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CSキャリア”インタビューリレー”第十三弾

ファーストキャリアからこれまで一貫してカスタマーサポートに関わってきた谷合(たにあい)北斗さん。
アルバイトからスタートした後はインハウスのカスタマーサポート組織立ち上げなどに携わり、現在はフルリモートのCSチームを部長として支えています。
「生成AIとリモートワークがオペレーターの価値を高める」と語る谷合さんに、これまで感じてきたカスタマーサポートの面白さや、ご自身の目指す未来のカスタマーサポート像についてお話を聞いてきました!


谷合北斗さん / ブランド戦略本部 CS部 部長 / 株式会社TENTIAL

はじめに

-こんにちは。今回は、株式会社KOMMONSが企画する”CSキャリアインタビューリレー”の第十三弾です。
 
株式会社KOMMONSは、カスタマーサクセスに特化したサービスを提供する会社です。企業向けのカスタマーサクセス支援サービスやカスタマーサクセスを職業とする方たちのコミュニティを運営しながら、カスタマーサクセスの方たちが自信を持って働ける世界を目指しています。


インタビュー内容 

【1】 谷合さんのご経歴

コールセンターのアルバイトや派遣としてCS業界でのキャリアをスタート。
お客様の声を直に改善に活かしたい想いから、インハウスのカスタマーサポートとして組織の立ち上げに携わる。
その後もいくつかの企業でカスタマーサポートとして新規事業や組織の立ち上げを経験。
現在は株式会社TENTIALで、カスタマーサポートの部長を務める傍ら、副業でCSアドバイザーとしても活動。
人×AI×リモートで最高のお客様体験構築を目指す日々のつぶやきはこちら

【2】アルバイトから始まったCSキャリア

谷合さん、本日はよろしくお願いします。
改めてこれまでのご経歴について簡単に教えていただけますでしょうか?

もともと最初の会社に入社する前に、コールセンターでアルバイトや派遣として仕事をしていました。
現場でSVの経験などを積んで正社員になろうと入社したのが最初の会社でした。

最初の会社はゲーム会社のなかにあるカスタマーサポート部隊で、スマートフォンなどの携帯向けゲームや、筐体ゲームのサポート窓口のマネージャーをしていました。
そこは本体のゲーム会社のグループ会社ではあったものの、外注という扱いだったこともあり、サポートとして得たお客様の声を活かして物事を改善していくというのがなかなか難しく、インハウスのカスタマーサポートをしたいという想いで2社目に入社しました。

2社目はブランド品などの買い取り事業を行う会社で、カスタマーサポートの立ち上げを担当しました。
その後は、3社目の会社で新規事業だった婚活サービスのCSを立ち上げたのですが、事業が軌道に乗らず閉じてしまったため、4社目で今度は暗号資産事業のCSを立ち上げた後、現職でもCSを立ち上げることになりました。
ですので結果的に、直近3社ほどは、ベンチャー企業でCSの立ち上げを主に経験してきたという状況です。

ありがとうございます。
これまでご経験されてきたCSの立ち上げというのは、「カスタマーサポート組織の立ち上げ」でしょうか?

そうですね。カスタマーサポートの立ち上げです。
とはいえ例えば、ブランド品の買い取り事業ではtoCのサクセスのような側面があり、暗号資産事業では、QRコード決済のサービスがあったので、toBに対してサービスを継続して使っていただくためのサクセスにつながる動きはありました。

直近では副業にはなりますが、ある会社のカスタマーサクセスのアドバイザーとして、1年くらいサポートさせていただいたこともあります。

【3】目指すのは「オペレーターが評価される」世界

これまでかなり長い年数を一貫して、カスタマーサポートやカスタマーサクセスに関わっていらっしゃったんですね。そこにはどんなお考えがあったのですか?

近年、カスタマーサクセスの業界は伸びてきていると思うのですが、自分はカスタマーサポート、とりわけオペレーターの方々が評価される世界をつくれないかと考えています。

もともとのきっかけとして、アルバイトから正社員を目指した理由にもつながるのですが、アルバイト先のオペレーターの先輩の方々が、感動するレベルで話が上手かったんです。
普段はすごく雑なことをしゃべっているのに、お客様対応となるとスイッチが入って、ものすごく話が上手い。
けれども、現実として時給は大したことないし、後々進んだとしても当時でよくて時給1600円が頭打ちというような状況で、「この世界はなにかが違う」と思っていました。

当初は自分もオペレーターとして、その先輩方くらいのレベルまで上手くなれたらと思っていましたが、正直なところ、しゃべるのはそんなに上手くなれないなというのもありました。
であれば、そうしたオペレーターの方々をマネジメントすることで、輝かせることができないかという想いでマネージャーに転職しました。

その後の転職についても、基本的にはCSに力を入れたいという想いのある会社に入社し、CSを立ち上げるなかで、スキルが高いオペレーターが評価される世界をつくれないかと考えながら仕事をしています。

それはとても興味深いお話です。
現職の株式会社TENTIALでもマネジメントをされていると思うのですが、具体的にどんな動きをされているのでしょうか?

現在は肩書としては部長を任されています。
カスタマーサポートの部署では、主にtoCのカスタマーサポートや、購入前のアドバイスをする動きをしており、非対面の接客全般を担っています。
直接ひとが対応する業務の他にも、FAQやチャットボットなどの自己解決の環境を整える業務や、お客様の声を社内に届けていくVOCによる改善業務も担当しています。

会社としてお客様の声を大事にする文化があり、新商品も含めて商品改善の声があがってくるなかで、例えばサイト改善につなげることもそうですが、お客様の声をフィードバックして、次の商品の改善につなげるというケースはよくありますね。

【4】テクノロジーの発展とつくる未来のCS

ご自身の目指す世界の実現に向けて、これまで感じたカスタマーサポートの面白さや楽しさはどんなところだと思いますか?

実は、今が一番楽しいですね。
過去の会社を振り返ると、例えば、事業が急激に伸びて利用者が増えると、チャットボットなどを導入しても、結果的にひと頼りになることが多くなります。
もちろん、仕組みで解決できることも多くあるのですが、CSへの問い合わせが増えると、ひとを雇わないといけないという論理はどの会社でもまだまだあると思っています。
そしてそれを脱却する方法が、ここ十年はなかなか見つかりませんでした。

過去に自分も、自動化などをやったものの、結局はひとを雇わなければならない状況にぶつかったことがあります。そうした状況では、15人を超えるあたりから、だんだんひとを選べなくなってくるジレンマがあると感じます。
具体的には、もともとはスキルの高いひとを求めていたものの、採用を急ぐためにレベルを下げないといけないという状況です。
ですが、喫緊では生成AI周りの技術が発展してきており、特に今年に入ってからはある程度はCSのサポート業務にも使えるようになってきました。

自社では「人×リモート×生成AI」の3軸を重視してCSをしているのですが、問い合わせが増えたとしても、そこまで頑張ってひとを増やさずに対応できそうな未来が見えてきていると感じており、その状況を非常に面白いなと思っています。

そうなんですね。
ここ十年は解決策が見つからなかったとお話されていましたが、未来が見えてきたのはテクノロジーの発展によるのからでしょうか。

テクノロジーの発展は大きいですね。
生成AIは嘘をつくという言い方がされたりもしますが、そのあたりが方法論での改善などで是正されてきたことで、よりひとに近しいサポート体験をお客様に提供できる未来が見えてきたなと感じています。

自社ではお客様満足度を主なKPIにしているのですが、速度×品質がお客様満足度に直結しており、どちらかがマイナスになった時点で、お客様満足度もマイナスになることがわかっています。
ですので、例えば、問い合わせをしようとしたらFAQのページがあり、クリックするとまた奥にページがあり、いつまでも解決しなくて問い合わせ数を強制的に減らすような設計や、よくわからないチャットボットで、いつまでも回答が出てこなくて解決しないといった体験がある時点で、お客様体験は悪いんです。
そうした側面を、チャットボットやテクノロジーで、解決できるようになってきたというのはすごく大きいと思います。

また違った角度ですが、自社の採用基準の1つに「TENTIALの商材を愛せるか?」があります。
ですので、本社のある品川近辺だけで探すと限界があるんです。
今はリモートワークが普通になったので、少なくとも日本全国でTENTIALの商材が好きなひとを探せるようになったのも、ある種のテクノロジー発展の側面ですね。
いいひとを選び、テックでサポートができるようになったという意味で、テクノロジーの発展はとても大きな要素です。

【5】フルリモートチームの強みと難しさ

現在のチームはリモートで勤務されている方もいらっしゃるのですか?

本社近辺にいるメンバーが出社することはありますが、基本はみんなフルリモートです。
四国と九州以外にはひとが点々としています。なので天気予報も全国を見ないとみんなの状況が把握できません。「そっちはすごく暑そうだね」とか「台風だけど大丈夫?」みたいな(笑)

全国各地で自社の商材が好きなひとを探せるのはすごい強みだと思います。
例えば、あの有名な千葉のテーマパークに行くとして、スタッフの方がそのテーマパークのブランドのことが嫌いだったら、嫌だと思うんです。その感覚に近い意味で、自分はTENTIALが嫌いなひとがTENTIALのCSをやることに対して、お客様体験の観点からすごく違和感があるんです。
ですので、リモートワークというテクノロジーを使って、TENTIALを好きなひとにお客様対応してもらうというのは、すごく大事なことだと思っています。

どんな方をどう採用してどう働いてもらうかまで、考えて設計されていることが伝わってきました。
フルリモートのチームをまとめる上で意識されていることや、大変なことはありますか?

前提として、リモートワークは新しい働き方であり、オフィスワークの延長ではないという話はメンバーにしています。
そうすると、実際の業務でのストレスのかかり方や、困ってしまうポイントが何かとの比較ではなく「リモートワークだからこそこれが課題なんだ」という観点で色んなメンバーから声をもらえるようになってきます。
そこを維持しながらも、メンバーとコミュニケーションをどうやって図っていくかというのは、まだまだ模索しながらやっていますね。

分かりやすい話では、コミュニケーションを取りやすくするために、Gatherというバーチャルオフィスを使うなどの施策はやるものの、多くは特にSlackでのテキストコミュニケーションではあるので、そもそもテキストコミュニケーションとはどうあるべきかを、メンバーを巻き込み継続して考えるというのは、マネジメントとして重視しています。

その背景として、部長がメンバーに毎日なにかしら触れることよりも、メンバー間のコミュニケーションが一番大事だと思っています。ハレーションが起きるとしたら、メンバー間でのコミュニケーションの方が多いのではと自分は感じているので、それを前提にマネジメントをしています。

【6】立ち上げ期ならではの課題と経験から見えたこと

リモートワークのマネジメントはCSに限らず参考になるお話だと思います。ありがとうございました。
次はこれまでのキャリアも含めて、大変だったことや失敗のエピソードもあればお聞かせいただけますか?

色々ありますが、立ち上げを何度もやっているなかでの経験として、自身の右腕、左腕といえるひとを、早めに見つけて雇うという意思決定が遅くなってしまったというのがあります。
立ち上げの時期はどうしてもお金がないこともあり、正社員ではなくアルバイトなどで、比較的コストを抑えて組織を拡大していく方針を取りがちになります。

ところが、キーマンとなるひとを早めに見つけないと、マネージャーである自分がずっと現場を見ていなければならない状況になってしまい、CSという部署の事業が止まることになります。
結果的に、キーマンの採用を遅らせたことで、現場としては回っているが、会社へのアウトプットが遅れ「お客様からの声をもらっているのに、改善できないのはどうしてなのか?」とみられてしまい、インハウスのCSとして、内製していることに対する必要な価値を発揮できなかったというのが自分のなかで重たい経験となっています。

立ち上げ期だからこそ、どこでひとやお金を投資するかという判断は難しいですよね。

難しいですね。
ありがたいことに、現職のTENTIALもそうですが、急激に事業が伸びている会社の場合、先が読めない難しさもあります。
極論ですが、先月500件だった問い合わせが、今月は1000件になり、来月には2000件になるという拡大の仕方をするかもしれない。逆に急に売上が下がる場合も含めて読み切れないのが当たり前ではあるものの、その状況に慌てずどう投資すべきかを、冷静に考えることが大事だというのはこれまでの経験から思っています。

【7】オペレーターはひとがやるべきプロフェッショナルな仕事

10年以上カスタマーサポートに携わってこられたなかで、ご自身が目指す「オペレーターが評価される」世界に変わってきているという実感はどのくらいありますか?

これから変わるだろうなと思っているというのが正直なところです。
これまでは、例えばオペレーターの時給1500円に対し、スキルの高いオペレーターは時給1700円にするという給与差をつくることはできましたが、それは月収や年収の差で考えればさほど差がなく、大きな変化はできていなかったと思います。

ただ、これからは個人的に大きく変わると考えています。
まだすべてではないとは思うものの、chatGPT-4oがリリースされ、音声対応のAPIがそろそろ開放されるという話があります。日本語対応がどうなっているかという状況にもよるものの、もしいいものが出てきた場合に、電話対応も含めて生成AIに移行できる幅がかなり広がると思います。
そうなると会社の観点では、ひとはいいひとを雇い、他は生成AIに任せるという体制が可能になったり、ひとの状況をみながら、生成AIのボリュームを上げたり下げたりする判断ができるようになります。
そうした世界では、今は平均1500円くらいのオペレーターの時給を、倍にしたとしても問題なくなるはずです。時給が上がりオペレーターが人気のある職種になると、より優秀なひとが集まるようになり、プロフェッショナルとしてひとがやるべき仕事であるというポジションになっていくと思います。

これまではひとではなくてもできる仕事なのに、ひとを使わなければできないという部分がありましたが、テクノロジーの発展によってそれらが間引かれた結果、オペレーターの時給や年収を大きく上げることにつながったり、オペレーターは社員がいいというのが当たり前になってくるのではと考えています。

【8】カスタマーサポートが人気職になる未来

では今後「いいひと」を集められる世界になった場合に、カスタマーサポートとしての「いいひと」とはどんなひとだと思いますか?

お客様がファンになるひとだと思っています。
極端に言うと、そのひととしゃべりたいから問い合わせをしてくるという世界になってくると思うんです。
業界によって違いはあると思うのですが、例えば自社の業界だと相談がしやすいのは大事ですね。
商材はパジャマなのですが、2万5千円くらいするパジャマとしては高額な商材なんです。そうすると、購入にあたって最後の一押しをしてくれるひとというのは、信頼がおけるひとだったり、そのひとが言うから買おうと思えるひとだと思うんです。
その信頼のつくり方も、お客様によって全然違うので、オペレーターのスキルとしては、お客様に合わせて正しくブランドのことを伝えられるというのが必要になってきます。

その必要なポイントが、CSの業種や会社によって異なるため、その分、各社でCSに色を出すことができるようになってくると思います。そうなると、ひとに求められることも増えるのではないかと思います。

考えるべきことがより複雑になり、CSの管理者もやることが変わります。
例えば、自社のブランドはこういう指向性で、こういう目的があるから、こういうオペレーターを雇うというのを設計して、経営層に話さないと意味がなく、問い合わせを何件捌きましたなどの報告だけでは、意味をなさない世界になっていくのではというのはとても楽しいところですね。

谷合さんの話すカスタマーサポートへの職業観を聞いていると、とても魅力的な仕事だと感じました。

そこがすごく重要なんです。
カスタマーサポートはクレームを受けている仕事だというイメージや、怒られてつらいという場面は、接客業として起こり得ることではあるものの、それは決して素敵な話ではないですよね。
千葉のテーマパークの話に戻りますが、あそこのスタッフの方々も大変だと思いますが、楽しんでいるお客様を見て自分も楽しい気持ちになれたり、テーマパークの世界観のなかにいることで、幸せを感じることができるという面があるのではと思っています。
そうした世界観をCSもつくらなければいけないと考えています。

TENTIALというブランドの世界観をつくり、そのなかに入ってきていただいて高いスキルで仕事をしていただくことに対して、会社はお金を払うことができると、より価値を発揮できるようになってきます。
例えば、自社ではCVRも指標にしているのですが、サポートした後に購入してくださったお客様を見ると、おそらくLTVも含めて上がっていくはずです。

離脱率などまで細かく見ているわけではないですが、成果を見せればCSにコストをかける価値を経営者も見出すようになり、結果的に人気職になって、会社としても価値のある部署として大事にされるようになるというのは、おそらくそんなに遠くない未来にあるのではないかと思います。

【9】生成AI×リモートがオペレーターの価値を高めていく

ここまで大変面白いお話をありがとうございました。
最後に、ご自身のキャリアにおいて今後やっていきたいこと、チャレンジしたいことなど展望をお聞かせいただけますか?

これまでは5年後を見据えながらやってきましたが、喫緊では生成AIの改善、変化の速度がものすごく早いなと感じています。
なので、2~3年は「人×リモート×生成AI」の3軸のレベルを上げていくことに集中しようかなと思っています。
また今は「生成AIが入ってきたけど、本当に使えるのか?」という空気が、CS業界全体にまだまだあるなと個人的には感じています。
ですので先駆者としてどんどん開拓するなかで、色々なCSの方々が自社を事例にしながら各社なりに生成AIを導入していくと、オペレーターの価値が上がる世界が近づいてくると思うので、情報発信に力を入れていきたいです。
結果的にそうした活動が、TENTIALというブランドにとっても、質のいいサポートを提供しているという宣伝にもつながるはずという気持ちもあります。

その後は実際に2~3年後に、どういう世界になったのかをみた上で、また考えていきたいなと思っています。

それはまた面白いですね。
また2~3年後でも状況がだいぶ変わっていそうな気もします。

そうなんですよね。もうガラッと変わっているような気がします。
その時を楽しみにしながら、活動していきたいと思います!


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