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あれから。(うのちゃんとウノチャンと僕の話)


今から1年前、こんなnoteを書いた。

僕がウノチャン(アイドルグループくぴぽのメンバー、うのちゃんのこと)に出会ってから、昨年の生誕ライブまでの話を主観で綴ったものだ。

あれから1年が経った。

今年もウノチャンのお誕生日がやってきて、そして生誕ライブがあった。
2023年10月22日。場所は滋賀。
ウノチャンの故郷であり、いまも暮らす場所だ。

生誕ライブの詳細が発表されたのは開催の1ヶ月半前だが、数か月前から「滋賀ライブ」とスケジュールに入っており、それがウノチャンの生誕ライブであることは明らかだった。
色々と事情があり、普段遠征はしない僕だが、この日ばかりは「行く」以外の選択肢が考えられなかった。

根回しの末、晴れて滋賀に行くことが決まった。
知り合いのオタクたちと乗り合いで行かせてもらうことになった。
遠征は久しぶり、こうして何人かで車で遠路を行くのも久しぶりだ。

前日の深夜から出発して休憩を挟みながら進む。
緊張もあるのかあまり眠れず、微妙な体調のまま午前中に滋賀に到着した。

移動中、外は殆ど真っ暗だったし、そんな体調もあってか、当初滋賀に来た感慨というものはあまりなかったが、スーパー銭湯で湯に浸かり食事をしたり仮眠をとったりして落ち着いてきたところで、少しずつ実感が湧いてくる。
所用で寄った近くのイオンの屋上駐車場には展望台があり、琵琶湖を望む雄大な眺望に心を奪われ、「そうか、ここがウノチャンの生まれ育った地だ(この周辺で育ったわけではないと思うが)」と感動を覚えたりした。

会場の滋賀U★STONEに入ると、天井が高くステージも高い、音の巡りが良さそうなライブハウスだった。
フロアには東西のくぴぽのオタク、そして代代代のオタク、なんか知らんけどいつもいる人、見知った顔がたくさんあって安心した。
ほどなくして客電が落とされ、ウノチャンのソロステージが始まった。

そう、今回はウノチャンの生誕ライブということで、メインはくぴぽの80分ワンマンだが、もう一つの目玉はウノチャンが“宇野祐生佳”として約3年ぶりにソロでステージに立つ、というものだった。

冒頭に紹介したnoteにもあるが、僕は約3年前のたった2回の宇野祐生佳のステージの1つを観ている。
そのときの映像はなく、記憶の中にしかない。
記憶は美化されるというのは承知の上だが、でも、僕が見たあの美しい幻のような光景は嘘偽りがなかったと思っている。

ウノチャンのソロ曲の一つ、「パウ郎」のイントロがSEとして流れ始める。
フロアがざわつく。
ほとんどの人が宇野祐生佳のソロライブを観たことがないはずだ。
期待や好奇心、色々な感情が渦巻き、視線がステージにぶつけられる。

ステージに現れたウノチャンは3年前と同じ衣装だった。

それを見て、あらゆる記憶がフラッシュバックした。
自分の今いる場所や時間さえ分からなくなった。
「パウ郎」がスタートする。

ウノチャンが丁寧に言葉を紡いでいく。
くぴぽでの歌唱とはまた違う発声、特に高音を多用するメロディだが、ウノチャンの声はとても伸びやかだ。
当時の歌声や音源とイメージは変わらず、だが、確かに芯の太さを感じる。

2曲目「BAD END OF THE WORLD」は幾分か緊張が解け、ウノチャンは終始笑顔だった。
作曲の小倉ヲージ氏特有のハイトーンかつ突拍子もないポップなメロディをウノチャンが歌っている。
明るいけれどどこか退廃的で空虚なこの曲はウノチャンの持つ空気感に合っている。
小倉氏にこの曲を自ら「歌いたい」と申し出たというウノチャン自身にもそんな自覚があるのかもしれない。

2曲を終えてMC。
驚いたのは、ライブ前の告知などでは「最初で最後かも」と言っていたソロのライブを「今後もやっていきたい」とウノチャン自身が言ってくれたこと。
もちろん歓声が上がったが、僕は、ウノチャンが自らの意思で未来の道を示してくれたことに涙を禁じえなかった。

そうして、約10分のステージが終わった。

光の中にある透明な水、ウノチャンのイメージはずっとそれだ。
当時はその光とともに消えて行ってしまいそうな儚さがあった。
でも、今は違う。
ステージに立つ二本の足に力強さがある。
きっとこれからもずっとここにいてくれる。
そんなあたたかさが、そこにあった。

くぴぽのライブ中は、無我夢中だった。
オタク側が無我夢中というのはいかがなものか、という感じだが、くぴぽのワンマンはとにかく楽曲の乱れ打ちで、加えて最近はフロアライブもある。
オタク側も食らいついていくのに必死で気が抜けないのだ。寝不足だし。

本編ラスト「眠いよ青春」でサプライズのサイリウムの点灯があった。

ウノチャンが歌う落ちサビで。

このまま続けていいのかな
頑張れなくて本当にごめんね
写真の私は笑ってますか
いつか忘れてしまうのが悲しいな

くぴぽ「眠いよ青春」より

この曲の歌詞はくぴぽに加入する前のウノチャンの言葉をヒントにまきちゃんが書いたものだ。
そして上記の落ちサビは歴代の卒業メンバーが歌い継いできた。
歌詞の内容も相まって「この曲の落ちサビを歌うメンバーが次に卒業する」という迷信めいた話もオタクの中ではあったが、この曲のモデルであるウノチャンが歌うようになったいま、この曲はたどり着くべき場所にたどり着いたと感じる。今が最終形態なのだ。

特典会などで一度でも話したことがある人はわかると思うが、普段のウノチャンはあたたかくてやさしい。
でも、僕がステージで最初に見たとき、笑顔を見せながらも永遠に満たされない空虚さを抱えているような、それを激しいパフォーマンスに叩きつけているような、そんな胸が苦しくなる切なさを感じた。
ソロの「BAD END OF THE WORLD」で感じたのは、その気持ちだった気がする。久々すぎて分からないけど。

ウノチャンは「眠いよ青春」を歌うことで、そうやってずっと抱えてきた空虚さを、今やっと、やさしく抱きしめることができているんじゃないか。それは本人にしか分からないけど、僕にはそんなイメージが見えるんだ。

僕はそうやって感傷的になっていたけれど、ライブはアンコールまでずっと楽しい!だけが続き、最後には花束やプレゼントの贈呈があり、ウノチャンの生誕らしく、ほんわかと、幸せに終わった。

特典会で、何度かウノチャンと話した。
とにかく久々の遠征だったので、その話が多かったけど、終わりの方で僕が「(滋賀まで)連れてきてくれてありがとう」と言ったとき、ウノチャンは真っ直ぐ僕の目を見つめて言った。

「リトちゃんがここまで連れてきてくれたんだよ」

普通に距離の話をしていたつもりの僕は虚をつかれてしまって、恥ずかしいほどしどろもどろになった。照れてしまって、その後は何を喋ったかあまり覚えていない。

僕はただの1人のオタクで、何か特別なことができるわけじゃないけど、これからもウノチャンがここにいる、ここにいたいと思える理由の一つになれていたらいいなと思う。

ありがとう。
君がずっと笑えていますように。

(遺書じゃないです)

おわりじゃないけどおわり

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