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ビットコインETFは実現するのか?(SEC vs 暗号資産業界)

行方を注視しているのSEC(米国証券取引委員会)対暗号資産業界の争いの状況に、少し進展がありましたので、それについてコメントしておきます。

この記事で取り上げた、グレースケールのSECに対する訴訟がありました。SECが説明不足だと言う訴えです。裁判所はグレースケール側に軍配を上げ、SEC側の説明不足だと判断を下しました。
それに対してSECは控訴する事が出来ましたが、結局、期限がきてもSECは控訴しませんでした。

この判断は個人的には少し意外でした。政治的には最後の最後まで抵抗をすると思っていたので、何らかの手段でSECが対抗すると思っていたからです。これで、一般的な見解としてはビットコインETFの承認確率が上がった言われていますが、単純に説明不足だと言う指摘を受けただけで、ビットコインETFの承認自体を拒否することは可能です。

ビットコインETFはどうなる?

民主党の圧力は相変わらずであり、アメリカの下院議会は共和党の内紛が続いており、今のところSECにとっては逃げ場がありそうな政治状況です。状況からしてビットコインETFの申請を拒否しても説明がうまく出来なさそうな感じはしますが、それでも承認しないということ自体はできます。そこまでやるか?というのはまっとうな神経では有り得なさそうですが、政治がらみだとこれが理屈じゃ無くなるのでどう転ぶか分かりません。
とはいえ、さっさと承認しちゃってもいい気はします。少なくともビットコイン自体は証券では無いと事実上認めているわけですし、いったんETFとして認めてしまえばETF自体は証券となるので、何かあったときにSECの権限が行使しやすくなります。もっとも何かあると、それはSECが承認した責任を問われてしまいますが。

ビットコイン現物ETFのリスク

なぜ、SECはなかなかビットコインの現物ETFを承認しないのでしょう。素人なりにいくつか考えていますが、政治的圧力は別として、やはり取引所の信用問題がある気がします。証券取引や商品取引などの取引所の歴史と実績に比べ、暗号資産の取引所は歴史も浅く、流通量も少ない。ビットコイン自体の流通はオンチェーンの活動ですべて見えますが、取引所のマッチングはウォレット間のやりとりでは無く、あくまで、取引所内部のシステム上での仮想取引です。つまりは外から見えない。

大口の売りなり買いが取引板で表示されていたとしても、それが本当に顧客の資産なのかどうかが分からない訳です。暗号資産取引所は顧客資産の預かりと取引を両方ともやっているので、証券取引や商品取引の取引所のように証券会社の注文をベースに取引所で取引が行われるという分離がされていません。となると、取引が操作されていても分からない訳です。日本では暗号資産においても顧客の資産の保全などを行うよう法律で規制されていますが、アメリカはそういうモノはまだありません。そこは議会の怠慢なのでしょう。そうなるとSECは逆に暗号資産取引所が信用出来ないとなると困った事になるわけです。FTXの様に何をやっているのか分からないという事が起こりえるわけです。
これは怖い。例えばコインベースが価格操作をやって破綻したら、その責任はまたSECに来ます。

じゃあ先物は?先物は現物と違って、歴史ある、米シカゴ・オプション取引所などの商品取引所で上場されている証券であり、現物ではないのでリスクは少ないとみているのでしょう。
これに対して現物は、現物であり、先物と違って発行者が特定出来るモノではありません。マイナーが発掘して増えていく資産です。なので、流通している真の量も分からない物です。そういう意味では価格操作がしやすい。しかし、ビットコインに関してはかなり流通していますし、流動性もあります。オンチェーンで少なくともウォレット間の動きはすべて見えます。さらに、SECはしつこくしつこく、価格操作に関して懸念を示し、これまでの申請を拒否してきました。なので、そろそろリスクは減ってきたのかなと言う気もします。

状況的に見て、いずれビットコインETFは承認される気がしています。そろそろ引き延ばすのも意味が無くなって来つつある気もします。ただ、その時期がいつかはなかなか読めません。今回の控訴しなかった件はやはりその前触れと捉えても良いのかもしれません。


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