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ビットコインは環境の敵ではない

 最近は暗号資産の下落に伴い、あまり声高に言われなくなりましたが、相変わらず、ビットコインは電力の無駄遣いであり、環境破壊の元凶だという説がはびこっています。比較がどの程度正確で事実を表しているのか分かりませんが、例えば、

 という記事ではGoogleとFacebookの消費エネルギーの8倍とか、

 上記のグラフではノルウェーの電力消費よりビットコインの電力消費量が多いなんて言うのもあります。
 一方、

 といった記事もあります。何が正しいかを判断するのは難しく、この手の議論はどうしても、ポジショントーク的な匂いを感じてしまい、半信半疑になってしまいます。
 エネルギーに関して私がそうだろうなと思っていることは以下の二つです。
 ・火力発電はCO2を排出する。
 ・真のクリーンエネルギーは核融合。

 それ以外のいろいろな話は、解釈の仕方でプラスにもマイナスにも受け取れる気がしています。

 そんなときにこの記事を読んで、なるほどなー、そういう観点もあるのかと考えさせられました。

 この記事は100%ビットコインは役に立つ的な内容になっていて読んでいて気持ちよいのですが、それではただの記事紹介になってしまいますので、私なりに考えてみたいと思いました。
 それは電力の需給の話です。私も含めて世の中の大半の人は電気というのは発電量が多いほどいいんだろうとぼんやり考えています。電力不足の話はよくニュースでも取り上げられますし、節電しましょうというのは需給が逼迫すると出てきます。じゃあ、逼迫しないようにもっと発電すれば良いんじゃないの?で、貯めておいて需要が高まったときに放出すれば良い、と考えてました。
 ところがそう簡単な話ではなさそうです。発電というのはもっといろいろ調整しなきゃいけない物のようです。ざっくり書くと、
 ・蓄電は簡単では無い。
 ・電力不足もそうだが電力過剰もだめ。
 ・需要は大幅に変動する。
 ということで、基本は発電量と消費量をうまく合わせないと、ブラックアウトが起きてしまう、というやっかいな代物のようです。

 資源エネルギー庁のホームページに上記のような話が載っています。発電して余った分を蓄電しておけば話は簡単なのですが、蓄電というのは需要の変動に比べて微々たる量しか蓄電出来ないようで、今は需要の変動に会わせるには発電量を調整しないと対応出来ない様です。ところが、比較的臨機応変に発電量を変えられるのは火力発電だけで、他の発電方法、太陽光、水力、原子力などはホイホイ発電量を変えることは出来ません。なので、CO2を排出するにもかかわらず火力発電を使わざるを得ないというのが実情です。
 
 そこで、需要が少ないときに余った電力をビットコインのマイニングに使ってしまえという話が出てくるというわけです。少し強引な気もしますが、考え方としては十分ありなのでは無いでしょうか。過剰に発電してしまった電気は捨てるしか無いわけですが、それをビットコインマイニングに使えば、少なくとも経済的には無駄にならない訳です。まあ、ビットコイン嫌いな人に言わせればそれこそが無駄だと言いそうですが。少なくともビットコインに価格がついている以上、経済的にゼロにはなりません。なので電力会社の立場で考えれば悪い話では無いはずです。
 電力消費量が多くなるピークに合わせて発電を定常的にするが、消費量が少ないときに余った電力でビットコインマイニングを行えば、電気が無駄にはならない。で、需要が高まったときにはマイニングを止めて電力量をまかなう、という経済合理性に基づいた運用が可能になります。ビットコインのマイニングを発電の調整弁として活用するという話です。どうやら実際に、今、米国の寒波で電力不足が発生し、テキサスでマイニングを止めて、電力需要に回しているという話があります。つまり、実績ありなわけです。

 日本では少し前に話題になりましたが太陽光発電をやり過ぎて送電網がパンクし、発電抑制して欲しいという話がありました。

 これは送電網のキャパシティが足りないという話なので少し違いますが、結局これも、いっぱい発電しても無駄になるという話です。これも、ビットコインマイニングで余った分を消費すれば無駄にはなりません。太陽光発電の量が増えるなら、その分CO2を排出する火力発電を抑えて、需給調整をマイニングでやるという選択肢もあるような気がします。送電網のキャパもそうですが、バランスの悪いところを補う手段としてビットコインマイニングを考えても良さそうではないでしょうか。そうすることにより、より融通が利かないクリーンエネルギーの比率を増やすことが出来ないでしょうか。
 おそらく、電力会社の一部の頭の良い人はこれに気がついていると思います。ただ、こういう話を社内でおおっぴらに上げると、リスクを気にする人たちがいっぱいいて、踏み切れないという状況はありそうです。でも、どこかの電力会社がやって成功すれば俺も俺もになる可能性はあります。
 ということで、使いようによってビットコインも環境改善に貢献出来る可能性はあると思った次第です。こんなの「やったもん勝ち」な気がしますけどね。そういう成功事例が日本で出てきて欲しいと思います。


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