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イーサリアムのメインネットでのThe Mergeが9月19日に行われるとの噂について

イーサリアムは度々PoS化を延期してきました。PoS化は「The Merge」という名称が付けられており、The Mergeのプロジェクトは着々と進行しています。

そして、人づてながら、2022年9月19日にThe Mergeが行われるらしい、という話を聞き、ソースを探してきましたので、みなさんがソースを見られるようにリンクをまとめます。

噂の出どころはMerge Community Call #5

2022-07-15にMerge Community Callの第5回が行われました。
会議のアジェンダは下記に公開されています。

しかしながら、アジェンダにリンクがないため、会議内容の動画を見つけることが出来ていませんでした。そのため、何が話されたのか気になっていましたが、議事録が公開されたので、誰でも読めるようになりました。

この議事録はオフィシャルなものではなく、イーサリアムの開発者のBen Edgingtonの書いたメモです。

噂の出どころになった発言部分のメモを下記に引用します。

[Tim] Suggested time-line for discussion:
Goerli/Prater client releases 27th or 28th of July.
Announce 28th/29th.
Prater Bellatrix on the 8th of August
Goerli Merge on the 11th.
ACD 18th August plan mainnet Merge:
Bellatrix early september;
Merge two weeks later (week of Sept 19th).

https://hackmd.io/@benjaminion/BkxQTpqpi9

議論のために、The Mergeの実行タイムラインとして、Timは9月19日にメインネットへのマージを提案した、という旨が記載されています。
これが噂の出どころであり、一次ソースでしょう。

なお、動画もYouTube上で公開されているため、気になる方は見てみて下さい。

イーサリアムのThe Mergeの道のり

イーサリアムのPoS化に向けた実装はほぼ完了しており、The Mergeは着々と実行されました。まずはじめはThe Mergeのテストのために用意されたテストネットでテストされました。

その後、パブリックテストネットと言われる種類の3つのテストネットを順次PoSに移行させていっています。

  1. 最初のテストネット、Ropsten。2022年6月8日にPoS化(完了)

  2. 2個めのテストネット、Sepolia。2022年7月7日にPoS化(完了)

  3. 最後のテストネット、Goerli。2022年8月11日にPoS化(予定)

残っているテストネットはGoerliだけであり、そのGoerliでのThe Mergeの実行も視野に入ってきました。The Mergeは近い、というのは確かです。

本当に9月19日なのか?

これについては公式発表では有りません。9月19日になるかどうかは、現時点では不明です。

あくまで2022年7月14日の開発者による会議にてTimが提案したスケジュールであり、計画中のタイムラインであり、公式な決定ではないことに注意して下さい。公式な発表を待ちましょう。

Twitter上でこれは公式発表じゃないけど楽しみだね!みたいなことをイーサリアム開発者のsuperphiz.ethがツイートしました。

これに対しTimは次のように述べました。(リプライをしました)

TimはGoerli(テストネットの名称)はチェダーチーズ(パルメザンチーズではない)、メインネットはブッラータ(フレッシュチーズ)といった自身の発言のスクリーンショットをリプライをしています。

つまるところ、まだ正式発表ではありません。
あくまで現時点で計画されたものです。

Timは今までにも御存知の通り何回も「いつMergeしたいよね」という話はしてきましたがまだされていないという事実を我々は知っています。そのため、これが願望で終わる可能性が十二分にあるということを私達は知っているでしょう。

Coinpostにも「9月を目標」という記事が投稿されました。ソースは私のこの記事と全く同一です。

あくまで「目標」である、ということを念頭に置きましょう。
「決定された」「9月にマージが実行される」という発言はデマになってしまうので気をつけましょう。

The Mergeまでのチェックリスト・TODOをおさらい

2022年7月6日時点での最新のチェックリストを私は確認しました。
メインネットでのThe Mergeの実行にあたってのTODOリストは下記になります。

https://github.com/ethereum/pm/blob/master/Merge/mainnet-readiness.md

残っているもの

  • エグゼキューションレイヤーの単体テストの開発

  • 結合テストの開発

  • パブリックテストネット、Goerliでのテスト

  • ストレステスト

  • マージ後のリソースの枯渇に対する考慮・分析

  • その他、いくつか

特にまずそうなもの、残ってるとやばいもの

「ストレステスト」「マージ後のリソースの枯渇に対する考慮・分析」この2つはクリアされないとメインネットにマージをしてはいけません。

イーサリアムのメインネットはWeb3、DeFiなどの主幹ネットワークであり、止まることは絶対に許されません。最も多くの処理をしている、Web3の中心地点はイーサリアムのメインネットです。そこに集まる負荷は莫大です。

BCGやDeFiではイーサリアムが最初に使われ、ただし、需要が高くガス代も高いことから、PoSでありBinanceが運営するBinance Chain(バイナンススマートチェーン、Binance Smart Chain、BNB Chain、BNBチェーン。略称: BSC)、イーサリアムのレイヤー2ソリューションであるPolygon Network(MATIC)などが有名です。

BSCは2021年、BCG(ブロックチェーンゲーム)のトラフィックがネットワークの殆どの処理を占め、ガス代が高騰したり、トランザクションが詰まるということが頻発しました。幸い、いや、災いですが、その代表的なBCGやいくつかのその他のBCGのトークン価格が暴落し、ゲームが崩壊したため、今は問題なくBSCは機能していますが、多くのトラフィックをBSCのPoSのバリデーターは処理しきれなかったという実績を直近に持ちます。

Polygon NetworkもPoSであり、多くのDeFiで利用されています。多くの代表的なコインがPolygon上にWrappedTokenが作られ、イーサリアムの送金(wETH)や、様々な送金、取引で用いられています。
DeFiで利用される分には耐えうりますが、多くのNFT、コントラクト、取引が発生するBCGがチェーン上で展開されると一気にネットワークの処理能力が枯渇します。

以下の「ひまわり農場」ゲームは2021年にPolygon Networkを破壊したBCGです。MATICネットワーク上で処理される殆どのトランザクションがひまわりの種(厳密にはひまわりではなくラディッシュだった気がします)を植えることと、収穫することに用いられ、送金手数料はイーサリアムのガス代並の高騰を引き起こしました。

Web3の根幹をなすイーサリアムにとって、処理能力が十分であることは非常に重要です。PoWからPoSへ移行するにあたって、現状処理している内容が十分処理可能かどうかは十分に検証する必要があります。

多くの開発プロジェクトにおいて、この負荷試験・ストレステストは最終のフェーズで行われ、ここで問題が見つかった場合、アプリケーションの高速化のための追加開発や、インフラストラクチャの改善を要します。

PoSのバリデーターになるには比較的処理能力の高いコンピューターが必要です。BNB Chainの場合は下記のスペックが求められています。

高速なドライブに2TB以上の空き容量
12コア以上のCPUと48GB以上のメモリ
例: AWSでいうところのm5zn.3xlargeなど

https://github.com/bnb-chain/docs-site/blob/master/docs/smart-chain/validator/guideline.md

AWSやGCPですぐに立てられるスペックではありますが、低いスペックでは有りません。世界中でこの規模以上のマシンが沢山の資金をステーキングし、トランザクションをバリデーションしていくことがPoSでは求められます。

イーサリアムのPoSにおけるバリデーターに要求される性能はより低く、水晶はしないがRaspberryPiでも動く、と書かれています。

ないとは思いますが、イーサリアムのPoSのバリデーターの大半が貧弱なコンピューターを利用していた場合、十分なパフォーマンスがバリデーターのノードが出せず、ネットワーク全体に影響をもたらす可能性もあります。

BNB Chainのバリデーターは当初要求されていたスペックは16GBメモリ、500GBのSSDでした。今はその3倍のメモリ、4倍のストレージが必要です。
イーサリアムのPoSのバリデーターの数やそれぞれのノードの処理能力は果たして十分でしょうか?

それを確かめる、シュミレーションしておくのがストレステストです。イーサリアムのメインネットは止めてはなりません。「Web3の時代だ!」「中央集権から分散型だ!」とか言っている場合ではなくなってしまいます。

長くなっちゃった

無駄に長くなってしまいました。要約だけ最後に記します。

  • 2022年9月19日にEthereumのMainnetでMergeが実行され、PoSになる、ということは計画として立案されています

  • 上記は現時点での計画であり、開発コミュニティからの大きな反対はなかったものの、一方で、それで決定されたものでも有りません。あくまで提案された1つの目標日程に過ぎません

  • 現時点でのThe Mergeの実行日はオフィシャルには2022年3Qもしくは4Qとなっています。9月とは発表されていません

  • 「9月にマージされるんだって!」「9月にPoS化されるらしいよ!」というのは過大表現であり、デマといえばデマです。9月に本当に実行されるのか、その計画が現実的なのか、というのは現時点では不明瞭です

  • The Mergeに向けた殆どの実装は終わっていますが、非常に重要な項目であるストレステストはまだ着手されておらず、その他の開発項目も残っているものがあります。残り2ヶ月でWeb3の根幹たるEthereumメインネットに現時点で未完成のものを乗せる、果たしてその意思決定を出来るのは誰でしょうか?

    • 私が責任者なら、訴訟が怖くて出来ません。もっと安全な、確実な日程で実施したいと考えます。あくまで私なら、ですが。Timがどう考えるか、他のコア開発者がどう考えるかは知りませんが、早くMergeすることによって彼らの給料が上がるわけでは有りません。一方で、拙速にリリースすることにより問題が起きた場合には、訴訟を受けることは避けられないでしょう

EthereumはPoS化が遅れ、ビットコインよりも大幅に価格が下落しましたが、なんとかMergeはされ、PoSに変わりそうです。すっと9月にされるかもしれませんし、まだまだ延期されるかもしれません。

公式発表を待ちましょう!!

それでは!

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