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味わってみて、はじめて味がわかる。

見慣れないどんぐりのペンダント。
してたんですよね。
レッスンへ来てくださった方。

もう2週間ほど前の話になりますが
振り返りながら綴らせてください。


ひと目見て、
あ、どんぐりだ。可愛いなぁーって思ったけれど
特に触れずレッスンを始めました。

その方はご高齢で
ただわたしに会えるだけでいい、と言って
おしゃべりを楽しんで
歌わずに帰ることが多かった。

数年前にご主人を亡くされていて。
塞ぎがちになっていたところを
既にいらしてくれていた生徒さんが
その方へうちのレッスンを
紹介してくださったのでした。


家にずっといるよりも
外に出て、先生のところへ
行ったらきっといいから、と。

普通のボイトレじゃないから
先生に会うだけでもいいから!と
熱くお誘い続けてくださっていたそうで…。

嬉しいですよね。そんなの。
だから、顔見せるだけでも来て!って
言ってあるんです。

元気なくても。やる気なくても。
ただ、顔見せてほしい、って。

ほんとに元気なくて
ただ、おしゃべりするだけの日が続いた。

病院でこんなことがあったとか
昨日はこんなテレビを見たよ、とか
そんなお話を聴くことが
パターンとしてできていた。

もしくは、先生の歌聴かせて…と
リクエストをいただいて
わたしが何かを歌う、という。

その方ご自身、歌は好きだけど
歌うとご主人の思い出が浮かんできてしまい
辛すぎて歌いたくない、って。

こういう方、この方に限らず
意外といらっしゃいます。


それでね、その方。
◇さん、としますね。

ずっと◇さんは、そんな調子で。

歌うことは二の次で
通ってくださっていたんです。

だけど、ある時
何だか、よくわからないけど
んんー!!と
わたしから湧いてくるものがあって。

◇さんが好きだという歌を
歌って差し上げたくなったんです。
歌をプレゼントしたくなった。

だから、
◇さんの好きだと言っていた
ある歌をプレゼントしてみたんです。

すると、◇さん。
鳥肌立ったー!って
のけぞって大声で喜んでくれて。

変わったんです。その日から。
すごくハツラツとして、
めちゃくちゃ大きい声でしゃべるようになった。

その日から歌うようになって。
元気な顔を見せてくれるように
なってくれました。

歌の力って、本当にすごい。
わたしもめちゃくちゃ感動した。

そんなことがあり
◇さんを紹介してくださった方も

最近、◇さん元気になって…よかった!と
一緒に喜んでくれていたんです。

そして、先日。 

ついに、その方が
「気持ちを込めて歌いたい」と
仰ったんです。 

これまでの自分の歌は一本調子だった、と。
気づいたんだ、と言った。

わたしは、  

来た!!!!!!!
来た来た来た来た来た来た来た!!!!!
と、見えない
ガッツポーズを繰り出していた。

おっしゃあああああ!!!!
きたぁあああああ!!!!!
うたごころが疼いてきている!!!!


間違えないように歌おうとすると
一本調子になるんです。

一本調子の歌だって素敵なんだけどね
◇さん、一本調子の歌を歌いたくて
歌っていないのなら
それは思い通りではないから
楽しくないですよね、と。

間違えないように歌う歌ではなく
気持ちを込めて…

間違ったって構わないんだから。
思い通り歌ってみましょう、と伝えた。

思い通りに歌っても
思い通りに歌えないかもしれないけど
そこに拘らないで

想いを込めて、今の自分ができる限りの
気持ちを込めて一緒に歌ってみましょう、と
伝わるように伝えて

◇さんが納得してくださってから
歌い始めたその声…

声。別人。びっくりした。

歌い終わって、目を丸くして
「鳥肌!!!!」と前のめりになって
気持ちを伝えてくれた。
すごい。すごかった。

また、その反応も可愛くて。
もう少女になっちゃっていた。
本当に可愛かった。

多くを語らずして
互いに響き合うものがあって
深く深く頷き合っていた。

わたしが話し始めても
全然聴こえてい無い様子…。
衝撃だったんでしょうね自分自身に。


その時、わたしはやっと伝えた。
「その、どんぐりのペンダント可愛いですね!」と。

すると、「骨!」と答えてくれた。

意味を把握できず
聞き返したけど、やはり骨、と言う。

意味がわからなかった。

すると、それなどんぐりではなく
シルバーでできたカプセルに
チェーンが通してあって

そのカプセルには骨、
ご遺灰が入っている、ということだった。
ご主人の。

いつも身につけているんだけどさ
今日は服から飛び出してたみたいね、と言った。

なんか、、すごいなぁって。

これまで感じることを避けてきた
ご主人の好きな歌

気持ちを込めて歌いたい、と
想えたこと、
そしてわたしに伝えてくれたこと。

そして、想いを込めて
ご主人のことを感じて歌えている。

感じたくなかったものに触れて、感じて 
きっと痛みもあったでしょう。

そして、それだけではない
内側から湧き上がるものがあって
鳥肌になって放たれていった。
全身で感じていた。

そんな、骨を持ち歩くと言うか
肌身離さずにいる程に
一緒にいたい方を一途に想うこと。

そんなことなかなか
誰にでもできることじゃないです。

うたごころがバァンと開花するのに合わせて
その、愛している人の骨の眠る
どんぐりみたいなペンダントが
踊り出していたこと。

なんなんでしょう。本当に。不思議。


わたしはわたしで所在不明になっていた
ものすごく思い入れのある
クリオネのペンダントが見つかり
その日、身につけていた。

お互いに、普段ペンダントなんか
見せるようなオシャレをしないのに。

本当になんなんでしょうね、
こういう不思議な事が重なるのって。

わたしは、こういうことが起きることが
当然というか
本来の必然な流れで、
その流れに乗れているサインだと捉えている。

本当にこの頃、不思議なことばかり。
そして、その不思議がだいすき。

避けずに、いろいろ
なんでも味わいたい、感じたいとして
生きていると
不思議なことばっかりだ毎日。

触れたくない、味わいたくないようなものも
一見たくさんあるけれど
ちゃんと味わってみると
自分と一体になってくれて
一部になってくれて生きられるのかな。

人生、味わいたいです。しっかり。

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