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2019年7月の記事一覧

ランブルフィッシュ

色彩の無い夜に
川崎の単車を飛ばす不良
突っ掛けの儘で走る街は
何処か作り物の様だ
青と赤の風に背中を
押されながら誰もが
大人の振りをするけど
見てくれだけで本当は
何も変わりはしないのさ
生きて命を削る限り
争いは止まらないから

花葬

有り余る偽りに囲まれ
貴方を棺へと運ぶ
嘘の無い花で埋め尽くし
貴方を深く中へ沈めた
せめて次は咲ける様にと

嘘を少し織り交ぜて
泣くのは人だけと聞いた
本当に悲しいのなら
泣いたりするのだろうか
感情を分からない僕は
涙に何かを込めたりはしない
可笑しいのなら
嘲笑ってはくれないか
卑しい方が人らしいから

純愛

貴方は人でない物を抱え
これは純愛だよと言い切る
冷酷な雨が街に降り
私は静かに歪み始める
どちらも世間は認めずに
処分されて消えて逝く
最後まで愛など知らずに

潮の香りは嫌いだ
生きている匂いがするから
地獄を歩んで居る俺も
全ての終わりへ還るのだろう
始まりの海に誘われて

フラッシュ・キャバレー

売れないバンドの演奏で
安酒を高く売るキャバレー
札束を放り投げ今日も
誰かが心の隙間を埋める
赤張りの内装に揺れた
煙草の灰が悲鳴を上げて
何もかもを壊そうとするけど
直ぐにリノリウムの床へと
回帰して消え去った
此処は一瞬しか輝けない
愚か者達が集う場所
今日も時代に忘れ去られた
言葉だけがフロアを漂う

マンティス

見えざる鎌に掴まれて
動けないのは皆同じだと
知ってしまってから
私は神に祈る事を諦めた
未来を見透かす様な言葉で
人を煽るのが得意な彼も
唯の傀儡でしかないと
気付いて居るのだろうか
確かめる術を持たぬ儘
多過ぎる命が今日も費えた
切り裂かれた走り書きを残して

破綻者は宴に集う

生きずらいと貴方は言うが
途中で放り投げ今まで歩んだ
そんな自分を棚に上げ
楽しい事だけを掴もうとする
手の中に残った何かが
一握の灰であろうとも
誰かを羨むのだろう
破綻した自分から目を逸らし

ショータイム

出番の無いストリッパーは
重い月に照らされて
クレマチスの丘で踊った
観客が居なくても
私は輝けるのと答え
そして居なくなった
美しい身体を瞳に写して

偽の河を越えて

知らない何かに
遮られた僕は
偽の河を渡って
貴方を探した
見えない毒に
心を蝕まれても
貴方に会いに行こう
匿名の嘴に
何度も貫かれ
崩れた言葉で
貴方に何を言おう
偽の河を越えて

タイム・ライン

規則的に流れて来る
要らない情報に毒され
僕達は病んでしまう
誰かに伝えようと
本当の言葉を綴っても
決して届きはしない
皆他人の不幸が欲しいから
今日もまた溢れて零れた
絶望に歓喜する匿名の声が

偽物の幸せ

あり余る富に溺れ
何も感じなくなろうが
其れも幸せだろう
僕はそう思う
偽物の幸せがあるなんて
僕は信じない
人は皆探すのだろうか
本物の幸せを

虚構

間違いを犯す男
何かを知る女
夜に蠢く虚構が
静かに近付いても
離れる事は無かった

キラー・アルファ

素敵な車椅子に乗って居る
対人ライフルを担いだ老人が
この街で何を始めようとも
誰も気に掛けやしない
危険で溢れている箱庭で
テロリストが129回目の命を
消し去る瞬間に狙撃されて
跡形も無く吹き飛んだ
スリルに飽きた人が作った
虚構に迷い込んだなら
試しに彼を呼んで見れば良い
真実に気付いて嘆かないのなら