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『Monkeys!¡ モンキーズ』(HARUKAZE)感想

 どうもです。

 今回は、2021年10月29日にHARUKAZEより発売された『Monkeys!¡ モンキーズ』の感想になります。今年"ノラとと"こと、『ノラと皇女と野良猫ハート』をプレイした自分ですが、はとさんが描く物語にすっかりハマってしまい、今作も発売を楽しみにしておりました。


 主題歌「明日を漁れ」は初めはパッとしなくて、ムービーの方に持っていかれ気味だったんですが、作中で何度も流れたので聴く回数に比例して好きになっていました。謎の中毒性…あると思います(笑) 
 しかしムービー改めて見てもいいですね、カラーリングの華やかさと"何か起こるぞ!"感が好きです。このムービーと体験版を以て買いを確信したので、購入迷ってる方は体験版やってから決めて欲しいなと。

 では早速ですが、登場する4ヒロインを攻略した順に感想書いていきます。最後に少し作品通してのメッセージ性みたいなのも書けたらと思っています。(こっからネタバレ全開なんで自己責任でお願いします。)



1.硝子ノ宮 硝子

 硝子の物語はかなり真っ直ぐな分かり易さで、恋愛模様もよく描かれてて良かったです。猿吉が自転車で迎えに来てくれたシーンが一番好きです。怖いもの見たさ(ではない好きだから)の回収と、硝子の「もう、なにもいりません!」がむっちゃ良かった。自分の中に在るモノと、猿吉に身を任せてる感じが。後半は惚気まくって幸せのお裾分けをして貰いましたわ。カラスの"イチャぶっこいてる"が的確(笑)

 硝子は自分のあるべき姿と、ありたい姿が、"自分自身では"わからなくなっていたのかなと。周りからどう見られているかを考え、その期待に見合う自分でいなければならないと。その中で色々行動してきた訳だけど妹達への愛は本物で、本当に好きでしたい事であって、でもそれに確信めいたモノがないから同時にそれ以外の自分がしたい事も自信を持ってできない。そんな時に、ジュリア…猿吉と出逢って"心が動く"経験を沢山していく。これが確信になっていったんだと思います。

 初めての居場所で手に入れた自由はあったけれど、上手く行使できなかった彼女を連れだしてあげた猿吉。彼女自身は確信するまで時間が掛かったけれど、その間もずっと一貫した生き方をしてはいたんですよね。猿吉は、肩書や見た目で着飾らない、その等身大の姿と云うか彼女の中身を見てくれていて。そして、それは彼だけでなく、学園の皆がそう見ているよ、と伝えてあげる処がとても素敵でした。

 付き合ってからは学園の皆のお姉ちゃんとしての自分と、猿吉の彼女としての自分、両方とも大事で大好きだからこそ、どっちつかずになって弱っていく姿は如何にも不器用って感じがして良かったです。そんな処で、うきママから「一緒にいてくれて良かった」と声を掛けて貰い迷いが無くなった彼女。猿吉は彼氏でもあるし自分の妹でもあると考えを改め、嘗ての堂々とした自分をみるみる取り戻していく姿は、それだけ彼女がこれまでに積み重ねきた努力を証明している様でした。鏡を見て自分の今の姿勢を見つめ直し、わからない、できていない処を直す努力を怠らない処が好きです。皆もお互い様だと協力してくれて、共学化の事も罪悪感も一緒に背負って行こうってね。硝子が言っていた以下の台詞は今作通してのメッセージに繋がる処があったので、ここで書き記しておこうと思います。"同時"は"一緒"なんよ。

「2つのことを同時に想うことが、人間には出来るのです」



2.霧灯 ユキ

 ユキの物語は、山場が多かったからか少し慌ただしかった印象。でも、楽しめたは楽しめました。後半ユキママが本格的に絡んできてからの話が好きです。やっぱ親子なんだなって感じる事ができたのと、猿吉もユキも譲らない気持ちの強さが良かった。「ここは押す」響きました。

 ユキは「自分がない」と言っていたけれど、多分ちょっと違くて自分の中に"自分と呼べるモノ"が在るのに、それがどんな形なのかわからなかったのかなと。自分の態度や振る舞いの源泉が解らない…硝子と似てる様で少し違った感じでした。演じる事が得意で、色んな人からの要望にも耳を傾けて。受け皿の広さは彼女の優しさそのものでしたが、それ故に受け止めてばかりだった彼女。満足してくれている人はいるけれど、自分で誰かの心に"自分と呼べるモノ"を本当に伝えられているのか、そこに実感が伴ってなかった。相手が満足してくれれば、自分が満足していなくてもそれでいいと、諦めの様にも感じ取れる節はありました。

 猿吉と出逢い、自分の笑顔が作り物ではなく、心の底からの笑顔だと、その違いもわかるようになったと言って貰えた。心の底で何かが反応した彼女。こっから少しずつ笑顔も増えて、自分の源泉から”好き”も表現して伝えられる様にもなりました。気持ちがオープンになってからも、男らしくリードしてくれる感じは健在なのが良かったですね。だからこそ、女の子な一面が垣間見えた時とのギャップが堪らんのよ(笑) 

 面倒見も良く、猿吉を護ると決めた彼女の精一杯な姿勢は、家庭事情(母との関係)からかなり裏付けされてて良かったと思います。彼女にとって、母にとって、一緒にいれる家族の関係はお互いにその1人でかけがえのない存在だった。猿吉も家族になるのだから、無理はさせまいとするのもわかります。心配性なのは母譲りだったのも。男は無理しなきゃいけない時がある、けどそれができるのはユキがいるからでもある。うきちゃんの言葉でしたが、猿吉の事をわかってる存在として納得のいく言葉だったと思います。無理できるのは誰かのお蔭であり、その無理が誰かの為になるのなら尚更、支えてくれた人にも感謝しないといけませんね、本当に。ユキママ元気になってくれて良かったです。笑ってる時が一番可愛いのも母譲りでした。ユキママの台詞でメッセージ性のヒントになるのがあるので、最後に記しておきます。男と女…そこに一線を引く必要はないんです。

「男と女。どちらかがしないといけないなんて、おかしいわ」



3.メバチ

 メバチの物語は、まさかの展開でラストなんかは泣いてしまって…4人の中でも一番好きな話でした。メバチという存在を決定づけるモノを漏れなく描いてくれていたので、アイが出てきても別人だと云う確信はあったのですが、まさか母だったとは…CGと声もズルいんよ…。あとはバイトのフードキャッツやってるメバチも好きなんですよね。いつも溌溂として可愛らしく、繊細な感性と素敵な笑顔を持ってる子だったなと。

 メバチは自分の中にいるもう一人の存在に気付いてはいたけれど、それを受け入れきれず(別れたくなく)真実から目を背けていたのかなと。だから、硝子ノ宮での火災の真実についても目を背けた。伝えようと思えば伝えられたはずなのに。申し訳なさと気まずさで一杯で、何が正しくて、何が自分で、その辺りがもう曖昧になっていたんだと思います。でも、彼女はちゃんとメバチという存在で生きていた。"~であります!"っていう口癖もそうだし、得意な事もあって、好きなモノもあった。何より皆との信頼関係を築けていたんです。もう一人じゃない。現に硝子が自転車で追っかけてきてくれた。あそこもかなり涙腺にきましたね。また、あの時の考えも"メバチの"考えに他ならない訳ですし、硝子が気に掛けてのは"メバチが"元気かどうかですから。皆がメバチを探してくれたシーンもありましたね。

 メバチとアイの関係については、簡潔に言えば親離れできなかったメバチと、子離れできなかったアイと云う関係だったのかなと。母であるアイは難破した際に我が子を護り切る為に意識として彼女の中に存在していた訳ですが、その後もずっと心配だった。また、メバチは純粋に大好きな母が亡くなった事実を受け入れられず成仏させたくなかった。真っ当な親子です。そして、お別れの決心がついたメバチですが、あそこも試験合格と皆の迎い入れ、猿吉の言葉と涙。全てが彼女の背中を押してくれていた感じ、とても良かったです。

 母との会話、強く生きていくと言葉にする彼女の姿も逞しく優しくて…かなり泣いてしまった。母と離れるのではなく、背負って生きていく。日付変更線を跨いで一つになっても一緒になる。だって、世界は丸くできているんですから。猿吉の言葉も沁みてくるものです。

「想って、忘れずに、生きることなんだ」



4.月島 カラス

 カラスの物語はロックされていただけあって、他3人の物語を踏まえた共学化の続きでしたし、最後も作品としてまとめ上げてくれたなと。急展開&時系列をいじってて戸惑いはあったけど、満足度で言えば一番高かった。猿吉の話を踏まえてのカラスの話でブーメランっぽくなってたのも良かったですね。あと、遊園地デートの全てが好き。もうずっと見てられる。息ピッタリでお似合いすぎなんよ。

 まずビッグとの決闘を最後に喧嘩はしないという約束。これの正体は、猿吉の(産みの)母親との約束の様なモノだった訳で。結局、彼の中には、

仲間を絶対に見捨てない

これが根幹にある。ビッグを見捨てなかったのも、これまでのヒロイン3人を見捨てなかったのも、そしてカラスを見捨てなかったのも結局これ。もうこれ以上は見捨てられたくないから、自分は見捨てない様にする。猿吉の一番カッコイイとこだと思います。ただ、見捨てられたって云うのは思い込みで真実はそうではなかった。目を背け続けていたけれど、見捨てなかった仲間達の応援もあり、母と向き合う事ができたのは素直に感動的でした。キャッチボールしている様に見えて会話は一方的で、母からの応答が無いのがかなり涙腺に来ましたね…。

 そして、猿吉の根幹にある上記の考えは、父親にも通じ、カラスにも通じていく。見捨てない約束を護ったはずが、見捨てられた様な展開になってしまった(猿吉が倒れた)のは皮肉めいてはいるんですが、カラスが猿吉を見捨てないっていう展開にはなっている。カラスを主人公の様に据えるにはこれで良かったと思います。

 彼女は猿吉と同じく仲間を大事にする子でした。一度その仲間を奪われた経験もあり、もう二度と仲間を…居場所を失いたくなかった彼女が一線を越えてでも復讐を果たそうとする姿は筋は通っていたと思います。なりたかった自分の夢を託したのもありますし。カラスはハッキリしてる性格故か、関係を築くのはきっと得意ではないんだけれど、だからこそ関係が築けた時は相手を信用し一緒にいる時間を凄く大切にする子だと思います。反動とも言える今回の行動からもその想う強さが窺えました。何にも臆さない精神で責任感も行動力も人一倍あって頼もしい子だなとしばしば思いました。そんな彼女に寄り添うのは彼女の仲間達。一線を越えてしまった彼女の為にこちらも一線を跨いで行く。一緒にいてあげる為に一緒にいた頃の硝子ノ宮ウォークで迎えに行く姿は大団円って感じで気に入っています

 因みに、カラスが病室に駆け込むシーンと「一回死んでる」の解釈については、プロローグ前の話と考えるのが妥当かなと思っています。前日譚。これまでずっと"猿吉君"と呼んでるのに対して、あのシーンでは"猿吉"って呼んでるので、時系列が違うのも納得できます(緊迫状態で呼び捨てにしたって考えも無くはないですが…)。ただ、正直深く考えんでもここは良いのかなって気もします(笑)

 あと個人的に病室のシーンで猿吉の意識が浮遊してるのが発覚した瞬間、ギャグっぽくなるくだり大好きなんですよね。あのシリアスでも我流のノリを貫く姿勢が堪らないです。帰ってきた感、実家の様な安心感が凄い。猿との合体も凄く"らしい"です。



5.受け取ったメッセージ

 どのヒロインの話でも共通する、作品を通して自分が一番感じた事を書いていきます。簡潔にまとめると、以下の通り。

一線を跨いで、仲良くなろう

 こんな辺りかなと思います。色々要素はあって、それら全てを内包できるのがこれで、後はカラス√での終盤の猿吉が線を引くシーンが決め手となりました。

 「一線を跨いで」の、"一線"は色々まとめてこれにしました。基本的には2つの物を区別したり隔てたりしてるモノですね。男と女…親と子なんかは分かり易いと思います。続いて、今日と明日。これはメバチ√での日付変更線がヒントになりました。あとは、生と死。この世とあの世を分ける境目にあるとされる、三途川という一線がありますね。そして、カラス√でちょっと出た地球と月。これはカーマン・ラインと呼ばれる、このラインを超えた先が宇宙空間でこの高度以下は地球の大気圏と定義しているモノがあります。あとはオマケで、鳥から"一"を引くと烏になる。この"一"も一線に含んでもいいかもしれません。

 これら"一線"を引かれたとしても、私達は跨って迎えに行かなければならない。片道ではなく、往復で。そうして「仲良くなろう」。これはもうズバリそのままで、一線を跨いで出逢ったら一緒にいようって事です。硝子も言っていましたね。

「仲良くするとは、ただ一緒にいること。ただただともに生きること」

 今作では2人乗りに、ユニット、二重人格、観覧車等々。一緒にいる描写が数多くあった様に思います。完全に分かり合ってしまったら終わってしまう様な気がするから、分かり合う必要はなく、ただただ一緒にいればいい。ただただ明日を漁れ(生きれ)ばいい。さすれば、仲良くなった先に面白いや幸せがある。そんなメッセージだったと考えています。

 こじつけもありますが、少しでも何かしらヒントになれていたら幸いです。これから硝子ノ宮ウォークで、流行に左右されず、姿勢よく、礼節とマナーを持って生きていきたいなと思いますね(笑)



6.さいごに

 まとめになります。

 正直に言うと、物語そのものには満足しているけど、尺的にはもっと欲しかった。って感じです。流石にフルプライスで10時間ちょいは物足りなさを感じざるを得なかった。メインの物語には関係ない話を削ぎ落し、分かり易い語りを極力減らした結果がこうなったのかなとも感じています。個人的には話に関係ない、しょーもない日常会話とかでいいからもっと見ていたかった。『ノラとと』も今作も数分に一回は笑ってしまうギャグ…と云うか勢いとかノリみたいなのが大好きで、それは一種の没入感でもあるんですよね。時間を忘れている感覚≒没入感だと思っているので。なので、その物足りなさをプレイ終了後に感じてしまった点は良くなかったかなと。内容が良かっただけに、純粋にもっと作品に浸っていたかった…これに尽きます。

 キャラについては特に文句ないですね、声優さん達の演技もむっちゃ良かったです。この素晴らしい声があるから、会話が…物語が楽しいものになるので本当に良かったです…。強いて言えばサブが若干印象薄かったかなぐらい。尺を増やしてもっと掘り下げかバリエーションあったら面白かったかもです。シスターの空気読めない、気ままな感じとか最高に好きだったので、もっと見たかった(笑)

 イラストはまず好みで言えば、普通です(笑) 立ち絵とHシーンとのギャップがやっぱ違和感レベルで凄えな…とは感じましたが、それ以外は概ね良かったかと。あとアメコミ風?の漫画CGは普通に気に入っています。キャラの活き活きした感じ、ノベルゲームっぽさが加速するギミックとして良かったと思います。

 音楽は雰囲気にも合っていましたし、好きなのも多々ありました。「朝焼け」「雨上がり」「舞踏」この辺りが特に好きです。あとはボーカル曲の「明日を漁れ」冒頭にも書きましたが、これがどんどん好きになってしまった。歌詞もメロディも。感動的なナイスタイミングで何度も流れて聴いていく内に気付いたらハマってましたね、スルメ曲。

 とゆーことで、感想は以上になります。
『ノラとと』ぶりにはとさんが描いた物語に触れたんですが、やっぱ堪らなく好きだなと思えました。プレイ中の楽しさで感じさせる没入感は唯一無二だと思います。凄く元気を貰えた幸せな時間でした。改めて制作に関わった皆さん、本当にありがとうございました。今後ともHARUKAZEさんは応援しておりますし、はとさんの次回作も楽しみにしております。

 ではまた!




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