その3:どうなる?承継のための負債返済

叔母のサプリの会社は、数年前から事業承継先を探し、
その間、事業組織を少しずつ畳んでいきました。
最盛期で50名ほどいた社員は、
僕が相談を受け始めた頃には
事務の2名だけになっており、
残るは社長の叔母と、社外取締役だけ。
事務のお二人も、僕が積極的に絡む頃には、
すでに退職されていました。
つまり、もう叔母一人だけという環境です。
辞められた社員の持ち株は全て買い取り、
退職金もしっかり用意していました。

社員数縮小にともない、
あらたなる顧客獲得の営業活動は停止し、
これまでのお客様への販売だけになっていましたので、
おのずと売上はどんどん細くなっていました。
しまいには、受注から配送まで、
叔母がなんとかひとりで対応する、
それぐらいのレベルにまで落ち込んでいました。
(でも、それは大変なので、
途中、僕の妻が手伝うようになりました)

だから、当然のごとく、
赤字がどんどん積みあがっている状況です。
それでも、叔母の私有地を売れば、
有利子負債は、全てチャラになる、
関わる誰もが、そう信じていいました。

しかし、そこにコロナがやってきました。

土地の価格は下がり、
当初想定していた価格になりそうにない、
そんな状況になってしまったのです。

むむ、ということは、
負債の全額返済は無理ということ?
えっ、いくらショート?

そうなってはじめて、部外者である僕が、
叔母の会社の財務状況を
深く把握することになったのです。
さすがに、親しい友人に、
負債を背負わせるわけにはいきません。

有利子負債の残額の他にも、
短期借入金として計上されている
無利子負債がかなりありました。
でもそれは、
叔母が受け取っていない給与や立て替え分なので、
叔母が暮らしに困りさえしなければ放棄してもらおう、
と思ったのですが、
その短期借入金のうちのかなりのお金が、
ある方からの善意でお借りしていたものでした。
と、いうことは、それも返さなければならないのか、と。

かつ、毎月の顧問料、利払い、リース代もかなりの金額。
商品販売で入るお金よりもずっと大きなお金が、
毎月毎月出ていく状況。
リースなんて、社員がそこそこいた時代の遺物で、
必要もない台数のビジネスフォン、巨大な複合機など、
同金額のまま新型に借り換えていたので、
月々の支払いは変わらなくても、
残額が結構あったりして。
事業を畳むことを早くから想定していたら、
リースの更新なんかすべきじゃなかったのに。

もう、あたまがクラクラしそう。
呼吸しているだけで、
大量出血が止まらない状況だったのです。

で、会社の口座に残っているキャッシュは?
えっ、製造に回す資金が...

この状況を叔母はどうするつもりだったんだろう、
と聞いてみると、
自宅を売却して、すべてを清算するつもりでいたのです。
夫が興した事業を
しかるべき次世代の方に残していけるのであれば、
引き継ぐ方に負担のないよう、
自分の資産を売ればいい、と。
それまでも自身の資産を切り売りして、
会社の窮地を乗り越え、
社員に退職金を払い、
自分の給料はゼロで努力してきた結果、
もう切り売りする資産が自宅しかなく、
それを売ろうというのです。

いやいやいや、それはやっちゃだめだ!
夫も子もない、身寄りのない高齢の女性が、
自宅を売ることでご近所付き合いまで失うなんて、
ありえない!
TEDで話題になったけど、
幸せに長生きする秘訣は、社会性だ。
自宅を失うということは、
身近な社会をも失うということ。
そんな状況にさせてしまうことは、絶対に避けなきゃ。
自宅も、決して邸宅ではありません。
様々な残債を清算したら、いくばくかしか残らず、
豊かな後世を過ごすには、あまりにも少なすぎます。

では、どうするか?
土地の価格が戻るのを待つ?
いやいや、それって、いつになるんだい?
そもそも、戻るのかい?
待っている間にも、大量出血は続きます。

そうなると、叔母の自宅売却しかないのか?

次回は、この状況打開の方策について書こうと思います。

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