【運用部コメント】通貨の下振れリスクの「見える化」
外貨建て投資の魅力として、低金利が長期化する日本国内では得難い高金利を享受できる点などを挙げることができます。一方で、外貨建て投資をするにあたって、避けて通ることができないのが、為替変動リスクです。為替相場は様々な要因によって動くため、すべての要因を網羅して観察するのは難しいですが、各国や地域のファンダメンタル(経済の基礎的条件)やその通貨の動き方の癖を事前に理解しておくことは有用です。
前回は、各国や地域のファンダメンタル分析に基づいて、通貨ごとの強弱の「見える化」を試みました(※)。今回は通貨ごとの動き方の癖を把握するために、通貨ごとの下振れリスクの「見える化」を試みていきます。
※ 各国や地域のファンダメンタル分析に基づいた通貨ごとの強弱の「見える化」につきまして、詳しくは以下をご覧ください。
1. 「下方偏差」を用いて通貨ごとの癖を知る
株式、債券、為替等のリスク資産に投資する場合、その資産価格の収益の上下の変動は避けることができません。運用の世界では収益であるリターンにどの程度ばらつきがあるかという尺度を「リスク」と呼び、一般的にリスクは標準偏差で表します。リターンのばらつきが大きいほど標準偏差は大きくなり、逆にリターンのばらつきが小さいほど標準偏差は小さくなります。
しかし、標準偏差はリターンの上下両方を含めて計算されるため、その資産が下落した際のばらつき度合いは把握できません。そこで、下落した際のばらつき度合い、つまり、通貨の下振れリスクを表す「下方偏差」という指標を用いて、通貨ごとの癖を見ていくことにします。
2. 「下方偏差」のイメージ
下記グラフは、各通貨の対円での日次リターンのプラスの日をゼロとして、2010年1月から2020年7月までの推移を表しています。「下方偏差」はこれらのデータを使用して計算されます。
一方で、下記のグラフは各通貨の対円での「下方偏差」を1年ごとに計算してつなげたものです。表記期間は、2011年1月から2020年7月までになります。
3. 各国や地域の通貨の下振れリスクをレーティング(下方偏差レーティング)
ここまで例示した通貨を含め、各国や地域の通貨の対円での「下方偏差」をレーティングすると、以下の結果が得られます。
前回の各国や地域のファンダメンタル分析に基づいた通貨の強弱の見極めともに、「下方偏差」を用いた各通貨の下振れリスクのレーティングによって、通貨ごとの動き方の癖を把握してください。これら一連の「見える化」が、投資家の皆様にとっての外貨建て投資の一助になれば幸いです。
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