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2_2セクシュアルハラスメント(セクハラ)って何が該当するのか?


 職場でのセクシュアルハラスメント(セクハラ)は、被害者の心理的な健康を害し、職場の安全性と生産性を低下させる深刻な問題です。この記事では、セクシュアルハラスメントの定義、具体的な事例、そして企業が講じるべき対策について解説します。



1.セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは

セクシュアルハラスメントとは、身体接触、性的な言動によって職場での不快感、脅迫、または差別的な環境を作り出す行為を指します。これには、望まない性的な言葉遣いやジェスチャー、不適切な身体的接触、性的な関係を強要することから、職場での性的な冗談や画像の共有まで、幅広い行為が含まれます。

また、会話を行う当人同士がセクハラに該当する言動を冗談と認識し、受け入れている場合であっても、その会話を聞いている他者が不快に感じてしまうこともあります。

昨今は性に関する意識が高まってきているため、不用意な言動がセクハラに該当してしまうことも起こり得ます。職場では基本的に性的な言動を取らないことが重要です。

※業務上身体的特徴を必ず確認しなければならない事由があった、誤って肩が触れてしまった、救助を様子する際に身体に触れた、など故意に行っていない、必要な事由が認められる場合には、セクシュアルハラスメントに該当しません。


2.代表的なセクシュアルハラスメント(セクハラ)の事例

 セクシュアルハラスメントには4つの類型があります。

➀対価型セクシュアルハラスメント

性的な言動を拒否した為に労働条件に不利益を受けるセクハラです。

例えば、上司から性的な関係を要求され拒絶したら、迫害されたなどが該当します。

➁環境型セクシュアルハラスメント

 性的な言動を受けたために就業環境が害され、能力の発揮に支障をきたすセクハラです。
 さらに視覚型・発言型・身体接触型の3つに分類されています。

例えば、「上司が何かと理由をつけて身体接触を試みてくる」や、「ファッションについて性的に評価してくる」、「足から身体をなめまわすように視線を送る」などが該当します。

③制裁型セクシュアルハラスメント

 性差別的な価値観に基づき、女性の昇進や活躍を否定・抑圧するセクハラです。

 例えば「女性はお茶くみさせていればいい」や「男は残業するのは当たり前」などが該当します。

④妄想型セクシュアルハラスメント

相手が自分に好意があると勘違いし、しつこく付きまとうセクハラです。

例えば、「やさしく声を掛けられただけで、自身に好意があると勘違いし、執拗に連絡を取ろうとする」などが該当します。


 セクシュアルハラスメントは、相手が性的な言動をどう受け止めるかが重要です。年代や育ってきた環境によって、性に関する認識は大きな違いがあります。半パブリックな会社内では、親しい間柄であったとしても性的な言動をしないことが大切です。


3.セクシュアルハラスメント(セクハラ)の注意点

①セクシュアルハラスメントに当たるか否かは、受け手の判断が重要。

 親しさの表現であったとしても、時に相手を不快にさせてしまうことを認識することが大切です。よくある事例で「この程度のことは相手も許容するだろうと思っていた」など勝手な推測をしてしまっていることがあります。相手との良好な人間関係ができていると勝手な思い込みをしないことが大切です。

 また親しい間柄であったとしても、たった一言で信頼関係を崩してしまう可能性があります。


②不快なであるかどうか、いつも受け手から明確な意思表示がある(嫌だと拒否する)とは限らない。

 セクハラを行った方にヒアリングを行うと「相手が嫌がっているとは思わなかった」といった発言を多く聞きます。特に上司に該当する方達は、相手の反応をうまくつかめず、気づかずセクハラを行ってしまっていた、といった事例が多いです。

 他のハラスメントにも該当することではありますが、セクハラを受けている当事者は、「この時が早く過ぎてほしい。抵抗しなければすぐに終わる」と考え、抵抗しないことがあります。特に相手が上席者の場合、「恐怖を感じ、抵抗する事自体ができなかった」など、拒否することができない場合が、多々あります。

 このようにセクハラは必ずしも、「嫌」という意思表示を示さない場合があります。この場合、セクハラを行っている当事者自身も気がついていないため、周りの従業員が状況を報告する必要があります。


③職場だけでなく出張先や歓送迎会などの職場外も含まれる。

 セクハラは、職場内だけではなく、職場外で起こることも多いです。社内では他の社員の目があるため実施されず、職場外の目につきにくい場所で行われることもあります。職場外でのセクハラは、発覚が遅くなる可能性もあるため、十分に注意が必要です。

 飲酒が行われる歓送迎会では特に注意が必要です。飲酒によって、制限が外れ、普段は気を付けている方が、羽目を外してセクハラ行為を行ってしまった事例も多くあります。

 無礼講の場であったとしても、一定の節度を心がけなければなりません。


④セクハラは、異性だけが対象になるわけではない。

 昨今、LGBTQなどの性に関する意識が高まってきており、セクシャルハラスメントは単純な異性だけの間で起きる問題ではなくなっています。性の多様化が進む中、人と同士の関わり合い全てにおいて性的な言動に注意を払わなくてはなりません。


⑤セクハラの対象者には会社に出入りしている企業、面接や会社訪問で来社した就職希望者、学生、実習生も含まれる。

 社内の人材ではなかったとしても、セクハラ対策はしなければなりません。社外に人材に対してセクハラ行為を行えば、自社の信用に関わります。社外の人でも、相談ができる窓口を設置するなど、社外に向けた対策を取ることが重要です。


4.セクシュアルハラスメントへの対策

➀教育と啓発

従業員と管理職に対するセクシャルハラスメントに関する教育を定期的に実施しましょう。また定期的な会議や社内掲示板などで、常に注意を促すことでセクハラに対する意識を高めていくことが大切です。

 社員教育については、社内での研修に加え、他者の事例やワークにて体系的に学ぶことができる外部研修を利用することも有効な対策です。

➁明確なポリシーの策定

セクハラを禁止する明確な社内規定を策定し、違反した場合の処罰を定めましょう。この規定は、新入社員にも徹底して周知する必要があります。また社会情勢に応じてセクハラに該当する行為も変化する為、定期的な見直しを行いましょう。

③相談窓口の設置:

社内に信頼できる相談窓口を設け、被害者が安心して相談できる体制を整えます。この際、秘密保持と迅速な対応を最優先事項とします。また、ハラスメント被害者は被害を受けた場所である会社を信用できない場合もあるため、外部に相談窓口、外部カウンセラーなどを契約しておくことも大切です。


④定期的なモニタリング:

職場の環境を定期的にモニタリングし、セクハラが発生していないか確認しましょう。また、目に見えないセクハラに対応する為、アンケートといった被害者が告発しやすい媒体を用意することも大切です。問題が見つかった場合は、速やかに対処し、新たな被害者が出ない様に。防止策も講じましょう。


結論

セクシュアルハラスメントは、被害者だけでなく職場全体に悪影響を及ぼす重大な問題です。企業は、従業員の安全と尊厳を守るために、教育、明確なポリシーの策定、相談窓口の設置、そして定期的なモニタリングを含む包括的な対策を講じる必要があります。これらの対策を通じて、安全で健全な職場環境の維持に努めることが、すべての組織に求められる責任です。

そのため、社内教育・体制構築に加え、知識のアップデートのため定期的な外部研修、外部相談窓口等を取り入れながら、社員の意識向上に取組むことが大切ですね。

文責:善福大(ぜんぷく・ひろし) 中小企業診断士、奈良コンサルティング代表

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