見出し画像

『アインシュタインより愛を込めてAPOLLOCRISIS』感想

 どうもです。

 今回は、2021年9月24日にGLOVETYより発売された『アインシュタインより愛を込めて APOLLOCRISIS』の感想になります。
 元々の『アインシュタインより愛を込めて』が発売されたのが、昨年2020年10月30日。楽しめたんですが、不満点も残った作品だったので、新年の抱負でアペンド作ります!って情報があった時は本当に嬉しかったですね。そして、期待に応えてくれた素晴らしい作品でした。アペンドと云う位置付けではあるけれど、このAPOLLOCRISISまで含めて『アインシュタインより愛を込めて』という一つの作品だったと思います。

 再掲にはなりますが、『アインシュタインより愛を込めて』(※以後、無印)のOPムービーを貼っておきます。「新世界のα」は今でも本当に好き。

 今回の感想書くに当たって、色々考えたんですが、素直に無印版での感想につけ足していく感じが一番書きやすいなと。なので、『アインシュタインより愛を込めて』の感想にも目を通して頂けると幸いです。こちらは√毎にも感想書いてます。

 では、以下感想になります。(※ネタバレ普通に混じるので自己責任でお願いします)



1.ロミからの手紙

 まず、無印のラストでロミが周太に向けて送った手紙の復習から。と云うのも今作では、この手紙に対する周太なりの想いを中心に描かれていたと思うからです。

本当にこれでよかったんだろうかとか、ぐちぐちと考えている君が思い浮かびます
そんなものいくら考えても答えは出ないよって…
分かってはいても君は考え続けるのでしょう
いくら考えても解けない問題にしがみつきつづけて
それでも進むことを諦めない君のありかたが、私は好きです

 最後の2文が一番大事かなと。今作でもちょろっと出てきましたね。"進むことを諦めない君のありかたが、私は好きです"、ずっと周太の心の中でも反芻されていた筈です。
 ロミの行方がわからなくなって、どうしようもなくなってしまう事はロミにも解っていたんでしょう。だから、そんな時の為にこの文章を綴ったんだなと想うと、益々周太への愛情が窺えました。ある意味、迎えに来て。と受け取れなくもないのがズルいし(笑)

 ミコに巻き込まれ、真実を告白され、なんやかんやあった物語でしたが、そこで彼が考えた果てに取った行動とそれを裏付ける想いはずっとシンプルであったと、ロミの身体を受け止めた時に語られました。

「真実がどうであれ、最初から結論が出ている問題というものがある」
「俺はお前がどこから来てどこに行くとしても……」
「お前を愛しているという結論に、何も変わりは無い」

 真理や答えがやって来るのを待つ事を止め、進む事を決めた周太。ロミを愛している、と云うこの結論を自分だけの核として、どこまででもロミを探し続けました。何年掛かっても、身を粉にしても、確信している核を頼りにちゃんとロミと再会してみせたんだから、もう何も言う事無かったです。本当にラストのCGは胸が一杯になって、無印では味わえなかった満足感に浸る事ができました。ロミが周太を救った側面が無印では大きかった気がするので、それが逆転した今作はやっぱり主人公視点のプレイヤーからしても感動はひとしおでした。ロミへの想いが強ければ強いほど、ぶっ刺さるエンドだったと思います。

 このロミと周太の想いを軸に置いて、この作品から何を受け取れたのか無印の時の感想同様に、次の章で書いてみようと思います。



2.受け取ったメッセージ

 色々と長くなる前に一文でまとめると、

自分自身の中に、自分だけの絶対的な核を持って欲しい

 これに尽きるんじゃないかなと思いました。そう、周太のお父さん、浩太さんの言葉が元です。一応、引用しとくと以下の通り。

「俺の中に、ある核がある。それははなから俺だけのもので、誰にも理解できるものじゃない」
「あるいは家族となら、少しだけ共有できるような。そういう美学だ」
「それが傷つかない限り、いいんだ。そしてその核は、ちょっとやそっとでは傷つかない」
「だから俺は大丈夫なんだ」

 この核は勿論浩太さんだけでなく、周太もロミも、ミコも野上さんも持ち合わせていましたね。

 核は、別に目に見えるものでもなくて、抽象的ではあるんだけど、その名の通り間違いなく自分自身を構成する上で大事な中心部分として存在している。その人自身が此処に在ると確信しているから。核=心が一番しっくりくる訳ですが、人それぞれで断言できないorフワフワしたイメージを拭いたいから核と云う言葉にしたのかなとは思う。核融合反応とかにも掛けてたら面白いけど、流石に違うか(笑)

 1章で書いた様に、周太の核は「ロミを愛している」というものでした。
 これさえあれば、自分が自分たり得るというモノ。
 これさえあれば、迷わず前に進んでいけるというモノ。
 例えその後に真理を得たとしても、変わらないモノ。
 例え非日常的で非現実的な事を突き付けられたとしても、そんな不確かなモノよりずっと確かなモノ。
 例え全知全能の神や心ない人の優しさに噛み付かれたとしても、傷つかないモノ。

 それが、核――と呼ぶに相応しいモノなんだと思います。

 そして、この核を持ち合わせる為にも、持ち合わせていない人の為にも、周りに存在する多様な在り方に触れてみて欲しい。これが無印の方で描かれていたメッセージなんじゃないかと改めて思いました。

 ロミの言っていた、「街に灯りを灯してください。」って言うのはこれに通ずる処があると思っています。灯=核だとすると、こじ付けかもしれませんがそう思えてくるんですよね。また、ロミは無印の方で周太にこう言っていました。

「こんな世界消えてしまえば良い。それが叶わないなら、自分が消えてしまいたい」
「そんな私の世界に、君がはじめて、ささやかな光を灯してくれたんだ」
「だから私は、ここにいる」

 ”私の世界"は、ロミ自身の心の事だとすると、"ささやかな光を灯してくれたんだ"はしっくりくる。今作のロミ周りの設定からしても、この瞬間にロミは核を持つ事ができ、有村ロミにちゃんとなれたんだなと思いました。

 あと、"私の世界"をロミ自身の心の事と書きましたが、この作品上では、心を世界と称している気がするんですよね。デカルト的考え方が所々で見え隠れしている事からも。なので、それを踏まえてみると、「新世界のα」の歌詞の、

新世界のドア開け 光を手に入れて

とか、「アインシュタインより愛を込めて」の歌詞の、

今すぐ君の新世界呼び覚ませ
世界は君に恋している

とかは凄いしっくりくるんですよね。こないですか…?(笑)

 人の頭の中や気持ちは不確かな世界かもしれない。けれど、それでも知りたい、触れたい、守りたいと思った自分の世界だけは確信している。
 なら、その世界を頼りにその人の世界に触れてみて欲しい。進む事を諦めないで欲しい。そしてら、まだ見ぬ新世界へにだって行けるからと…。
 そうやって蠟燭の火を分け合う様に、世界に灯が増えていったら、このくそったれな現実世界でも素敵だなって思える世界が身の回り等からできてくるからと…。家族だったり、科学特捜部だったり…。
 だから、「街に灯りを灯してください。」なのかなって。そんな風に考えたら、この章の冒頭にも書いた、

自分自身の中に、自分だけの絶対的な核を持って欲しい

 がやっぱり今作からのメッセージとても相応しいのかなって思います。

 自分の考えもかなり混ざりましたが、少しでも何かしら貴方のヒントになれていたら幸いです。



3.雑感

 正直に書くと、細かい処で気になりはしたけど、最後の再会エンドで全て持っていかれて大満足。ですね。

 細かい処はどうしても無印の時と同じ印象で、SF周りの設定が弱いと云うか、「実はこうでした」っていう結果だけを提示される場面が多く、その詳細や経緯が気になる事があった。この辺りを気にしなくて済むような安定した土台ができると物語としてもっと強度が上がるんじゃないかなぁと。そしたら、感動的な場面でもそれに集中して、感情移入とか自然と捗るなぁとは思いました。でも、自分が気に過ぎな処も勿論あると思うし、新島さんの文章は今のままでも十分好きですので。

 メインの話に入る前の選択肢パートはどれも面白かったけど、特に猛ちゃんのが良かった。エロゲ作成エピソードもっとじっくり見ていたいくらいには。エロゲの話してる時は猛ちゃんまともなんですよね、普段がおかしいからそう見えるだけのかもしれないが(笑) オーディションは皆素晴らしかったです、「パンツみたでしょう」の流れが一番笑ったかもしれん。あと、ロミちゃんクソ棒読みwww

 後半については、ミコやロミとの再会については文句なしに最高でした。無印からブレてはいなかった彼女の望みの具体的な正体も明かされたし、その望みを叶えるまでの流れも綺麗にまとまっていた。郷田さんの話も読み応えがあって良かったです。ΩはともかくΣについては、無印からの愛着もあったから少し寂しさ残る別れでしたが、マスターとの巡り合わせを祈るしかないよな…と今ではあれで良かったんだと思っています。

 今作から新登場のキャラについては、ミコが意外と好きでした。ロミと周太の事を信頼しているし。ちゃんと謝れる子だし。てか、立ち絵が良すぎんか。あの見下されてる感じのアングルが素敵。彼女とも最後は再会できて嬉しかったです。
 野上さんは立ち絵用意して貰えて良かったね(笑) ビーチバレーの時が謎すぎて面白かったです。彼の後悔や贖罪と云う言葉なんかで済ませてはいけないくらいに膨れ上がった核がとても魅力的で存在感ありました。


 雑感としては、こんな感じです。
一番描いて欲しかったロミにちゃんと尺を取ってくれていたので、大変満足しています。他のヒロインに大して割けないのも無理もないと云うか、寧ろ科学特捜部の日常パート用意してくれてありがとうと云うお気持ち。坂下さん元気そうで何よりですよ。あと、予約特典ドラマCDの後日談もむっちゃ良かったです。



4.さいごに

 まとめになります。

 まずはやはり物語の続きを描いてくれた事に感謝しかありません。ロミの笑顔をもう一度見る事ができて本当に良かったです。そして、今作でも温かいメッセージを残してくださり、ありがとうございました。無印でも感じたんですが、いざ言葉にしようとすると難解で伝わりづらいメッセージを綴ってくださったなと勝手ながら感じております。周太達の物語を通してだからこそ、伝わってくるものが確かにありました。

 無印に引き続き、声優さんの演技も素晴らしかったし、演出周りでは、きみしま青先生のイラストや、水月陵さんの音楽もやっぱむっちゃ良くって…ホント大好きです。新曲だと、「the miracle there」と「APOLLOCRISIS」が特に。サントラ待望だったので沢山聴きます…。

 改めて制作に関わった全ての人に感謝しています。無印の時からどうしようもなく好きな作品でしたが、更に好きになりました。本当にありがとうございました。次回作も楽しみにしております。



©GLOVETY

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?