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業務を委託するときの流れとうまくいくポイント

こんにちは。
GMOペパボの藤吉です。

今回は「業務を委託するときの流れとうまくいくポイント」について書いていきます。

私は前職で、委託会社3社と委託契約をして広告販売をしておりました。また現職では、弊社サービスをご利用いただいている契約者様の継続率アップの一環として、「ショップ診断」という契約オーナーさまのサイトを診断する施策の外注化と日々の運用、クオリティーチェックを行っております。

そんな経験を踏まえ、

・これから業務委託会社と仕事をする人
・すでに業務委託会社と仕事をしている人

に向けて、

・業務委託を実施するときの手順
・業務委託業務を成功させるコツ

の2点を共有していきます。

1.業務委託を実施するときの手順

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これから業務委託先を探して外注していく方向けに、どんな流れで業務委託を進めるかといったお話をしていきます。

大まかな流れは、以下の通りです。

・社内稟議
・委託先の選定
・委託先との交渉
・反社チェック
・業務委託基本契約書とNDA(機密保持契約書)
・業務の進捗がわかるツールの手配
・マニュアル

1-1.社内稟議

業務委託を進める前にやっておくことは、社内にて稟議の申請です。企業によってはもしかすると不要な場合もあるかと思いますが、ほとんどの場合は稟議が必要です。

ちなみに稟議に書く内容としては、

・業務を外注化したときに回収できる人件費がどれくらいか?
・外注化することでどれぐらい経営数字に影響を出せるか?

の2点です。

特に外注化することで、どれぐらい経営数字に影響を出せるかについては、想定ではなく、トライアルなどで先行して行った実績が必要です。

例えば、前職のときに外注を使った広告販売を稟議申請するときなど、稟議を申請する数か月前に、チームメンバーと広告販売を行い、ある程度実績が出てから申請をしておりました。

また現職でも「ショップ診断」をチームメンバーで実施し、解約率削減などに効果が出たため、規模を広げるために稟議申請しました。

いずれにしても、現場から外注の申請をするには、外注化したときに生じる経営数字への影響を事実ベースで固めておくことをお勧めします。

1-2.委託先の選定

稟議が通ったら、委託会社の選定です。

前職の場合は、インサイドセールスができる外注先が必要だったので、トランス・コスモスなどの大手中心で選定をしましたが、現職ではサイトチェックという事務作業がメインなので、1件あたりのコストが安い会社を選定しました。

選定する際には、「とにかくいろいろなキーワード」で検索し、委託先をリストアップしました。その後、委託予定の業務内容とだいたいの対応いただきたい件数、導入時のマニュアル有無、レクチャー有無などを伝えて見積もりをもらいます。

実際に6社に相見積もりを取ってみると、びっくりするぐらい月額費用に差があり、初期導入費用が40万円もする委託会社もありました。

1-3.費用が安い企業との交渉

費用面や運営面で問題なさそうな企業と詳しく詳細を詰めていきます。

詳しく詳細を詰めていくポイントは、

・委託する業務内容のさらに詳しい説明
・追加費用は発生しないか
・どんな運営体制で業務を進めるのか
・請求回りの確認

です。

特にどんな運営体制で業務を進めるのかを把握する必要があります。作業をしていただく環境や管理者の有無、作業をしてくれる方は交代制か毎回同じ方かなど。

なぜ確認しておく必要があるかというと、どんな人が業務を遂行するのかがわからないと、マニュアルや入力するツール説明をどのレベルで作成すればよいかわからないからです。

前職の場合ですと、私が委託会社と同じフロアで業務を行っている環境だったため、どんな人が働いているのかがわかりました。このときは比較的高齢な方が多かったので、マニュアルのフォントを大きくしたり、専門用語を控えたり、入力ツールで表示する文字をわかりやすいネーミングにしたりと作業をしやすくする工夫ができました。

委託会社に「はい、これやっといて!このマニュアルを見れば馬鹿でもわかるよ!」というスタンスだと信頼関係が生まれないため、あとあとクレームや問題が発生することがあります。

1-4.反社チェック

これは当たり前のようにやっていることかと思います。各会社で定められている反社チェックの申請を行い、委託先が問題ないかを法務に判断してもらいます。

1-5.業務委託基本契約書とNDA(機密保持契約書)

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業務委託契約書とNDA(機密保持契約書)を交わすのは当たり前かと思いますが、注意点としては締結までにとにかく時間がかかるという点です。

業務委託契約書とNDAは、自社の法務と委託先の法務とでのすり合わせとなるため、行ったり来たりしながら折り合いをつけていく感じです。

どんな風なやり取りになるかというと、

・●条×項にある業務においてクレームが発生したときの責任範囲についてはどの程度の範囲になるのか?

・直接的に被った損害に対して賠償の責めを負うものとするの「直接的に被った損害」は現状の業務で発生することがあるか?

といった感じです。

また、自社の法務が素早く回答をしたとしても、委託先の法務からの回答が遅く、当初のスケジュールを変更することがあるかと思います。契約関係のスケジュールは余裕をもって引いておくと良いかと思います。

1-6.業務の進捗がわかるツールの手配

委託する業務内容にもよりけりですが、自社で使用しているツールのアカウントを付与することで、業務遂行をしてもらうことを前提に進める方が良いです。なぜなら、自社で使用しているツールであれば業務の進捗状況がわかりますし、どういった作業をしたのかがわかるからです。

ちなみに私が携わった業務委託については、前職も現職もsalesforceを使って業務をしていただきました。作業内容はsalesforceに入力もしくはプルダウンで項目を選んでいただき、今日は何件ぐらい作業をしてくれたのかが、委託先からの報告をもらう前に確認することができ、スピードアップできます。

また委託業務が開始すると、いろいろなケースが発生します。「この契約者様の場合は、どうすればよいか?」といったエスカレーションも来るようになりますが、その際、どの契約者のことを言っているのかがすぐにわかるようになり、項目さえ事前に決めておけば、委託先からのエスカレーションがなくても、こちらで問題を検知し対応することができるようになります。

例えば、現職ではショップ診断という業務を外部委託しておりますが、委託先から「この契約者の場合、この診断で合っているか?」といったエスカレーションが頻度多く来ておりました。そこで、作業する項目の中に「ペパボ判断」という項目を用意し、委託先が迷ったら「ペパボ判断」に項目を選択してもらい、私が決まった時間に「ペパボ判断」になっている件数を確認し、内容を見て、委託先へ指示するという流れができ、エスカレーションによる作業中断ロスがかなりなくなりました。

1-7.マニュアル

委託会社へ業務開始をお願いする1週間~2週間前までにマニュアルを作成しお渡しする必要があります。なぜなら委託会社とマニュアルを見ながら作業を確認し、ツールにどのように入力するかをすり合わせる時間や委託先の現場でマニュアルを見て作業を確認しておく時間があるためです。

マニュアルは委託する業務内容によって変わりますが、現職では「salesforceに入力するマニュアル」「チェック作業するときの判断基準マニュアル」など、作業内容とツール操作のマニュアルが必要かと思います。

作業内容については、稟議前にトライアルでもよいので自社で行っている業務であれば、比較的簡単に作成可能かと思います。ツールについては、画面キャプチャーなどで充分かと思います。

他にも「動画マニュアル」があると非常に好評です。こちらは後ほど詳しく解説します。

2.業務委託を成功させるコツ

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続いて、すでに業務を委託している方向けに現状よりも効率よく運用していくコツをについてお話していきます。

大まかなコツは、以下の通りです。

・動画マニュアルの導入
・作業中の疑問点を残らずマニュアル化
・電話ではなくメールかチャット
・営業窓口担当と現場担当は違う
・自社内で件数管理ができる状態にする
・毎月のクオリティーチェック
・委託した業務が商品化されるリスク

2-1.動画マニュアルの導入

上記1-7でも少し触れましたが、動画で作業手順を紹介したマニュアルが前職でも現職でもかなり役に立ちました。

基本的にPDFなどのマニュアルを見れば問題なく作業できるのですが、動画で手順を音声付きで紹介することで、作業者の認識のズレを減らせると思います。また委託先からも好評で、動画マニュアルは非常によかったとの声もいただきました。

なぜ動画マニュアルが好評だったのかですが、委託会社は基本的に「人の入れ替わり」が頻度多く発生します。委託会社に登録している方が急に退職してしまったり、出勤しなくなったりということが起きます。これは大手の委託会社でも小さい委託会社でも同じでした。

毎月結構な委託費用をお支払いしていた大手の委託会社でも、作業スピードが速かった方が急に来なくなってしまったり、その代わりに別の人を翌日に働いていただいたりというのがザラでした。

そんな入れ替わりが多い状況なので、委託会社の管理者が作業を教えるコストは結構大きいです。でもそのときに「この動画を見ておいて」という形で動画マニュアルが役に立ったということでした。

ちなみに動画マニュアルは、こちらの無料録画ソフトを使いました。ApowersoftというフリーオンラインPC画面録画ソフトです。このソフトはPCの画面をそのまま録画でき、ロゴも入らず、音声も録音できます。画質も良いので、そこで作成した動画を委託会社に共有しておりました。

2-2.作業中の疑問点を残らずマニュアル化

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委託開始直後、委託会社からのエスカレーションが非常に増えます。マニュアルに記載していないことがどんどん発生するからです。前職でも現職でも同じでしたが、社内で実施した業務内容に属人的な要素があり、それらをマニュアルで拾い上げることができないので、都度都度の対応が必要です。

ただこの対応が非常に重要です。なぜなら作業品質に影響が出るからです。それらのエスカレーションをちゃんと把握して、残らずマニュアル化をしていかないと委託会社の作業が属人化してしまいます。そうすると実際に作業の品質や作業効果の検証をするときに実績が変わってしまい、使えないものになります。

マニュアルは1回作って終わりではなく、エスカレーションの度に情報量を増やしていきました。実際に作業者が困ってしまった点を事例付きでマニュアルに追加していきました。大事なことは委託先の作業者は変わることが前提なので、知見をマニュアルにどんどん貯めていくためにもエスカレーションされたことは残らずマニュアル化していくと良いかと思います。

そのため、エスカレーションで追加していくことが前提の場合は、導入時のマニュアルは最低限度の内容で良いと思います。

2-3.電話ではなくメールかチャット

委託からのエスカレーションは、電話では極力受けないようにするのがおすすめです。できれば、メールかチャットが良いです。なぜなら後々で、「言った・言わない問題」が起こるからです。

委託先の管理者は弊社と業務委託基本契約書やNDAを交わしてるため、損害が起きたときの賠償というリスクが頭にあります。そのため都度都度確認をしてくる管理者は多いです。管理者も早く問題解決をしたいので、電話をしてくるケースがあります。

ただ電話で指示したことは記録に残らないので、あとで問題が発覚した場合、委託管理者から「電話ではこう指示された!」と言ってくるパターンがあります。前職では、この「言った言わない問題」を何度か経験したことがあります。

そこでおすすめなのは、電話では指示を伝えず、メールで指示を伝えるスタンスを徹底することです。メールは記録に残るので、後から問題が起きた場合も「言った言わない問題」は起きにくいからです。また普段から電話での回答をしないスタンスを徹底しておくと、「電話で指示を受けた」といった発言は委託からも出にくくなります。

ただ、電話で連絡を取る状況が避けられない場合は、電話で指示したことを念のためメールしておくことをおすすめします。

また、できればの話ですがメールではなく、chatworkなどでやり取りをすることがおすすめです。chatworkは外部との連絡が非常にやりやすい無料ソフトです。ご存知の方も多いと思いますので内容は省略しますが、タスク設定などもできるため、請求書を今月いつまでに欲しいといった毎月生じることをタスク設定して委託管理者にリマインドさせるのに役に立ちます。

2-4.営業窓口担当と現場担当は違う

委託会社にもよりますが、多くの場合、営業窓口担当と現場担当は異なると思います。委託会社と定例の打合せをする場合、営業窓口担当だけが参加するケースが多いと思いますが、できれば現場担当や現場管理者も同席してもらうようにすると良いかと思います。

現場担当や現場管理者は作業者からのエスカレーションや運用をしている方なので、営業窓口担当が知りえない問題を抱えていることがあるからです。特に大手の委託会社ほど、営業窓口担当がぞろぞろと定例の打合せに来ます。おそらく追加の業務がないか?といった営業案件探しのための定例打合せの参加なので、議論が変な方向に行ってしまうこともありました。

2-5.自社内で件数管理ができる状態にする

1-6でも触れましたが、件数管理を自社でもできるようにしておくことが大事です。毎日委託から業務報告レポートをもらうのも良いですが、毎月の目標がある業務を委託している場合、今どのくらい未着手があるのか、月末までに目標を達成することができるかをこちらでも算出して、逐一、突っつくことができるからです。

業務報告レポートの場合は、一日が終了して、管理者が集計し報告するものなので、こちらからの要望は基本的に翌営業日からの対応になってしまいます。その場合だと早めのキャッチアップができないので、リアルタイムの進捗状況把握し、指示が出せる状態にしておくことが大切です。

2-6.毎月のクオリティーチェック

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実際に委託している作業内容を自社でチェックしていくことで品質管理をしていくことがおすすめです。弊社の監査から指摘があったのですが、委託している作業が外部に影響がある場合、そのアウトプットや作業結果を毎月の頻度でチェックすることが必要とのことでした。

正直、業務委託導入初期は毎日のように品質チェックをしていましたが、導入3か月目以降ぐらいからは定期的な品質チェックを率先して行っていませんでした。業務委託をしているとはいえ、自社のサービス利用者に影響がある作業の場合は、毎月のクオリティーチェックがおすすめです。

2-7.委託した業務が商品化されるリスク

委託会社は請け負った業務を商品化する傾向があります。

もちろんDNA(秘密保持契約)があるため、作業のマニュアルなどを漏らすわけではありません。ただ、弊社から依頼した業務を自社のアウトソースサービスとして商品化する傾向があります。

具体的には弊社で業務委託を行っているショップ診断業務を「サイトチェック業務」として他社に営業をかける場合があります。こういった行動は弊社では制限ができないので、業務委託をする際には自社で依頼した業務を商品化する傾向があるということは理解しておきましょう。