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霊界おじさんは大俳優だった〜丹波哲郎〜


霊界おじさん

今年2022年は俳優・丹波哲郎 生誕100年。
彼の誕生日の7月17日にはTLがにぎわっていた。
 
34歳の自分にとって、「丹波哲郎」と言えば「霊界おじさん」だ。当時は実際に霊界の話をしている映像を見たわけではなかったが、ネタとして「丹波哲郎」と言えば「霊界」だった。「霊界おじさん」が演技派俳優の一面も持っている、そんな認識である。事実、3つ上の兄に「最近、丹波哲郎の喋り方の真似をしている」と話したら、怪訝な顔をされたうえに「そんな怪しい人の真似をするのやめやあ」と言われてしまった。
 
けれども、最近、私はこの「霊界おじさん」の作品をよく観るようになった。リアルタイムでは大河ドラマ「利家とまつ」「義経」は観ていたし、ジブリ映画の「猫の恩返し」は劇場で観た。


俳優 丹波哲郎

そんな私の、久々の丹波哲郎出演作は大河ドラマ「黄金の日日」。2021年度に再放送し、大河ドラマ好きのTLが大いに盛り上がった。ここで「霊界おじさん」の認識がしっかりと俳優「丹波哲郎」になった気がする。今井宗久は貫禄たっぷりのボスにぴったり。

最近気づいたのだけれども、丹波哲郎という俳優は、なんと、自分が別の目的で観ていた「金融腐蝕列島 呪縛」「魔界転生」「赤穂城断絶」「新幹線大爆破」「皇帝のいない八月」にも出演していた。その時はまったく意識していなかった。つまり日本映画やテレビドラマには欠かすことのできない人材なのだ。
 
加えて、3月に時代劇専門チャンネルで放送していた「新たな鬼平・松本幸四郎特別番組 第二弾〜二代目鬼平・丹波哲郎編」を観て、そのチャーミングな人柄に魅了されてしまった。ゲストで息子さんの丹波義隆さんが出演していたが、「セリフを覚えない」エピソードには爆笑したし、派手で豪快な殺陣にはわくわくするし、「そんなことができないなら死んでしまえ!」と部下に対する激しいセリフにはある種の感動すら覚えた。丹波版鬼平の放送はすべて録画した。個人的には1番好きな鬼平かもしれない。
 
7月には2004年に出版されていた「大俳優・丹波哲郎」が文庫化された。幼少期からGHQでの通訳の経験、映画、霊界など多岐にわたる話題はもちろん、著者のダーティ工藤さんの綿密な取材による資料も読みごたえあった。ますます俳優「丹波哲郎」が好きになってしまった。

大きい声では言えないが、某動画サイトで上がっているダウンタウンのバラエティ—番組にゲストで出演した回の動画は爆笑しすぎて何回も観てしまう。梅宮辰夫の番組にゲスト出演して、途中で深作欣二監督を連れてくる回も腹を抱えて笑ってしまう。「徹子の部屋」に丹羽義隆さんがゲスト出演していた回もよかった。頓珍漢な霊界の話もなんだか憎めない。観ているとこちらが笑顔になる、不思議な人だ。
 
というわけで、ここ1ヵ月で観た丹波哲郎の作品のいくつかを紹介したい。

 

「日本沈没」(1973)

世代的には2004年版?のリメイク作品の印象が強いし、そもそもリメイクを嫌厭していたので未見だったが、小松左京に興味をもったのでWOWOWで放送していたのを録画していた。

一言で言うともっと早く観ていればよかった、面白かった。関東で大地震が起こる描写は今見ても見応えがある。阪神淡路大震災以前の映画にもかかわらず、ストーブから着火して火事になるのはリアリティがあった。亡くなった奥様に「一番記憶に残らない」と言われていたのに未曽有の事態に対応することになってしまった総理大臣の丹波哲郎は「こんな真摯に対応している総理に危機対応をしてほしい」と思ってしまうほどだった。
 


「砂の器」(1974)

こちらもリメイク版のイメージが先行してしまい、遠ざかっていた。こちらは宿命を背負った暗い影のある犯人を加藤剛が演じているので気になり、WOWOWを録画しておいた。放送途中に帰宅したのでテレビをつけてみたら有名なラストシーンに惹きつけられてしまった。

加藤嘉さんの父親役には胸が張り裂けそうになり、加藤剛の犯人も一概に悪とは言えない。被害者役の緒形拳は良いひとすぎて殺された理由がつらかった。まだハンセン氏病の差別や偏見が当たり前だった時代に遡る。個人的には母がハンセン氏病の療養所併設の学校を卒業し、看護師になっているのでハンセン氏病の話はよく耳にした。
壮大なピアノ演奏の場面で流れる四季折々の景色と父子の流浪の旅… 丹波哲郎と森田健作のこつこつと手間暇をかけての地道な捜査が真実に近づいていく過程は感動すら覚えた。個人的に、視聴後に父の容体が悪化して帰らぬ人になったのでそういう意味でも忘れられない作品になった。余計に生と死が生々しく感じられたというか。

 

「二百三高地」(1980)

こちらは丹波哲郎のセリフを覚えて挑んだ映画ということで興味をもっていたところ、戦争映画好きな兄のおすすめと聞いたので借りてきた。日露戦争、特に悲惨だった二百三高地に焦点を当てており、上層部の会議と、市井の人々と、戦場を行き来するがどれも自然にまとまっていて、より戦場の凄惨さが伝わってきた。

10代・20代の頃に戦争体験している世代が制作している映画は、今のものより画質や音響の点からは劣るかもしれないが、自分たちが見聞きし体験したことが再現されているので、迫力やメッセージ性が今の作品よりも骨太でしっかりしている。大変見応えがあった。日露の話ではあるが、毎年8月にはこの映画を観たい気持ちになった。ラストの「そこから旅順港は見えるか?」であんなに感動するとは思わなかった。丹波哲郎扮する児玉源太郎はスケールの大きな軍人でセリフの一つ一つが気持ちよかった。

この三つが作品も役柄もとても良かった。
上記にはないが、「大日本帝国」(1982) の東條英機役はA級戦犯の東條とはまた違う視点で書かれていたので大変ヨカッタ。


観たい作品メモ

「真田太平記」
現在視聴中。大河ドラマ「真田丸」を観終わっているのでその比較も面白い。上田城攻防戦に突入。犬伏の別れが今から楽しみ。

「三匹の侍」
今月時代劇専門チャンネルで放送するので楽しみ。

「将軍家光の乱心」 
同じく放送予定なので楽しみ。元々千葉真一が観たかったのよね。

「軍旗はためく下に」
深作欣二監督の映画。2次大戦時の、すごく凄惨でショッキングな内容みたいなので体調が万全の時に観たい。

「江戸中町奉行所」
これは11月にDVDが発売される。共演の近藤正臣さんも大好きなので予約済み。楽しみー!

「第七の暁」(1964)
これはイギリス製作の戦争映画。丹波哲郎は中国人の役をやっているらしい。「007は二度死ぬ」のタイガー田中がよかったので観てみたい。(「大俳優・丹波哲郎」によると本人の声ではなく中国人の俳優が吹き替えているらしいが) 


終わりに

これを書きながらwikipediaで出演作品を確認していると、すでに視聴していた作品がたくさん出てくる。映画「切腹」、年末大型時代劇「白虎隊」「田原坂」などなど。やっぱり1970〜1980年代の日本映画、テレビドラマには欠かせない人物なのだ。しかし、まだまだたくさん未見の作品があるので俳優「丹波哲郎」を堪能しようと思う。



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