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エンベデッドファイナンスが引き起こす消費者行動の変化について


00.はじめに

2021年頃から金融業界ではエンベッド・ファイナンスが急速に伸びており、同年3月には日銀の黒田総裁にも言及され、一気に拡大が進みつつあります。
当時から2年が経過した現在、国内ではどのような動きを見せているか類型と事例をいくつかピックアップし、消費者行動にどのような影響を与えているか当社の事例を説明したいと思います。

01.エンベデッド・ファイナンスの定義

「金融以外の事業を展開する非金融企業が、既存サービスに金融サービスを組み込んで提供すること」というのが共通認識であると考えられています。

こちらの著書においても、消費者に直接、金融商品や金融サービスを届けるのは、銀行・証券・保険などのライセンスホルダーではなく、消費者と日常的に多くの接点を持つ小売や通信キャリアなどの非金融企業である。と、野村総合研究所の城田さんが表現されています。

2022年11月 @GMO社のイベント 左が野村総合研究所 城田さん 右が私


早速、エンベデッド・ファイナンスの類型と企業例をご紹介していきます。

02.【類型Ⅰ】顧客基盤を保有する非金融企業

米国では3月28日にアップルがBNPLの提供を始めたというニュースが出ました。

国内でもPAYPAY銀行やLINEポケットマネー、auじぶん銀行、楽天銀行、docomoも昨年夏に貸金業のライセンスを取得するなど、大きな顧客基盤をもつ事業会社がBaaSなどを利用することで、独自の金融サービスを提供する動きが盛んです。
ITや通信キャリアだけではなく、イオン銀行やセブン銀行などリテール事業者も2000年代から銀行ライセンスを取得し、あらゆる金融商品を提供してきた背景もあります。
普段使い慣れているサービスや店舗など、数多くの顧客接点を持つ強みを活かした金融サービスは市場の成長を引き起こしている要因です。

03.【類型Ⅱ】ライセンスホルダー(銀行など)

最近ではネオバンク(自らは銀行免許を持たず、提携した既存銀行のプラットフォーム上に独自のインターフェースを構築し、金融サービスを主にスマートフォンで提供する企業を指す)に分類される動きが顕著です。
そんな非金融事業者に、国内では住信SBIネット銀行や楽天銀行が、銀行機能をそのものをOEMで提供している事例が増えています。

JAL・高島屋・野村不動産・JREなど、続々と金融事業の展開を進めています。
スクラッチで開発を行う類型Ⅰに比べ、既存にある金融フォーマットを組み込む作業で済むため、比較的開発は早く進められます。
ただし、ライセンスにおいては、事業会社には銀行代理業の要件が必要となり、資金・人的リソースが必要となるため大企業ではないと難しいです。

エンベデッド・ファイナンスとは違いますが、三井住友銀行の「Olive」や、ふくおかフィナンシャルの「みんなの銀行」、池田泉州HDのデジタルバンクなど、今までと違ったUXを目指す金融機関も差別化が進んでいる状況です。
金融セクターから仕掛けていく動きも顕著になってくると考えられます。

04.【類型Ⅲ】イネーブラー

非金融事業者とライセンスホルダーをつなぐ役割となる、電子決済等代行業者や、金融仲介事業を行うプラットフォーマーのことを指します。
決済・送金・投資・融資など、特定の金融商品の特化型と、金融サービス仲介業など、複数の金融商品を横断的につなぐプレイヤーもあります。

類型ⅠやⅡのようなライセンス取得には、純資産要件に加えて、専任者を要する人的要件を満たす必要があり、業務監督にかかる事務処理~行政報告など管理態勢が厳重。といった要件を備える必要があり参画が難しいスキームに比べ、イネーブラーは比較的参画しやすい業態です。

また、消費者にとっても、類型1や2であれば、単独商品の中で検討する必要がある状況に比べ、イネーブラーではプラットフォーマーに参画する金融機関の数だけ金融商品を提供することができるのが特徴です。
ポイントやマイルを貯めるための特定の便益を除くと、複数ある商品の中から適した金融商品を選べる仕組みの方が、消費者への強い便益を提供することができます。

05.消費者行動の変化

エンベッド・ファイナンスは、短期的なゴールとしては、「金融においての情報格差をなくし、消費者との間をスムーズにつなぐこと」が挙げられます。
クラウドローンでも、融資について遠い存在(=知られていない事による弊害)で、消費者が知らずに損をしている(身近な消費者金融やカードローンや金利の高いディーラーローンなどで高い料率でお金を借りている)状況を解決していきたいと考えています。

クラウドローンでは、すでにあらゆる非金融事業会社にイネーブラーとしてエンベデッド・ファイナンスを展開していますが、社会人のリスキリング(学び直し)に、銀行教育ローンを利用いただく機会が増えてきました。

平均金利が2~4%程度で利用できる教育ローンが、社会人の自己啓発への利用が広がっています。

目的に向かってスキル取得を目指すときに、受講料などお金の問題が障壁になっている方が多い状況でした。
その中で、貯金してからだと開始時期が遅れてしまうことへの懸念があった。という方が、教育ローンの利用を選択される行動につながっています。

今後も、あらゆる事業会社にエンベデッド・ファイナンスの実現をサポートすることによって、消費者が金融情報格差(情報の非対称性)を特に意識せずに、利用することのできる仕組みを提供していきたいと思います。


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