超大型巡業、開始____涙
網走を出た特急は、特急とは呼び難い速度で北見〜旭川間の原生林を走り続けていた。車窓に流れるダイヤモンドの様な煌めきは、積もり積もってはこの島に住む人々を苦しめる白い雪。美しさの裏にはいつも苦しみがあるという暗喩だろうか。
そんなことを考えながら、遅い昼飯を車内で食べ終えると、いつの間にか微睡みの中にいた。次に目を覚ますと、陽は傾き、車掌は間もなく旭川に到着することを告げた。
旭川の駅は、今まで道内で巡ってきたどの駅よりも新しく、整然としていた。降りて喫煙所を探すも、なかなか見つからない。結局、ホテルにチェックインしてから一服した。カレンダーを見ると、もうひと月近くも流れていることになる。
副業と嘯く、会社員としての仕事をこなす街には戻れない。小さな町で、人と会っていちいち病状を説明する元気も、心配させるほどの内容もないからだ。ちょうど一年前、はじめて“恋の町”に来て、内定が出て、喜んでいた日のことを思う。一年前は倉庫で働いていたが、当然非正規雇用だったために、腰を痛めてしまうともう次の週の喫茶代の小銭を数える羽目にあっていた。一年が過ぎ、安定した職を得たはずが、どうしても耐え難いご指導を受け続けた結果、わたしは壊れてしまった。自分では元気だと思っていたが、初診の精神科で一発で診断書を書かれた。病名は割愛しておく。
南へ流れ北へ流れ、歌を歌って、ひとと語らう。二週に一度は病院に来てくれと言われたから、そのときは“恋の町”に立ち寄る。病気の原因となった連中はどうせ守り合って、わたしのせいにするだろうから、今は精一杯休むだけだ。したい仕事も、せねばならない仕事も残してきたままに今日も今日とて流れている。明日は芦別か、赤平か…
寒さも乾燥もキツイから、四国か九州か。別に流れていたくはない。ただ、健やかに家賃を払う街で働きたいだけなのに…涙