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2019年11月の記事一覧

ワールドエンド

多分本当は何処かで
皆が気付いていたんだ
だけど口にはせず
遠くへと投げ捨ててきた
とっくに世界は
終わっているのだと
大きな声を上げた瞬間
壊れてしまう気がしたから
騙し絵の様に美しい
愉快で幸せな箱の上で
さあ歌い始めよう
本当の破滅へ向かって

鑢の様な悲しみが

顔を伏せて泣く娼婦は
隠したデリンジャーを撃つ
鑢の様な悲しみが
露になって破られる時
本当の事を知るのだろう
幼さを売って今まで
この社会で生きて来た
其れを過ちと笑うなら
貴方も何も変わりやしない
削られて逝く命と身体を
重ね合わせても戻れなかった
無実の子だったあの頃に

剥がれ落ちるまで

藁の犬を放つ悪人
其れがどんなに弱くとも
心の隙間を埋めれるならば
手放せやしないのさ
金網が敷かれた空の下で
自由を叫ぶ者はもう居ない
匿名の首輪を自ら選び
嵌めた者だけが許された
後は剥がれ落ちるまで
演じ続けなければいけない
其れがどれだけ辛くても
人は生を求めるものだから

人攫い

素敵な言葉を囁いて
如何か私の心を攫って
そうすれば凍れる日々を
巧く渡っていけるから
冷たい唇の人達に
私の姿など映らない
まやかしで構わないから
如何か私の影を攫って
皆に二度と見られないよう

アルカディア

ドラッグに追い縋る哲学者
また会いましょうを歌うシンガー
誰もが幸せを感じるならば
社会が成り立たなくなる時だ
そう話す車椅子の博士も
理想を追い求め生きて来た
死すら平等ではない世界で
皆何かに酔う振りをする
演じなければ生きられないのは
俺も貴方も一緒なんだよ
如何しても言いたくなった
誰も聞きやしないのにね

退廃する街を

バンビキャラメルを舐めながら
ディストピアへ向かうマーロウ
此処は危険過ぎて誰もが
美しい名前を無くしてゆく
それでも人が居る限り必ず
彼の元に依頼は訪れる
例え匿名であろうが構わない
この街では其れが掟なのだから

ピストルオペラ

銃で人を殺した祖父
自らを銃で撃った父
私は夜に鍵をかけ
今日も一人賭け狂う
街灯の明かりに揺れた
ピストルを喉元に当て
冷たい撃鉄を起こす
誰かが配当を得るまで続く
鉄の宴を楽しみながら

私を探して

何度でも私を探してと
貴方は寂しそうに言った
うつろうものとして死ぬ
僕はその願いを叶えられず
跡形も無く消えるのだろう
うつろわざるものを生きる
本当の貴方には出会えず

偽物の愛を

心無い言葉で削られない様
父が命を作り替えてくれた
ハイスで作られた新しい心は
決して傷付いたりはせず
そして何も感じなくなった
此れで巷に溢れ零れ出す
偽物の愛に騙されたりしない
大切な何かが見えなくても
人は生きて行けるのだから

雨の様な針に刺され
上手く歩けない人達は
何処か酷く苦しそうで
そして顔が見えなかった
僕は誰にも気づかれない様
その足並みを縫いくぐる
煙と共に消える夕焼けが
故郷の海へ沈むのを横目に

TDL

モノクロームの写真に写る
キャラクター達はアメリカの
車が燃えるのを背にして
何時もの様に微笑んでいたんだ
異国に白い雪が降ろうが
原子炉が砕けて散ろうが
そうやって笑っているんだろう
夢の国から出られずにさ
本当に狂っているのは誰なのか
君か僕かそれとも夢の王様か
指を鳴らせば醒めてしまう
そんな淡い幻想には浸かれない
だから今日も白昼に躯を晒す
傷で埋め尽くされた手を染めて

サイコダイバー

気丈な振りをするけれど
本当は知ってたんだろ
心はもう治りはしないと
振り向かずに奥へ沈む
誰もが忘れて逝った悲しみへ
暗闇さえ逃げれない深海
其処に孤独があるならば
何度でも潜り探そう
人の器が保てなくても
サイコダイバーである限り

売れないゲルニカ

ハローベイビー
此処は天国
ウオッカを飲みながら
愛の賛歌を歌えるぜ
ハローベイビー
生まれ落ちたなら
せめて楽しんでくれ
売れないゲルニカと
誰かに罵られても
ハローベイビー
君に伝えよう
定めは絶対なんだ
誰も逃れられやしない
狭い揺籃の中で
せいぜいもがいてくれ
ハローベイビー
それじゃあ何処かで
すれ違ったら手を振るよ

踏絵

弱き者が挙げる手を
抑え切れないのなら
より強い力を振るえばいい
そうすれば声すら響かず
地下へと潜るだろう
狩りの範囲が狭ければ
狼達の牙も容易に届く
一斉に始末する前に
絵を踏ませ信仰を問う
新世界を歩ませる為には
生まれ変わる事が必要だから