徒然なるままに三浦春馬について書き留める その2

少しでも彼の追悼になればと思い、書きます。

今回は訃報を聞いた直後1週間の話。

その日

とにかく頭が混乱していた。何かしてないと春馬のことばかり考えてしまう。

あの輝かしい活躍の裏にどれだけ心に傷を負っていたのだろうか。
イラストレーターの夏ノ瀬いのさんが以前、Twitterに掲載していたイラストを思い出す。

「それぞれのキャパシティー」と書いてあり、中央に2人の制服を着た女の子がいる。左の子は背中に一本の矢が刺さっており、右の子に向かって泣き叫んでいる。周囲はその子の心配をしている様子が描かれている。対して右の子は左の子を心配しているが彼女の背にも矢が刺さっている。しかも何本も。コメントには「泣いて叫ばな、気づいてもらえへん」。

もしかしたら、春馬はこのイラストの右の子のような状態だったんじゃないか。

考えたくないので読みかけの本を無心に読んだ。伝説のアニメーター大塚康夫さんの文体ははっきりと、しかし優しく事実を記してある。死を感じるには程遠い距離だ。この距離感が心地よい。

訃報を聞いた直後は本屋に行き、「アヒルと鴨のコインロッカー」を買っていた。帰宅して読み始めたが序盤で疲れてしまった。ペット殺しが出てくる。ペットとはいえ、なにかの、誰かの死を身近に感じるのがしんどい。同時に買った「日本史の定説を疑う」を適当にパラパラ読み、もう一冊購入した城山三郎の「そうか、もう君はいないのか」に目を通す。著名な作者が奥様とのエッセイをまとめた本だ。2人の出会いから別れまでの記録。明らかに春馬のことを意識しているチョイスになってしまった。

とにかく活字に触れることで辛いことを考えないようにする。私はショックなことがあったときはいつもこの方法で立ち直ろうとする。

**7/19 **

翌日は日曜。クリスチャンなので礼拝をする。私の家は自宅を教会として開放しており、いつも母がメッセージをしている。それもあまり頭に入ってこない。それほどショックを受けていた。

午後に気持ちを整理するため、少しだけTwitterを開いて呟く

「1日経って  どうしてって思うし本人が直面してたのはよっぽどの状況だったんだよな。(前回の投稿から情報入れずに書いてます) 「ブラッディマンディ」での演技でこの子応援しよう!と思い、「チルドレン」のおかげで伊坂幸太郎を活字で読むようになり(おかげで活字に戻れた自分)、見目麗しい姿に→」

「→いつも元気もらってて癒されてました。せかほしは観ると何かしら参考にさせてもらう気に入りの番組。10年ほど前の海盗セブンは赤坂まで足を運んだ。直虎初め全ての番組や舞台を観てるわけじゃないけど本当に好きな俳優。この気持ちを本人への感謝に変えようと頑張ってる。」

呟いて気づく。

そうだ、高校から本を読まなくなっていた自分が再び読書をするようになったのは春馬がきっかけだ。伊坂幸太郎の「チルドレン」の実写に出演していた春馬見たさにDVDを借りた。面白かったので原作を読んでみると、より面白かった。

伊坂幸太郎の本って面白いな。

程なくして伊坂幸太郎はもちろん他の人気作家の作品を読むようになり、他の小説や実用書にも手を出すようになった。今、こうやって読書が生活の一部になり楽しみににはなっているのは春馬のおかげだ。

さらに思い出す。

彼との久々の再会はせかほしだった。せかほしとは、彼のレギュラー番組「世界は欲しいモノにあふれてる」の愛称で、今年で3年目の紀行番組だ。毎回、世界を股にかけるバイヤーさんを取材して、そこでしか手に入らないものを紹介する。春馬の誠実さとJUJUのいい意味で砕けた感じがいい感じに化学反応を起こして番組独特の優しい雰囲気をつくっている。

初めて見たのは2年前、モロッコの回の再放送。そのときは最近ご無沙汰だった春馬と久々の再会だった。(その頃のことについてはまた詳しく書くことにする。)

画面越しで再び会った君はさらに美しく、男らしくなっていた。再会のうれしさと懐かしさに加え、すでに旅好きになっていた自分の好みが一致、録画して毎週観るようになった。

観ると何かしらいい刺激を受ける。

こんなことがあった。

1年前、仕事で大失敗をした。良かれと思って、その時は疑問にも思わずやったことだった。

しまった、調子に乗ってた。

久々に落ち込んだ。このことを知ってる周りは私のことをどう見てるだろう。偉そうなことを言ってるくせに、この年になっても失敗ばかり。自分がひどく情けなく、ちっぽけな存在に思えた。

そんな時、北欧の回のせかほしを見た。可愛くてスタイリッシュな照明、家具、雑貨・・・画面にたくさん出てくる素敵なものたち。ヒュッゲという、いい意味で何もしないくつろぐ時間について。 

映像を見ていて、ほんの少しの間だが嫌なことを忘れさせてくれる。癒されるってこういうことか。

毎年夏に海外に行っている私。すぐに影響され、「次の旅行先はデンマークにする!」と母親や同僚に宣言した。「家具や照明を買いに行きたい!」しかし家具や照明はなかなか持って帰れない。結局、この年は旅先を別の場所に変更した。
しかし、このヒュッゲの回は失敗して落ち込んでた私を暖かく包み込んでくれ、とても癒された。それはMCの2人が作っている雰囲気も関係しているのは否定できない。

読書にしろ、せかほしにしろ、自分の生活にしっかり根付いている。どちらともきっかけが春馬だったことに気づいた。

君が突然いなくなった世界。
まだ混乱してるけど、私は君がいてくれたことに感謝しかないよ。ありがとう。

自然とそう思えた。

**7/20 **

月曜はいつも通り仕事に行った。そりゃそうだよね、しっかり働かないと。仕事中も春馬のことがショックだったが、仕事に集中してるときは忘れることができた。

昼休み、隣の席の同僚が話しかけてきた。「三浦春馬、ファンでしたか?」私はうまく言えなかったが「・・・もちろん・・・」と応えた。いつもなら軽快な調子で会話をする相手だが、今回は無理だった。聞けば彼の奥様が1番好きな俳優だったとのこと。奥様は会ったことがあるので、すぐに彼女の顔が思い浮かぶ。

そりゃね、あれだけ整った人、なかなか出てこないよ。○○さん、わかるよ。私も同じだよ。

夕方、ミュージカルをやってる同僚と仕事の話をした際に春馬の話をした。彼には以前「星の大地に降る涙」のDVDを貸していた。春馬の初舞台だ。

「土曜日からずっとショックなんですよ」「どうかしたんですか?」「三浦春馬が・・・」「ああ・・・はは」苦笑してる。悪気がない笑いなのはよくわかってる。

「いや、先生、まじで本当にショックなんだよ・・・」「わかります・・・」

そのあと、彼は劇団☆新感線の「五右衛門ロック」を最近ゲキシネで観たことを話してくれた。ゲストで春馬が出演していたのだ。

「ほんとに最近観てたので亡くなった実感がないんですよ。「えー、それやってるのまじ知らんかった。はよ教えてよ〜」「はははは」「・・・キンキーブーツ、頑張って観に行けばよかった・・・」「それ、思います」

一通り話したら少しスッキリした。彼は舞台での春馬の凄さを知っている。周りに春馬の才能を知ってる人がいる。それだけでも楽になる。

同僚と話をしたことがきっかけでその夜には、SNS含めニュースが見れるようになった。母親との関係、実の父親との再会、親交のあった芸能人の反応・・・3日目でも様々な記事が飛び交っていた。あー、嫌だ嫌だ。早いよ、記事書くのさぁ。

同時に兄にラインを送ってみた。

兄に春馬のことをラインする、返事を見ると同じくショックを受けていた。

特にテレビを見ない兄だが、おしゃれには敏感だ。春馬はポールスミスのアンバサダーになっていたっけ。兄は仕事でここぞという時にはポールスミスのシャツを着る、と言っていた。

そういえば、10年ほど前、資生堂のフォグバーというワックスのCMが流れていた時、兄と一緒に盛り上がったな、妻夫木聡、小栗旬、瑛太、そして三浦春馬。ビートルズを連想させるあのCMは最高にお茶目でかっこよかった。

そうか、あのCMも随分前なんだな。

**7/22 **

水曜の夕方には「無限のリヴァイアス」のドラマCD3を聴いていた。こちらもまた後から書くが、メインキャラの尾瀬イクミを彷彿とさせたブラッディ・マンデイの演技。この演技で私は本格的に応援するようになった。
ドラマCDに収録されている「もくせいのばら」はイクミの明るさと苦悩が描かれている。主人公の相葉昴治は出会ったばかりの頃を回想し、彼の苦悩におもいを馳せ、涙する。

「お前いっぱい抱えてたんだな」「ずっと背負ってたんだな」「あいついっぱい言ってたじゃないか あんなに」

昴治がイクミを思って吐露する場面だ。

これはそっくりそのまま、私からの春馬への思いになった。

こじつけすぎじゃね?と思われても構わない。

直接会ったわけではない。知り合いでもなんでもない。私は一視聴者、それだけだ。

しかし未来ある青年があんな形で亡くなるなんて。

その事実が、ただ、ただ、悲しい。

何かできたんじゃないか。応援してますと一言伝えればよかったし、なぜ手紙の一通も書かなかったんだろうか。後悔しても遅いがそう思わざるを得ない。


**7/23 **

木曜からは三連休だった。

ようやく春馬の映像が見れるメンタルになり、YouTubeを開いてみた。

その中で、寺脇さんと対談している動画を見つけた。「俳優をやめて農業をやろうと思った」というものだ。
その中でサムライ・ハイスクールの時期に今までにない疲労感がやってきたこと、ブラッディマンデイ2ではセリフが覚えられずに現場に行って監督に叱られたことが語られていた。

サムライ・ハイスクール、そうだったんだ。
また別の時に書くが好きなドラマで毎週楽しみにしていた。それだけに複雑な気持ちになった。
寺脇さんは先輩として「そういう時期を通ることは大事」と諭していた。自分も寺脇さんなら同じことを言うだろう。大変な時期を乗り越えて一つ大きくなる、経験からそう語る。先輩ならそうだろう。

でも春馬にはこの時点で悩みが深くなっていたんだろうな。想像に難くない。人がどこでつまづくか、闇に落ちていくか、それは本人にしかわからない。

そうだ。誰だってこうなることなんて予想できなかったよ。

寺脇さん、自分を責めてないかな。心中を思うと心配になる。

真夜中、Twitterを見ていたら、音楽番組でピアノ伴奏をした生田絵梨花に注目が集まっていた。彼女は3月の舞台で共演しており、当日はショックで過呼吸になってしまい生放送を欠席したと聞いていた。それから初めての生出演。ファンが心配する中で彼女は涙を浮かべながら伴奏を見事やり切ったらしい。

そんな健気で誠実な彼女を応援したくなったのでTwitterで投稿された動画を見てみた。

彼女は合唱曲の「believe」を伴奏していた。

「例えば君が傷ついて挫けそうになったときは

必ず僕がそばにいて支えてあげるよその肩を」

不意に涙が出た。歌詞が、まさに春馬に言ってあげたいことだ。

支えてくれる誰かがいれば、

悲しみや苦しみが希望に変わることができれば 

涙が出ると同時にほっとした気持ちになった。

そういえばこのニュースで悲しんではいるが涙は出てこなった。ようやく泣くことができた。

30過ぎていい年をして、真夜中に直接会ったこともない同世代の青年の死に涙する。

私にとってはごく自然なことに思えた。

生田さん、本当にありがとう。

そう思い、私は休んだ。


残りの連休はぼちぼち過ごした。

SUNNYがアマプラに入っていたので視聴。
90年代のイケメンも似合っている。さすがだ。


最終日の日曜は絵を描いた。テーマは

連休にしたこと。その中に春馬のことも描いた。

画像1

1週間ほど時間を必要としたがようやく追悼を形にできた。

その3に続きます✏️

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