅行の度々に、車内で聞く音楽を毎回新しく、被らないようにしており、アルバム、アーティスト等をこれ! と決めて旅に挑むらしいが、それはその旅行を思い出したくなったら「このアルバムを聞けばいい」となれるよう、ラベルを貼る行為らしい。音楽版プルースト効果とでもいうようなこの営みについてもいつか触れてみたいが、大脳新皮質を経由する聴覚よりも、大脳辺縁系へダイレクトアタックの嗅覚のほうが気持ちの洪水にはきっと楽しいだろう。

人生史のなかで重複しないように香りを選ぶだけで、「あっこのシャンプー……これ使ってたとき演習の図面たいへんだったな……」とか、「あっ、あのクソな元カレと付き合ってたときのや〜つ〜」という時期を一意にふせん貼って蓋できるので本当にオススメです。これが同じ香りだと無限に重なって記憶リロードして頭が冠水しちゃうタイプ。香りは去っていけば心も勝手に落ち着くからいいよね。

そのうち付録的に、この下に今まで買ったシャンプーをリスト化したいなと思っています。
現在28歳女、いったいどこまで違う商品を使えるのか。
シャンプー道は続く。




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