コロナ分科会の釜萢敏氏も専門家では無くなった

西村新型コロナ担当大臣は、8/2の会見で、お盆の帰省は「慎重に考えないといけないのではないか」と、まるで他人事のような発言をしていた。高齢者への感染リスクを考慮し、そのようなリスクが高くなるお盆の帰省はなるだけ避けるようにという要望だ。どうやら、今週木曜日の分科会の定例会でお盆についての提言が出そうである。
GoToトラベルキャンペーンの時は、分科会が決定発表に慎重で、20日まで待つよう進言したが、それでは22日からのキャンペーン開始に間に合わない(実際にはそれでも間に合ってはいないのだが)との理由で、先送りを認めなかった。
しかし、今回のお盆の移動については、議論を先送りし、お盆目前の8/6の分科会まで決定しないらしい。GoToは強行し、お盆問題は先送りするとは、アクセル踏みっぱなしで、ブレーキは踏まないつもりなのだろう。
まあ、西村大臣にとっては、お盆発言は失言であって、あくまでGoToトラベルキャンペーンを継続するためにも、「お盆は高齢者の祖父母との会食はできるだけ避けるようお願いします」程度のお願いでお茶を濁すだろう。要するに、自己責任として市民にその責任を押し付けるという、いつものやり口だ。

さて、本日のテレビ朝日の「モーニングショー」は面白かった。新型コロナ対策分科会のメンバーの、釜萢敏日本医師会常任理事がリモート出演し、玉川徹氏と一触即発のバトルをやっていたからだ。
釜萢氏は、終始分科会の会見で尾身会長が話しているような内容の繰り返しで、全く気概の感じられない内容だった。GoToトラベルキャンペーンについて話し合われた7/16の分科会後、記者に囲まれた釜萢氏は以下のように語っていた。

地域によって感染の様子は違うわけだし、東京だけが感染しているわけじゃないから、東京だけということよりは、まずは自分の県、あるいは隣県くらいまでのあいだでやりながら広げていったらどうかなっていうようなことを言おうと思ったんですけども、それはとくにしゃべる機会がありませんでした

この頃は、まだ医師の立場から物言いをつける姿勢が感じられたが、最早そんな気概は失われてしまったのだろう。

極めつけは、PCR検査に関する質問を玉川氏から受けた時だ。玉川は、アメリカやイギリスはPCR検査数が日本に比べて圧倒的に多いのに、日本はなぜPCR検査数が伸びないのかと質問したのだが、それに対し釜萢氏は「PCR検査で陰性と出ても3割は感染している可能性がある。その程度の検査です。」と答えたのだ。
玉川氏は、「唾液と咽頭の2つの検体を採れば90%以上の確率で偽陰性は避けられる」と発言。偽陰性についても3割ではなく、実際には99.99%正しいと言う話や、偽陽性についても島根県でクラスター対策で大規模PCRを行った際、700人に検査して陽性者ゼロだったことを引き合いに出し、分科会の専門家はこれをどう評価しているのかと聞かれても、要領を得ない答えしか返ってこない始末だ。

更には、海外からの渡航者に対してはPCRをするのに、国内の旅行者にはなぜしないのかという玉川氏の質問に、意味が無いと言ってのける。現在、世界各国で入出国をできるようにと対策を講じており、その方法として、渡航前のPCR検査と入国時のPCR検査によるダブルチェックで感染対策を行おうと調整が進んでいるのにも係わらず、海外からの渡航者にPCR検査を日本が行うのは、外国から求められているから仕方が無くやるのだと言う内容の発言だった。こんなことを言っていたら、100%来年の東京オリンピックは中止になるということに釜萢氏は気が付かないのだろうか?
ましてや、こんな軽率な発言をする人物を、分科会メンバーにしておいて良いと政府は判断しているのだろうか?

一方、感染者の増加についても、政府の各都道府県の感染状況の4段階分けについて、東京・大阪などは「漸増段階」であるとし、医療がひっ迫していないので問題ないとの、菅官房長官と全く同様の回答をしていた。軽症者が重症化するリスクについても、「治療のやり方についてだいぶ蓄積されてきた」と言うだけで、具体的な治療法やアビガンを始めとする治療薬(アビガンは有意性が無いとして現在は認められていない)については何の言及もない。
「感染が広がれば、一気に感染爆発状態になるのだから、その前に早めの緊急事態宣言を出すべきでは」という岡田春恵白鴎大教授からの質問についても、「現状ですべての経済活動を止めると、影響が非常に大きい、生活が立ち行かなくなる」とまるで政治家のような発言だ。
残念ながら、釜萢氏も、無能な政府側の人となってしまったようだ。

釜萢氏は、その後、日テレのミヤネ屋に出演して、橋下元大阪市知事から「モーニングショーはPCRが絶対のように言っているけど、大規模PCRをするには保健所も医療現場も人手が足りないから無理」と言われて、多少留飲を下げていたようだが、私は見ていないので、これについては言及しないでおく。ただ、1つ言えるのは、報道で出ていることから判断すると、橋元氏は、現状のPCR検査の対応を、そのまま拡大するような文脈で語っているようだが、玉川氏はそんなことは一言も言っていない。ニューヨークは、いつでも誰でもPCR検査を受けられるようにしており、無症状の陽性者は自宅隔離になっている。これについては、議論の余地があるとしながらも、検査と隔離以外に、具体的に感染拡大を防ぐ方法が無いと言っているのだ。
そもそも、感染経路不明者が50%を超える東京などでは、保健所による濃厚接触者調査などは最早破綻しているのだから、そんなことに人的資源を使うなら、検査と隔離に集中すべきだろう。最早、政府と分科会が拘っているクラスター対策など、そこら中を走り回っているネズミをライフルで撃つようなものだ。ネズミを撃ち殺すならショットガンを持ってくるべきであり、武器の選び方を完璧に間違えている。

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